小説の続き書きました。新版・遠いデザイン2-9 | 産廃診断書専門の中小企業診断士

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ふじのくにコンサルティング® 杉本剛敏 中小企業診断士事務所の杉本です。私はコピーライターとしてネーミングやコピーを作る一方で、中小企業診断士として企業のマーケティングを支援。2021年、2016年に静岡新聞広告賞受賞。これまでに提案した企画書は500を超えます。

2001年 冬

 

モデルの女は着替え室に充てられた一室でウエディングドレスを脱いだ。背中に腕を回しジッパーを引いた時、さっき自分が口にした片割れの姉のことが頭をよぎった。今まで意識に昇ることのなかったその存在が、モデルの仕事をはじめるようになってから不思議と気になりだしていた。

 この春、二十歳の誕生日を迎えるモデルには、今ではそんな女が本当にいたのかどうかさえはっきりとしない。全ては自分がつくりだした妄想じゃないかとも思う。

 ただ、彼女の中に残るぼんやりとした場面があった。そこには幼い自分がいて、バスタブの水の中に手を入れて何かを押えつけている父の姿があった。

さっきまでいた姉の姿はなく、丸みを帯びた白いバスタブの内側からゴボゴボという水音が立ち上がっていた。遠い記憶は若かった父親に姉をバスタブの底に沈めた殺人者としての像を結ぼうとしているのだろうか?

 女はウエディングドレスをハンガーに掛けて、嵌め殺しのガラス窓の前へと立った。窓外にある大きな風景は死んだように動かない。ただ足元に広がる海が彼方の空へと続いているばかりだ。女はふとガラスの中に小さな黒い点々があることに気づき、それを指で擦ってみた。それが汚れではなくて、海上を旋回する鳥たちの遠影であると気づくのに視線を遠くへ投げる必要があった。空と海の青さの中で、時々それらがかき消えそうに見えるのは、鳥たちに当る光の加減のせいだと気づいた。

 

 

遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

 

14年前の2001年が舞台。

中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。

この歳になると。そんなことしか書けませんので…。

地域の産業支援を本格的にやりだしてから、

コピーを前みたいに書けなくなったので、

その手慰みのつもりで書いています。