「タイガーマスク」と虚構逆流レスラー | 不況になると口紅が売れる

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 「タイガーマスク」は、1968年にマンガの連載がスタート(月刊誌「ぼくら」)、1969年からテレビアニメも始まり、当時大人気を博した作品である。
悪役レスラー養成機関「虎の穴」出身のタイガーマスクは、反則を厭わない極悪レスラーだった。

しかし、自分が育った孤児院の子供たちのことを想って正統派レスラーに転身、虎の穴が次々と送られてくる刺客レスラーたちと、リング上で戦いを繰り広げる。

タイガーマスクの正体・伊達直人が、孤児院「ちびっ子ハウス」にファイトマネーを寄付するという設定は、2010年末に匿名の人物が群馬の児童相談所にランドセルを贈ったことを機に全国に広まった「タイガーマスク運動」のモデルにもなっている。


 1981年、新日本プロレスは、アニメ「タイガーマスク二世」とのタイアップで、覆面プロレスラー・初代タイガーマスク(佐山聡)をデビューさせた。1984年には、2代目・三沢光晴によるタイガーマスクが全日本プロレスから、1992年には3代目(金本浩二)、1995年には4代目が新日本プロレスから、2010年には5代目がフリーランスとしてデビューしている。

ちなみに筆者は、当時アルバイト先の学習塾で、「佐山聡(さやまさとる)」に「名前が似ている」というだけの理由で尊敬されたことがある(笑)。それほど、当時は人気がすごかったのだ。

 なお新日本プロレスにはたびたび、タイガーマスクのライバルである「ブラック・タイガー」も登場している(中身は、ちょくちょく変わっていたらしいが)。

 さらについでだが、原作ではタイガーマスクを陰日向になって助ける脇役「ザ・グレート・ゼブラ(誰がどうみても外見からジャイアント馬場であり、それに気づかないタイガーマスクはバカだと思った視聴者は数知れない)」というレスラーも、実はみちのくプロレスに登場する。


 一方、プロレス超人マンガ「キン肉マン」(ゆでたまご原作)のファンとして知られている総合格闘家・美濃輪育久は「超人になりたい」と宣言、リングネームを「ミノワマン」に変更した。

 また、女子プロレスラーのタニー・マウスと宮崎有妃は、自らのタッグチーム名を同作品に登場する「ザ・マシンガンズ」から拝借して「NEOマシンガンズ」としている。2008年の格闘技イベント「ダイナマイト」では、「キン肉マンII世」の主人公・キン肉万太郎が正体不明のレスラーとしてボブ・サップと対戦した。

 なお、「キン肉マン」の生誕30周年を記念した2009年には、各団体所属レスラーと超人たちがタッグを組むイベント「キン肉マニア2009」が開催、さまざまな超人レスラーが実際に登場したほか、「キン肉スグル」がデビューを果たしている。

 フィクションの世界のヒーローをプロレスラーとして実在化させた例としては、他にウルトラマン(ウルトラマンジュニア、ウルトラマンロビン)やウルトラセブン、獣神サンダー・ライガー、さらにはケロロ軍曹などを挙げることができる。


 プロレスそのものが「虚」と「実」の入り混じったエンタテインメントであるが、さすがに本場米国では、有名なアメコミヒーローを模した「ザ・バットマン」や、映画「ミイラ再生」のミイラ男に扮した「ザ・マミー(The Mummy)」など、さまざまなギミックレスラーが現れている。ハルク・ホーガンのリングネームも、「超人ハルク」に由来している。
 米国マット界は、もともと「アベンジャーズ」の世界であったわけだ。


 「タイガーマスク」の場合、アニメ「タイガーマスク二世」とのタイアップから生まれたレスラーであったが、そのファイティングスタイルが人気を呼び、アニメ版のヒーローを遥かに凌ぐ人気を博した。バーチャルを模したリアルが、バーチャルを超えた事例と言えるかもしれない。