不況になると口紅が売れる -38ページ目

不況になると口紅が売れる

~遊びゴコロで、世界を救おう!~

 今日は、冷たい雨に祟られた日だった。


 3回も、雨に打たれて歩くことになった。

 一度目は、傘を持っていなかった。

 二度目は、傘をさすヒマがなかった。

 そして三度目は、傘をさすのが面倒だった。


 最近天気予報で、若いねーちゃんの気象予報士がよく、

 「今日は冷たい雨になります」

 というアナウンスをする。

 自然なようだが、これはおかしな表現である。


 かつて、そんな気象用語はなかった。

 雨に「冷たい」という形容詞をつけたのは、ほかならぬユーミンである。

 雨を「冷たい」と感じるのは、雨に濡れて歩くからだ。

 たいていの人は、傘をさして歩くわけだから、雨を「冷たい」とは感じない。

 「空気が冷たい」「風が冷たい」とは感じるが…。

 雨を「冷たい」と感じるのは、失恋して、涙を流して歩くときだけなのだ。

 歌詞中の、あくまで主観的な感傷的な言い回しを、気象用語として使うねーちゃん予報士。
 メディア文化のレベルの低さを感じてしまう一瞬である。


 実は「シクラメンのかほり」も「赤いスイートピー」も歌詞から生まれた。

 まあ、どーでもいいことなんだけど。

 なんか、悲しくなるわけさ…。

④「かぶく」 その3


 昔からの話ではありますが、「テニスラケットを布団叩きの代わりに使う」「哺乳ビンを計量カップの代用に使う」「コーヒーメーカーに水だけ入れてミニ保湿機にする」…といった妙な商品の使い方があります。


 かぶいてますよね~。


 しかし、これらに対して「単なる貧乏性」とか「不適切な利用法」とかいう捉え方をしていてよいのでしょうか?


 雑誌「Mart」は、読者から商品の利用方法(アレンジ)のアイデアを募り、企業・消費者双方からの注目を集めてきました。
 無印良品でも「4コマ漫画用ノート」を「プレゼンテーションやデザインのアイデア出し」用に再販するといった用途の再開発に力を入れ始めているそうです。


 しかし、こういう時代が来るであろうことは、40年前にすでに予言されていました。
 未来学者のトフラーは、生産者的視点を持った消費者を「プロシューマー」と呼び、今後の消費社会のドライバーと位置づけました。
 歴史学者のセルトーは、何もないところからの純粋な発明というわけでなく、与えられた条件を自分なりに変容させていくタイプの創造・製作を<ポイエティーク>と呼び、庶民による立派な生産活動であるとみなしています。


 かぶき者の知恵は、消費社会の新しい「形」なのだと私は思います。


 いったん消費者の手に商品が移った後の楽しみ方は自由かつ多様であり、そのプロセスで商品が思いがけない使われ方をされたり、思いがけない利用者を生んだりするケースがいくつもあります。

 私は、このような顧客側による商品価値の向上を「創発」と呼び、この状態を呼び込むマーケティングこそが大切だと感じています。

 その方法論は、商品・ブランドのポジションによってさまざまですが、いくつか共通の視点を提示したいと思います。


①商品を消費者による自己表現やコミュニケーションの「素材」とみなし、その素材を消費者自らが加工・編集しうる創発キットを提供する
②消費者間の価値共有や自己表現が行われているコミュニティを、知識創造の場(コモンズ)と捉え、そこに対する適切な関与法と、企業への消費知識のフィードバック法を確立する
③管理型マーケティングから脱皮し、消費者の自発的行為に対する援助や素材提供、環境整備といった賦活(ファシリテーション)型マーケティングに転換する


 なお、詳細は拙著「創発するマーケティング」 に書いておきましたので、ご関心のある方はご一読ください。

④「かぶく」 その2


 「かぶき者」がカッコよかったのは、スタンダードなスタイルを前提に、それをあえて崩していったところです。
 つまり、「スタンダード」とはなにかをそれなりにわかったうえで、斜に構えているわけです。
 いわば、中央の規範に対するアンチテーゼのスタイルといえましょう。


 今日の日本は、東京の求心力が薄れ、地方発の時代がやってきているといわれています。


 地方都市でのライブ活動はするものの、東京に出て「一旗挙げる」のはダサい、といった考え方のミュージシャンが増えてきています。
 大阪発「維新の会」や、地方自治体の首長が旗振りとなった「減税日本」などが中央政界を揺さぶり始めました。
 地域ブランドや地域発の新規ビジネス、ゆるキャラ、ローカルヒーロー、コンテンツツーリズム、そしてAKB48姉妹ユニットに至るまで、ローカルの力が台頭し、そしてこれらローカルの「かぶく」力に期待が寄せられている状況にあります。
 ただしこれらは、ローカルの持つバナキュラーな文化というよりも、スタンダードを見据えた上でのローカライズという気がします。



 そこで「かぶく」の今日的な意味を「超ローカライズ」と捉えてみたいと思います。


 本来のスタンダードな形を心得た上で、それをあえて崩すところに美意識や快感を覚えるわけです。
 だから、「かぶく」の本質は「枠組み(フレーム)を遵守したうえで、自由・多様な表現を志向する」ということではないでしょうか。
 かつて「女子高制服図鑑」みたいなものがブームになったりしましたが、制服オシャレみたいなものも、かぶきの一種ですね。
 与えられたフレームを甘受しながら、その中で多様な個性を発揮しようとする試みが「かぶく」精神といえましょう。


例えば現代における「かぶき」の一例を挙げると、
・カスタマイズ
・デコアート
・パロディや二次創作
…などなど。


 加えて、企業が想定した商品の用途や意味をそのまま甘受せず、自分なりに変形して使用するタイプの消費=「創発的消費」について、次回は述べてみたいと思います。

④「かぶく」 その1


 「かぶく」といえば、いまや前田慶次ってことになるのでしょうが、一応その意味を確認してみましょう。


「かぶく」とは、

①傾(かたむ)く。頭を傾ける。
②人目につくような変わった身なりや行動をする。
③歌舞伎を演ずる
…とのことです。


 江戸時代に異様な風体をした連中を「カブキモノ」と呼びました。
 自由奔放だが、見えないところにお金をかけるような粋な面もあった(杉浦日向子)とのことです。

 江戸の「かぶき者」とは、いったい何者でしょうか?
 こんな特性がありました。
・江戸初期に現れ、武家奉公人たちが徒党を組んだ
・ヒゲを生やし、着物の襟はビロード、裾を高くまくりあげる
・色鮮やかな女物の着物をマントのように羽織る
・牛首皮の帷子(かたびら)や熊の皮でつくった長羽織をまとう
・無銭飲食をしたかと思えば、勘定以上の大金をポンと置いていく

 まあ、粋なやくざ者、独自の価値観を持ったヤンキー、それなりのポジションにいながら斜に構える目立ちたがり屋…といったところでしょうか。
 そして、出雲阿国の始めたかぶき者っぽい踊りが、のちの歌舞伎の原型になります。


 「かぶき者」は霧散霧消することになりますが、ご存知のように「歌舞伎」という演劇の形態としてその言葉が残ります。
 ただ、こうした「かぶく」人たちは、のちの「江戸の町火消し」に引き継がれ、その後は「街道筋の親分衆」や「博徒侠客」として、そのスタイルだけは残っていきます。


 従来あったスタイルを意図的に崩すことで、凶器的なカッコよさを示すのが「かぶく」です。
 国定忠次の浪曲から健さんの映画に至る任侠ものは、いまやすっかり廃れたかに見えますが、一方で「龍が如く」「花の慶次」「戦国無双」の鈴木孫市など、相変わらず、かぶき者への人気は高いようですね。

 いまや日本人の2/3は「ヤンキー」だと言われますが、このヤンキー文化の原点も「かぶく」精神にあるのかも知れません。



不況になると口紅が売れる

③「うつし」 その3


 同業他社の動向は、やはり気になるものです。
 いやでも情報は入ってくるし、(同業者間のつきあいが多い)社長や役員たちは、そんなことばかり気にしていますよね。

 ついつい業界情報を集め、業界ネタ会議ばかりして…はいませんか?


 ケーススタディの収集は大切なことです。
 しかし、同じ業界や類似商品のケーススタディだと、それを真似するのでは、単なる後追い・二番煎じになるだけです。
 そこで、全く違った世界の事例に関する成功要因を洗い出し、それを自社製品や自社の事業領域にあてはめてみる方法をお薦めしたいと思います。

 これは「焦点法」といって、創造性開発技法のひとつでもあります。


 例えばこんなふうに、です。
・「AKB48」がなぜ売れたか、を分析してみる。
・「おさわり探偵 なめこ栽培キット」がなぜブームなのか、を複数の視点から考察する。
・右肩下がりの出版業界で「プレジデント Family」などが健闘している理由を考えてみる。


 さて、以上を分析してみると、「育てる」というキーワードが共通項として挙がってきたりします。
 これにより、ひょっとすると現代人は「育てる」快感を求めているのではないか、という仮説を発見しました。
 そして自社製品との関わりの中で、顧客が何かを「育てる」行為が成立しないものかと考えてみればいいわけです。


 例えば「ポイント制」なんかは、育てるマーケティングのひとつですね。
 いや、わが社はBtoBだから関係ないよ、と思う人もいるかも知れません。
 でも今年、日立建機が、油圧ショベルなど建設機械の購入やレンタルで、業界初のポイント制度を導入しました。
 「常識の枠を打ち破って新しい発見につなげる」「成功の法則に則っている」というふたつの条件を満たすためには、異なるジャンルの成功事例から学んでみよう、という姿勢も大切なのです。


 「うつし」の精神は、マーケッターにとってインプット対象を広げ、マーケティングという仕事にダイナミズムを与えてくれるものと思っています。