遠いデザイン17-1 | 産廃診断書専門の中小企業診断士

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ふじのくにコンサルティング® 杉本剛敏 中小企業診断士事務所の杉本です。私はコピーライターとしてネーミングやコピーを作る一方で、中小企業診断士として企業のマーケティングを支援。2021年、2016年に静岡新聞広告賞受賞。これまでに提案した企画書は500を超えます。

遠いデザイン17-1

 

2001年 初夏

 

「えっ、チラシの改訂? ……それって、課長の方で対応できないんですか?」

 逃げ腰になっている七瀬を不審に思いつつも、三谷はこのところのプレゼンで負け続けている苛立ちが言葉の端々に滲み出てくる。

「だから、さっきから言ってるじゃない! コピーの追加があるんだよ。それも一緒に、七瀬ちゃんにお願いしたいってこと!」

 朝一番に鳴った三谷の電話。用件は八月一日から三日間に渡ってT市で開催される地場産品フェアにJAが出展を決めたこと。それに伴って以前納品した印刷物の一部をフェア用に改訂したいということだ。

 しかし、七瀬をうろたえさせたのはそんな用件以前のことだ。JA、と聞いた瞬間によみがえった亮子の生々しい声の感触。だが一方的にまくしたてる三谷は、電話を切る前にさらに七瀬を追いつめる言葉を吐いた。

「あっ、そうそう、今回も担当、亮子ちゃんだからね。七瀬ちゃんも、やりやすいだろう? そっちから彼女に電話を入れて、近いうちにチャチャッと打ち合わせやってきてよ」

 いったい、どのツラさげて彼女に会いに行けというのか。もはや取り返しのつかない三日前のあの告白。いくらのぼせ上がっていたとはいえ、恥知らずにも、よくもあんなことが言えたものだと、七瀬は何度繰り返したかわからない自責をまたぶった。

 あの夜の電話が彼に残したものは羞恥心と惨めさでしかなかった。それが徐々に後悔の念へと変わり、今ではほとんど恐怖に近い感情が七瀬を支配していた。それは、あの密告が周囲にバレはしないかという怯えだった。

 


遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

 

14年前の2001年が舞台。

中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。

この歳になると。そんなことしか書けませんので…。

地域の産業支援を本格的にやりだしてから、

コピーを前みたいに書けなくなったので、

その手慰みのつもりで書いています。