隣の芝生が自宅のよりも青く見えたのか?
その筋の"先輩"の入れ知恵なのか?
夫が、この家を出ていくと言い出した。
驚き過ぎた私は、"どのタイプのそれなの?"と、少し茶化した。
夫は、うつむいたま、小さく低い声で、"離婚したい。"と。
別居でもなく、いきなり離婚。
"とうして?"私は、聞いた。
"ストレス"と発した。
"はぁ?"私は、挑発気味に返した。
夫は、それ以上話さない。
ストレス...あなたがそれを言う。笑っちゃう。
心のなかで叫んで一呼吸。
"どんなストレスなの?"少し歩み寄る感じで聞いた。
"うちに帰るのがストレス。"らしい。
言いたいこと、浴びせたい言葉は山のようにある。しかし、それらを閉じこめた。これストレスじゃん...心でつぶやく。

なんとなく感じたのは、たぶん、夫は、実行する。今、留まっても、それは時間稼ぎで、結局、いつかは出ていくと思った。

今夜、これから荷造りをして、子供たちが寝ている間に、説明もさよならもナシらしい。
住む場所は言わない。連絡はとれるように、必ず反応することを約束した。
"他に好きな人がいるの?""それはない。"即答。
止めてもムダだと思った。今後のこと、子供のこと、お金のこと...離婚となると、決めなければいけないことがたくさんある。
"別居じゃダメなの?""離婚したい。"
頑なさに、呆れて、諦めた。

私には、"やがて"が見えた。

夫の性格上、今は、何を言ってもムダ。ただ、やがて、現実を体感する。そして、戻ってくると。
籍は抜けているから他人。
しかし、その状態の夫を受け入れて同居人になれば、決定権はすべて私にある。
夫は、懲りて戻って来たのだからありがたく従う。
いい機会だと思うことにしよう。
さぁ、いってらっしゃい。あなたが思う独身を、存分に体感してきてね。