2001年 冬
チャペルに続いて、邸宅のリビング風にセットされたホワイエ、バーテンダーを入れたカクテルコーナー、少人数レセプション向けのパーティールームと、撮影はハイペースで進み、後は婚礼料理を残すだけとなった。
施設のリニューアルを機に、婚礼料理にも創作性という課題が与えられ、今日は和洋中、全てのコースが一新され、カメラの前に並ぶことになっていた。撮影会場には会食用の個室が割り当てられていたが、いくら厨房が隣りにあるといっても予定より三十分も早い到着では、まだ料理一皿もできあがっていないことはスタッフの誰もが予想がついた。
「ここらで一息入れましょうか。調理場の方たちを焦らせてはいけませんし、なんといっても、まだ予定時間…前!なんですから。いやぁ、こんなことは初めてですよ。撮影といえば、遅れるのが当たり前と思ってましたから。そうそう、モデルがよかったんですよね。そいですよね!」
林田が声を張り上げるが、当のモデルからは何の返答もない。宙に放られたままの言葉を気の毒がったのか、「彼女はただ今、お着替え中です!」と、マネージャーがおどけた調子で受け取って、笑いの渦が起こる。スタイリストが筒に巻いた敷き紙の候補を床に広げて見せる。ローズの壁に囲まれた室内の床、そこだけが張り替えられたように華やいでいく。
遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。
15年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。