④「かぶく」 その3
昔からの話ではありますが、「テニスラケットを布団叩きの代わりに使う」「哺乳ビンを計量カップの代用に使う」「コーヒーメーカーに水だけ入れてミニ保湿機にする」…といった妙な商品の使い方があります。
かぶいてますよね~。
しかし、これらに対して「単なる貧乏性」とか「不適切な利用法」とかいう捉え方をしていてよいのでしょうか?
雑誌「Mart」は、読者から商品の利用方法(アレンジ)のアイデアを募り、企業・消費者双方からの注目を集めてきました。
無印良品でも「4コマ漫画用ノート」を「プレゼンテーションやデザインのアイデア出し」用に再販するといった用途の再開発に力を入れ始めているそうです。
しかし、こういう時代が来るであろうことは、40年前にすでに予言されていました。
未来学者のトフラーは、生産者的視点を持った消費者を「プロシューマー」と呼び、今後の消費社会のドライバーと位置づけました。
歴史学者のセルトーは、何もないところからの純粋な発明というわけでなく、与えられた条件を自分なりに変容させていくタイプの創造・製作を<ポイエティーク>と呼び、庶民による立派な生産活動であるとみなしています。
かぶき者の知恵は、消費社会の新しい「形」なのだと私は思います。
いったん消費者の手に商品が移った後の楽しみ方は自由かつ多様であり、そのプロセスで商品が思いがけない使われ方をされたり、思いがけない利用者を生んだりするケースがいくつもあります。
私は、このような顧客側による商品価値の向上を「創発」と呼び、この状態を呼び込むマーケティングこそが大切だと感じています。
その方法論は、商品・ブランドのポジションによってさまざまですが、いくつか共通の視点を提示したいと思います。
①商品を消費者による自己表現やコミュニケーションの「素材」とみなし、その素材を消費者自らが加工・編集しうる創発キットを提供する
②消費者間の価値共有や自己表現が行われているコミュニティを、知識創造の場(コモンズ)と捉え、そこに対する適切な関与法と、企業への消費知識のフィードバック法を確立する
③管理型マーケティングから脱皮し、消費者の自発的行為に対する援助や素材提供、環境整備といった賦活(ファシリテーション)型マーケティングに転換する
なお、詳細は拙著「創発するマーケティング」
に書いておきましたので、ご関心のある方はご一読ください。