"普通""平穏""平凡"...それが、どんなに幸せな状態なのか?
なくなって気付くモノのひとつと言える。
毎日、同じことの繰り返しを続ける。
当たり前であり、退屈。でも、それこそが何よりもありがたい状態だということ。
それが保たれるハズで、そのことを真剣に考えたこともない。
それが、ひとりの人物との関わりが原因で、あっけなく壊れていく。
積み上げた時間=幸せだった時間は長い。
それが、数ヵ月で崩壊し、家族離散、俺は犯罪者になった。
母親が出会い、信頼した人。
父親の浮気を吹き込み、不安をあおり、悪徳商法で母親をコントロールした。
母親は、その悪魔のような人物を先生だの、神様だの呼んだ。ヘドが出る。
家庭を壊し、父親を追い込み、可愛い妹と弟から両親を引き離した張本人。
母親は、悪魔に魂を売った。今や召使。
家庭も育児も放ったらかしで、身の回りの世話をして、我が家から金銭を運び、捧げて...母親もアホだ。それに気付かないのだから。
母親の中では、その悪魔がいちばん偉くて、大切。2番以降は存在しない。
父親が偉いのではなく、家庭が大切でもなく。
家からお金がすごいスピードで減っていく。
権利証、財産系の印鑑、通帳、全て悪魔の元に捧げた母親。
俺は何度も止めた。しかし、激昂し、罵り、ゴミのような言われ方をし、アイロンやゴルフクラブで殴られた。"金を稼げ"と。
俺は構わない。父親も同じキモチだろう。
まだ母親が必要な妹と弟のことだけ。
そのためだけだった。
俺は、悪魔の住む館へ向かう。
母親が帰宅した隙に。
ドアホンを鳴らすと、俺世代の男性が対応。
背後には、ホスト風の男性がふたりいた。
その顔面と、ほぼ裸の筋肉質剥き出しの姿から、何をしていたのか想像がついた。
"俺の家の金で..."そんなことはもういい。
名前を告げ、息子だと話す。
対応した男性の後ろから、一瞬、顔を見せた女は、家に入れてくれた。見る目のいやらしさにぞっとした。
俺は、母親を解放してほしいと頼んだ。
勝手に来ているだけとか、頼んでいないのに身の回りのことをして、金銭を置いていく、"勝手に...俺は、腹が立った。
女は、高級そうな椅子から立ち上がり、俺に近づいてきた。その手が、顔や首を撫でる。
俺は、怒りを堪えて、丁寧にその手を外す。
側にあったテーブルに重ねられた、俺の家の通帳が目に入る。
いちばん上にあったのが、妹の学費の積み立て通帳。解約の処理がされていた。
カッと頭に血がのぼった。
このお金が、ここにいる数人の男のために...
数秒の記憶がない。女が目の前で倒れている。頭から血を流して。
側にいた男らは、直ぐに逃げた。
揺さぶるも反応がない女。目を見開き、動かない。
家に電話した。母親が出て、事情を話すと、"この人殺し!"と、叫び狂った。
俺は、絶望した。数分後、パトカーが数台来た。
母親が通報したのだろう。
もういい、俺は。
どうなってもいい、俺は。
この世から、この女がいなくなって、心配は消えたのだから。