遠いデザイン16-2
2001年 春
萌子から手渡された出力紙をパラパラと捲ってみた。頭に二本のプラグを突き立てたパンダのできそこないみたいな動物。それがいろんなポーズを取りながら紙面に展開されている。トラみたいに黄色と黒のシマ模様を配した丸々としたボディは、細かいギザギザの入った輪郭線のために感電しているようにも見えた。
「このキャラ、けっこう、ユニークなんだね。でも、チラシやテレビのコマーシャル、それに店内のポスターやPOPなんかにも、この子が使われるんだろう。着ぐるみとかになって店頭で飛び跳ねたりしてさ。店、子連れの客も多いわけだし、このくらいインパクトあった方がいいよね。プレスにも取り上げられやすいし」
賃貸しマンションの一室を仕事部屋にしている点は七瀬と同様だったが、萌子のマンションは市の中心部ではなく南端の漁港付近に位置していた。駅前から伸びる商店街の中ほどにあるこのマンションに七瀬はJRを二駅下ってやってきた。降り立った駅前には目ぼしいビルの影もなく、通りを歩いていてすれ違ったのは粗末な釣り道具を手にした老人一人きりだった。
古びた商店の店頭には、黒光りする年代物の木の棚に似つかわしくないカラフルなお菓子やファンシー文具などが並べられ、時折、漁港の方から響いてくる漁船のエンジン音が人気のない通りを抜けていった。
飲物でも出すつもりなのか、萌子が無言でキッチンへ入っていった。一人残された七瀬はあらためてこの室内を眺め回してみた。八畳ほどの空間はコンピュータが置かれた大型デスクを中心に、絡み合うケーブル線でつながれたプリンタやスキャナー、コピー機などで占められていて圧迫感すら覚えた。
壁際には、なぜか、場違いなラブソファーが置かれていて、その座面には下着のようなものが丸まっている。それを目にしたとたん七瀬は急に落ち着かなくなった。それはプライベートな生活の場となっている隣室にあるべきもののはずだからだ。
遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。
14年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。