写真集や楽曲を購入するとポイントが付与され、獲得数によってスペシャルな特典がもらえる。
"これならできる、私にも。"大好きなアイドルに会うために、話せるために、握手をするために、最新情報をいち早く入手して行動する。
普段は、急ぐことが苦手な私、インターネットに疎い私。
遅れをとらないように、インターネットは初級レベルから学習して。
デタラメに散財していたお金たちの使途は決定し、せっせと働く日々を。
やっと、手にした"握手会"の権利。
期日は、ひとつき程先なのに、ワクワクが止まらない。
服はどれにしようか?ネイルは?髪は巻くかアップにするか?サロンに行く?エステも?
ダイエットにも挑戦しようかな...
疑似だとはいえ、淡い期待や妄想もある。
気分は"大好きな恋人に会いに行く"のだから。
当日、告知通り、ゴミ袋もカバンに入れた。
"会場にゴミを置いて帰らないように"と、サイトで発表があったから。
私は、自分のものではないゴミまで拾う。
高揚のせい?心が豊かに在るせい?なんだか優しいキモチになれる。
イベント終了後、握手会。
5つにわかれたブースに行列ができる。
私も推しの列に。
ざっとみて1時間。言い換えれば、1時間後には会える、握手ができる。
外並びから、ブース内に。心臓がバクバクする。
すると、私の4人前にいた女性が、推しアイドルに、いきなり抱きつきキスをした。
ブースからは悲鳴、警備員はその女性をはがし、険しい表情で両脇を抱え外へ。
そこで、握手会は、中断。やがて、アイドルの安全確保や体調を理由に中止。
私の前の女性は、泣き出し、後ろの人は怒り出して、場内は騒然とした。
やっと、この日が来たのに。待ちに待ったこの日が。
"やらかし"と、呼ばれる行為。
連れ出された女性のせいで、皆が不愉快で、悲しいキモチになった。
皆が守った約束やマナーは、この1人のために救われない。
アイドル側から開かれた門戸をピシャリを閉じられた瞬間だった。
皆が、それぞれに約束を守り得た権利は、ゼロからやり直しということ。
悲しい、腹が立つ...優しいキモチだった自分がなんともいえないキモチに変わる。