新版・遠いデザイン2-2
2001年 冬
「ここは、まず、室内全体をおさえてから、モデルをメインテーブルの前に立たせてみましょうか。ちょっとカメラを振って、カジュアルな感じで…。大丈夫、庭の緑もちゃんと窓越しに写りますよ、ぼやけぎみに…。その方が読者のイメージ、ふくらむんですよね。グリーンがやわらかくかぶさった感じで」
林田が特集ページのカンプを指さしながら、ホテルの支配人にしきりに話しかけている。白髪が勝る髪をオールバックにした品のよい顔立ちの支配人は、一緒に撮影に立ち会っている部下の女性に意見を求める。撮影前、ウエディングプランナーという名刺を配り、それぞれにクセのある撮影スタッフたちを興味深そうに見ていた彼女は、小さな声で支配人になにか耳打ちすると、すぐに身を反らせ、はじけるように笑いだす。細いからだがテーブルにふれて、トレイに伏せられたワイングラス同士が小さく響き合う。
「そうですよね、おっしゃるとおり、モデルの位置、こちらの方がやっぱり絵になりますよね。カラダ、気持ちななめにして。いやぁ~、やっぱり若い女性の意見って、参考になりますよね」
額に垂れかかる前髪を払い、目をせわしなく泳がせつつ、林田はカンプに赤字を入れていく。正社員を希望しながら三年目も年契約となってしまった焦りからか、客の意見には逆らえないようだ。そんな弱気な営業スタイルが彼の立場を軽くし、今ではホテルに出入りする地元の一業者さんと同格扱いになっていた。県東部エリアのホテルと式場を一人でカバーしていると自負する彼の手帳は、スケジュール欄がたちまちアポで埋まり、不規則な食事も手伝って白い顔からはむくみが消えたことがない。
遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。
15年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。