前回(6-1)の続き
一方、三谷は全く別のことを考えていた。彼の脳裏にまず浮かんだのは、制作費や媒体費をざっと積み上げたこの仕事の総売上とプレゼンに勝つための最適なスタッフの組合せだった。ライターは? 一瞬、七瀬の顔が頭をかすめたが、最近、新鮮みとパワーをなくしていると思うと、不安が疑問符を付ける。そろそろ潮時かもな…と思いつつも、美紀は仕事にきまじめな七瀬を選びたがるだろとも。
ドアがノックされ、女性社員が次番となっている広告代理店の来社を告げた。一時間と決められていたオリエン時間はとうに過ぎていた。この話を持ってきてくれた三谷と馴染みの古参社員は、とうとう、顔を見せずじまいだった。
「プレゼンに参加させていただいてありがとうございます。せいいっぱいがんばって提案させていただきますので」
何か言い足りなさ、聞き足りなさを繕うように、声と表情はつとめて明るく三谷はそうしめ括ったが、その丁寧な物言いの裏にある不安を感じでもしたのか、美紀のおじぎの仕方からいつもの快活さが消えていた。
遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。
10年ほど前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。