私は罪を犯しました。取り返しのつかないことをしました。
当初、理由は正統で、自分は間違っていない。
その思いだけで行動して、周りが見えずに、自己を振り返ることもせず、感情的に、怒りに任せて...
制御され、我に戻ったときには、目の前で女性が倒れていました。
小柄な身体に馬乗りになり、片手で回るくらいの細い首を、両手で握り締め、力任せに身体を揺さぶり続けたのです。
倒れた女性は目を見開いたまま、動かなくなっていました。
警察官に羽交い締めされ、その場で逮捕されました。
女性は私が殺したのです。人生を私の半分も生きていない、夢のために頑張っていた学生です。
彼女がバイトしていた飲食店。笑顔が可愛くて、気遣いのできる人。店主とは馴染みで、彼女は専門学校の学費のために働いていると聞きました。上京して、独り暮らし。すべてを自分でやりくりしていると。
私は、50才を目前にしながら独身。
貯金もそこそこありました。
何かちからになりたい。初めは"あしながおじさん"のような感覚でした。
勉強に時間を使ってほしいから、宝くじに当たったからと、学費やパソコン、休みも必要とお小遣いを渡しました。
彼女は、はじめ拒否しました。
返していける保証ができないからと。
"それなら、働き出したら、月に1万円ずつ、店主に渡しにきてよ、ぼくがそれを受け取りに来るから。"と伝えると、彼女の顔がぱっと明るくなり、納得して受け取ってくれました。警戒されてたことがわかりました。少し、ショックでしたが...
その日から、彼女は、今までよりも私に話し掛けてくれるようになりました。
私は、彼女にお店で会うことが楽しみになり、お金や品物を渡すことで高揚し、陶酔していったのです。