小説の続き書きました。新版・遠いデザイン5-2 | 産廃診断書専門の中小企業診断士

産廃診断書専門の中小企業診断士

ふじのくにコンサルティング® 杉本剛敏 中小企業診断士事務所の杉本です。私はコピーライターとしてネーミングやコピーを作る一方で、中小企業診断士として企業のマーケティングを支援。2021年、2016年に静岡新聞広告賞受賞。これまでに提案した企画書は500を超えます。

2001年 冬
 

このオリエンの段階で、ビジュアルなり、言葉なり、何か頭に閃くものがないと後の制作で苦労することは、美紀の経験則だった。

 一方、三谷は全く別のことを考えていた。彼の脳裏にまず浮かんだのは、制作費や媒体費をざっと積み上げたこの仕事の総売上とプレゼンに勝つための最適なスタッフの選定だった。ライターは? 一瞬、七瀬の顔が頭をかすめたが、最近、新鮮みとパワーをなくしていると思い疑問符を付ける。そろそろ潮時かもな…と思いつつも、美紀は仕事にきまじめな七瀬を選びたがるだろうと考える。

 ドアがノックされ、女性社員が次番となっている広告代理店の来社を告げた。一時間と決められていたオリエン時間はすでに過ぎていた。この話を持ってきてくれた三谷と馴染みの古参社員は、結局、顔を見せずじまいだった。

「プレゼンに参加させていただきありがとうございます。せいいっぱいがんばって提案させていただきますので」

何か言い足りなさ、聞き足りなさを残しつつも、声と表情はつとめて明るく三谷はそうしめ括ったが、その丁寧な物言いの裏にある不安を感じたのか、美紀のおじぎの仕方からはいつもの快活さが消えていた。

 

 

遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

15年前の2001年が舞台の古いお話です。