小説の続き書きました。新版・遠いデザイン1-1 | 産廃診断書専門の中小企業診断士

産廃診断書専門の中小企業診断士

ふじのくにコンサルティング® 杉本剛敏 中小企業診断士事務所の杉本です。私はコピーライターとしてネーミングやコピーを作る一方で、中小企業診断士として企業のマーケティングを支援。2021年、2016年に静岡新聞広告賞受賞。これまでに提案した企画書は500を超えます。

新版・遠いデザイン1-1


2001年 冬

 

笛の鳴るような音が響いてガラス窓が震えていた。強い潮風が湿気をこの部屋に滲ませようとしている。垂れ込めた灰色の雲が、岩場に根を張る葉むらや海上に点在する漁船、背景に引かれた水平線から残照の輝きを奪い、窓外の風景は暖房が効いたこの室内とは反対に上昇感がない。大きなガラス窓の中に動いているのは、岸壁の一角に群れているおびただしい鳥影だけだ。岩の高みから海面へ大きな弧を描く鳥たちは、下降する線上に風を見つけて広げた翼をしばらく固定する。それは自らが鳥であることを誇っているようにも見えた。七瀬はうっすらと湿ったガラスを指先で擦った。

「おまえさん、ねえ・・・・・・」  

背後を小田嶋の声が横切った。それは明後日の方向に飛んでいったみたいに調子外れだった。このカメラマンは真面目な話をする時には茶化した物言いになる。振り返ると、長身の痩躯を窮屈そうに屈めて一心に布バックの中をまさぐっている。

アシスタントの手を借りつつも、撮影のたびに重い機材を持ち運んでいる小田嶋の肢体には、まだ固い張りのようなものがブルゾンの上からでも感じられた。同じ中年とはいえシャープペン、ワープロ、パソコンと、軽便な道具を使い替えてきた七瀬のようなコピーライターとは違って、カメラマンの仕事は肉体労働といえるのだろう。七瀬はペンだこが消えかかっている右手の中指に目を落とす。

「こいつよ、こいつ」

 四つ折にされた紙が飛んできた。広げる先から複写の粗い女の顔が現れて、小田嶋の茶化した物言いの理由がわかった。明日、このホテルの婚礼施設の撮影に使うモデルの写真だった。1992年生まれ、身長167cm、体重51kg・・・・・・、そんなプロフィール欄の文字が目の端をかすめた。

「シマさん、そんなに心配なんだ?」

 七瀬はガラス窓を離れ、和室の畳に腰を下ろした。使い込んだ大きな座卓が部屋を占領していたが、海に面した窓際には小振りのガラステーブルを挟んで二脚の籐椅子が置かれた板間もあって、ビル街にあるホテルのような息苦しさはない。

「ちぃっとばかし、可愛いいからって、笑えるの? ポーズとれるの? ホテルの担当者にはいってあるの? 初仕事だってこと」

 モデルがスカウトされたばかりの新人であることは七瀬も知っていた。明日の撮影には終日、モデルクラブのマネージャーが付き添うことも。フレッシュさは新人の特権だと、情報誌の紙面ミーティングに同席していたマネージャーの熱っぽい声が七瀬の耳にリフレインされてきた。

七瀬はガラス窓を離れ、和室の部屋の畳に腰を下ろした。使い込んだ大きな座卓が空間を占拠していたが、海に面した窓際には小振りのガラステーブルと二脚の籐椅子が置かれた板間もあって、ビル街にあるホテルのような息苦しさは感じなかった。

「ちぃっとばかし、可愛いいからって、笑えるの? ポーズとれるの? ホテルの担当者に伝えてあるの? この子、初仕事だってこと」

 モデルがスカウトされたばかりの新人であることは七瀬も知っていた。明日の撮影には終日、モデルクラブのマネージャーが付き添うことも。フレッシュさは新人の特権だと、情報誌の紙面ミーティングに同席していたマネージャーの熱っぽい声が七瀬の耳にリフレインされてきた。

 

 

遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

 

14年前の2001年が舞台。

中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。

この歳になると。そんなことしか書けませんので…。

地域の産業支援を本格的にやりだしてから、

コピーを前みたいに書けなくなったので、

その手慰みのつもりで書いています。