試演奏の募集 | ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

クラシックの本場ヨーロッパで職人として働いている技術者の視点で弦楽器をこっそり解明していきます。

以前から申し上げていた通り休暇を使って帰国します。
「有給休暇は年5週間だ。」と言ったらスウェーデンの人に「それはひどい労働条件だ。」と言われました。なかなか日本では考えられないことかもしれません。


この間にブログを読んでいただいてる方で私の作ったヴァイオリン、ビオラに興味がある方に実際に試していただく機会を作りたいと思います。

1月に希望を寄せていただいた結果、東京近郊、名古屋近郊、大阪近郊、静岡県の方から希望をいただきました。

3月21日(土)~4月12日(日)までの期間でできるだけ多くの方にお会いしたいと考えています。
皆さんにもお仕事などの都合があると思います。希望が週末に集中することが予想されます。平日に時間が取れる方がいらっしゃると助かります。平日の日中に時間が取れるのが最高ですが夕方~夜間でも時間があれば構いません。先の話ですのではっきりと予定は分からないかと思いますが、わかる範囲内で都合の悪い日、通常の就労時間、休みを取ったり早退が可能かなどが決まっていましたら教えていただきたいです。

東海地方の方は日帰りで行けますが、関東、関西の方は日程を固めなくてはいけません。希望が重なった場合には合同になるかもしれません。


試演奏する会場はそちらで用意してください。会場の最寄り駅まで伺います。
自宅でも音が出せるのであれば構いません、演奏したい場所まで案内してください。
弓や肩当も試奏用に用意しますが、いつも使い慣れた弓や肩当もお持ちください。ご自身のヴァイオリンもあると比較ができます。


私が以前製作したビオラ(胴体が41cm)を使用している方から借りることができそうです。ビオラを試したいという人は申し付け下さい。



アポイントがついた時点で本名と自己紹介をします。

ヴァイオリンの購入を検討されている方には値段は100万円ということにしておきますが、多少の値引きやおまけはします。購入希望者が複数になった場合の決め方についてはすでに決めてあります。その時にお知らせします。支払いが必要になりますので代金を用意してください。

試演奏が一巡した後で受け渡しになります。

ビオラについては販売するものはありません。



それからもう一つ何か試演奏用のヴァイオリンを用意します。何にするかはその時までに決めます。

お仲間やご家族なども誘っていただいても構いません。



弓についてもドイツやフランスの古い弓を用意できます。もし弓を探している方がいらっしゃいましたら価格帯をお知らせください。何本か手に取って試していただくこともできる可能性があります。


このような試みは初めてですし、これまで職人一筋でやってきましたので何かと迷惑をかけるかもしれませんがよろしくお願いします。一人一人に応対するので返事などが遅くなることがあるかもしれません、ご了承ください。


申し込みの詳細を以下にもう一度まとめます。
施設を借りたりするのに早いほうが良いと思いますのでお早めにお願いします。

<一月に連絡を頂いた方>

①お名前とメールアドレス
②希望する場所の最寄駅か自宅の最寄り駅(およその参考にします、変更は可能です)
③通常の余暇時間もしくは勤務時間
④休みや早退が可能か
⑤都合の悪い日
⑥ビオラの試奏を希望する人は記入
⑦弓を探している方は価格帯
⑧その他希望や都合など連絡事項がありましたら教えてください。


<初めての方>
以上に加えて
⑨お住まいの市町村名
⑩簡単な自己紹介と希望など一言コメント

申し込みはこちらからどうぞ
やり取りをしたeメールアドレスでもかまいません。

個人情報を他者に漏らさないことを約束します


※キャンセルは前日までにしていただければ構いません。
※ヴァイオリンを購入された後、気に入らないという場合には1年以内なら返品が可能です。弦は買い取っていただき、クリーニング・補修の代金を差し引いて返金します。

その後の流れ
皆さんの都合をもとにこちらでおよその日程のプランを立てますので個別にメールにて正確な日程を決めていきます。





今回ストラディバリの複製を作りました。次回は一年以上先になると思います。グァルネリ・デル・ジェズの複製を考えています。ストラディバリは見た目にも工芸品のような美しさのある楽器であるのに対し、デル・ジェズは仕事は雑だけど音が良い楽器の典型です。今回のストラディバリの企画では美意識について語ってきましたが、それがデル・ジェズになると全くどうでもよいということになります。

ただし、いずれもアマティ派の基礎の上にそれぞれの癖が加わったものです。雑に作れば良いということでデル・ジェズのコピーを作る人は多いですがアマティーのスタイルを崩したものなのか、現代の作風を崩したものなのかで違いが出ると思います。


今後、見た目も美しいストラディバリの複製を作る予定はありません。この機会を活用ください。





その後、あるヴァイオリン教師の方に今回のストラディバリの複製を試してもらいました。その方は私が以前作ったヴァイオリンとビオラを弾いていらっしゃいます。そのヴァイオリンは最も濃いキャラクターのもので、暗く太くて柔らかい音、古い楽器によく似た音色のものです。
それと交互に弾き比べると今回のものは明るく鋭く輝かしい音でした。「力強い演奏をする人に向いているのではないか?」と言っていました。

古い楽器と新しい楽器の中間のような音色になるでしょう。

その人が使うのであれば弦の選定やセッティングをもっと柔らかい音になるように変更する必要がありますし、楽器にあった弓の使い方の加減も身に付ける必要があります。



このように人によってしっくりくる楽器やセッティングは全く変わってきます。短い時間のテストでは難しいところです。2010年に作ったヴァイオリンをこれと異なるセッティングにして試していただこうかと考えています。そちらのセッティングのほうが好みなら同様のセッティングにすることもできるわけですので。

ヴァイオリンを扱う仕事で本当に難しいのは人によって感じ方や演奏のスタイルが全く違うことにあります。演奏者がどう思おうと関係なく職人が「教科書通り正しく作った」と言い張り、楽器店も「これは有名な作者の有難い楽器だ、弾きこなせないのは演奏者のせい」というふうに追い込んで押し付ける売り方が一般的であるのは客を逃さない営業として合理的ですね。私はそんなにたくさん楽器を作れませんから多くの方に試してもらって好みと合う人に使ってもらいたいと思っています。私の楽器は好みに合わないという方もいらっしゃると思いますが、私以外にも素晴らしい楽器を作っている職人、特に日本人もたくさんいらっしゃいますから、楽器を試した経験値としてお役立てください。



立場は違ってもヴァイオリンを愛する者同士、ヴァイオリンをもっと楽しむために意見を出し合えれば楽しみながら建設的なものになるでしょう。ヨーロッパのお話もしますし、ブログの内容や研究テーマにも皆さんの関心を反映できるようになると思います。

私も職業人として職人をやっているわけですが、「仕事に私情を持ち込むな」というのが常識なのかもしれません。しかし、ヴァイオリンを愛する情熱をどっぷりと仕事に持ち込んでやっていける方法がないかと画策しています。


ブログをやってきて感じているのは、自分に有利な情報だけを書いて、不利な情報は隠すようにずっと管理していくのは面倒なのです。ましてや嘘を矛盾なくつき通すのは私にはとてもできそうにありません。そうでなくても考えが変わったりして混乱させてしまっているかもしれません。「研究ノート」なのでそんなものです、いつかちゃんとした本のような確かな知識になればと考えています。

気が向いたらコメントなども書いていただけると励みになります。これからもよろしくお願いします。