ウォーターサーバーを家庭へ。2006年は250億円程度だった宅配水の市場が11年には約800億円に近づき、伸びは鈍化するものの、16年頃には1,300億円くらいに達するようです。このマーケットシェアの拡大に伴い、新規参入企業も増えており、キャベジンで知られる医薬品の興和や、天然水ブランドをもつサントリーなどが参入し、シェアの切り崩しを図っています。いかに他社と差別化したマーケティングを行うか? そんな視点でとらえると、この二社は会社の独自資源にもとづいた戦略をしているの
がわかります。
まず、興和ですが、ドラックストアに販売代理店になってもらう、病院などの医療機関への設置を行うなど、“医薬品販売で培った取引ルート”という独自資源を十分に活用しています。同時に、カラダに良い成分を入れ機能性飲料水の開発も行っており、こちらは“医薬製造の技術”という独自資源を活用しているわけです。
一方、サントリーは天然水と同じ、採水場で商品を製造。“ブランド力という独自資源”を背景に、シェア獲得を目指しています。
そんな中、最大手のナックでは、対抗策として、水を宅配する際にスタッフが15分間の家事代行を行うというサービスをスタートさせました。新規参入組はコストをおさえるために、使用後に容器を捨てる方式をとっていますが、ナックは定期的に家庭を訪問する“配送網が独自資源”。この顧客接点があるからこそ、宅配に御用聞き的な付加価値を加えることができたのです。
こうしてみると、各社とも、それぞれにもつ独自資源を活用していることがわかりますが、大切なのはそれが真似されにくいかどうかという点。たとえばショールームを設けて、ウォーターサーバーを置いたり、水の試飲をさせるといった拡販方法もありますが、これなどは独自資源にもとづいた戦略ではないため、他社から簡単に真似されてしまうはず。ヒト、モノ、カネ、情報、ノウハウ、文化など幅広い領域にまたがる独自資源は、企業が長い歳月をかけて蓄積するもの。それが独自であればあるほど、そこから生み出される商品やサービスも独自性の強いものとなり、長期間の競争優位が保てるというわけです。
そう考えると、世代を越えて愛されるロングセラー商品は、一朝一夕に作れるものでないのがよくわかりますね。
