小説の続き書きました。遠いデザイン16-5 | 産廃診断書専門の中小企業診断士

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ふじのくにコンサルティング® 杉本剛敏 中小企業診断士事務所の杉本です。私はコピーライターとしてネーミングやコピーを作る一方で、中小企業診断士として企業のマーケティングを支援。2021年、2016年に静岡新聞広告賞受賞。これまでに提案した企画書は500を超えます。

遠いデザイン16-5

 

2001年 初夏

 

 市境のトンネルを抜けた所で七瀬はハンドルをいつもと逆に切って、真新しいアスファルト舗装のバイパスに乗った。後は道なりに飛ばせば、十分ほどで新興住宅地に到着する。すでに直線道路の遙か先、暗い山並みを背景に泡粒のような光の集積が帯状に広がっているのが見えた。

 道の両側にはDVDのレンタルショップ、イタリアンレストラン、カラオケボックス、ゲームセンターといった真新しい店舗が所々にできていた。七瀬は、以前、街灯すらなかったこの道沿いに、これから雨後のタケノコみたいに生えてくる様々な店のネオンサインを想像しながら、今日の記念日にふさわしい場所を求めて四方に目を走らせる。

 ただ不思議なことに、旧道の頃に何度か走ったことのある一帯の風景に既視感がない。それが七瀬に、どこか知らない遠い街に一人迷い込んでしまったような錯覚を与えた。以前は田畑ばかりが広がっていた土地が一変してしまったせいだと思いつつ、車を路肩に停め、自販機で買った缶コーヒーの栓を抜く。生ぬるくなった液体が喉をくすぐりながら胃の中に落ちて、七瀬は思わず咽せ返る。

 9時と決めていた電話予定時刻が刻々と近づいていた。そして亮子の顔がちらつき始める。七瀬は気を落ち着けようとタバコに火を点ける。背後では信号機のない直線道路を車のライトが左右から矢のように飛び去っていく。

 運転席に戻り、再び車の流れに乗ると、前方から深まってきた闇を抱えて、サメの背ビレのような突起物が徐々に大きさを増して迫ってくる。その塔看板がピンク色に滲んで見えたのは周囲を縁取るネオン管のせいであり、もう店名が読みとれるまで近づいた七瀬は、示されたパーキングの矢印に従って車を徐行させた。ダッシュボードの液晶時計はあと十分ほどで九時になろうとしていた。

県内最大級とは聞いていたが、そのショッピングセンターは暗い海に浮かぶ巨大な戦艦のように土臭い郊外の闇を計算され尽くした光のラインで切り取っていた。

七瀬は正面パーキングに車を停めて、ドアの脇に立った。店舗のファサードに目をやると、四方の闇から光源に誘い出されてきた蛾のように、買い物客が明るい出入り口に吸い込まれていくのが見える。その顔は、どれも束の間の幸福感の照り返しに揺れている。見慣れない土地の夜の時間に心細さを覚えながらも、同時に束の間の自由を与えられた気分にもなった。

 

 

遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

 

14年前の2001年が舞台。

中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。

この歳になると。そんなことしか書けませんので…。

地域の産業支援を本格的にやりだしてから、

コピーを前みたいに書けなくなったので、

その手慰みのつもりで書いています。