関心拡張効果 | 不況になると口紅が売れる

不況になると口紅が売れる

~遊びゴコロで、世界を救おう!~

 コンテンツについては「効果の外部性」という議論がある。

 コンテンツは「観賞して終わり」ではなく、そこから先の見えない効果がある。

 なぜなら、コンテンツはモノではなく<知識>だからだ。


 例えば「周囲の他者にも影響を与える」「教育レベルが上がる」「新たなインスピレーションが生まれる」「次世代のクリエーターを刺激する」「文化的資産になる」「国家イメージを上げる」…などの効果である。


 もっとも卑近な例では、同系統の他作品や、あるいはストーリーと何らかの関わりのある商品の販売にも影響を与えることが多い。

 『ハリー・ポッター』の影響で、英仏では寄宿学校への出願や魔法魔術学校の入学者が大幅に増加し、箒やメガネが売れ、フクロウをペットで飼う人も増加したともいわれる (スティーブン・ブラウン『ハリー・ポッター 魔法のブランド術』より)。 

 つまりコンテンツは、そこで得られた知識をきっかけに、その周辺の知識まで関心を拡張させることができる、ということだ。


 消費者に支持されたブランデッド・コンテントの存在は、そこを基点とした新たな商品開発の可能性をもたらしてくれる。


 「マジョリカマジョルカ」 (下図)は、10代後半~20代前半の女性を対象に、05年から販売を続けている資生堂の化粧品のブランドである。

 テレビCMよりも、Webや売り場装飾などを重視し、ブランドサイトにおけるファンタジックな絵本の物語の展開など、独自の世界観を醸し出すことに努めてきた。

 資生堂は、このブランドを他社にライセンシングすることに成功している。

 2010年、資生堂はロッテと「真夏の夜の夢」というテーマで共同のプロモーションを実施した。

 また、ハーゲンダッツ「ドルチェ・フォンダンショコラ」との共同販促も行っている。

 こうした事例は、有力な物語性と世界観を有した「マジョリカマジョルカ」のブランド拡張策とみなすこともできる。

 「マジョリカ…」を支持する消費者には、化粧品に限らず、同じ世界観持つガムやアイスクリームにも関心を持ってもらうことができる、という狙いである。



不況になると口紅が売れる-マジョリカマジョルカ


 世界観消費には終わりがない、ということである。

 一度市場の支持を得たコンテンツは、ファンの関心拡張ニーズと並行して、商品のシリーズ化や商品領域を拡張にも発展していく可能性を持つ。

 さらには、他社へのライセンシングなどにもつながれば…これこそブランド担当者冥利に尽きる、ということになろう。