2001年 冬
女がガラスに描く指のラインは鳥たちの飛翔の範囲をやすやすと超える。
べん毛も見えないほどの小さな点にすぎないが、と女は考える。その黒い点の動きはまるで精子のようだ。でも、いくら求め続けても、目指すべき場所に辿り着くことはないだろう。
波の音も、光のあたたかさも、ここからはわからないが、ただ、海上を流れる冷気のようなものがあって、その中で鳥たちの羽ばたきが熱を帯びてくる。
今、群を離れた一羽の大きな鳥の影が、黒い実感として女の目前を飛び去っていった。
扉がノックされている。たぶんマネージャーが呼びにきたのだろう。女はドアの方を振り返り、旧式の鏡台が置かれた縦長の空間を進む。開け放しのクローゼットの中には、ハンガーに掛けられたウエディングドレスがまだ微かな揺れを保っていた。
遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。
14年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。