その時々が大切で、その時だけが重要だった頃。

この先がどうでもいいとかじゃなくて、考えていなかっただけ。
"点"である"今"だけのことしか。
楽しいことしかり、不都合なこと、嫌な空気も、その瞬間に存在するものと対峙する。
"任せておけばいい"保険や税金のことは親に。
言われるがままに、署名し、月々数千円が自分の口座から引き落とされるからと。
興味のないジャンルの話しは退屈で脳が動かなくて。
母親が言った通りに、月々、約5千円が引かれていた。
何年かが過ぎて、ひとり暮らしをはじめた記念に友人との旅行。はしゃぎ過ぎて足を骨折。
手術が必要。月々の5千円が報われる時。
手続きで、外交員が書類を持参。
保証内容を見て、言葉を失った。
若い私の医療保障の薄さ。
手厚い保障は、死亡保険金。受取人は母親。
マンションでも買うのだろうか、外車にでも乗り換えるのだろうか。
母親は、"必要なものがあれば連絡してね"しれっとメッセージをよこした。

我が子より長生きする活力は素晴らしい。

そんな皮肉が浮かぶのは、驚きを越えて、ショックを受けたから。
保険も税金も面倒だから親に任せておく。
よい条件でまとめてくれるから...聞くまでもなくわかること。
それが、あの保証内容では、我が子に"死んでほしい"が、込められている気がしてくる。
万が一、私が先に逝ったなら...母親はどんな顔をしてこの死亡保険金を請求するのだろうか。
"あの子が私のために"とか、涙を見せたりしながら...恐ろしい、恐ろし過ぎる。