【書籍情報】
すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険
山本 健人
出版社: ダイヤモンド社 (2021/9/1)
ISBN-13: 978-4478113271

【概要・コメント】
すごく売れている書籍と評判だったので,購入してみた。
まず,縦書きの本としてはよくできていると思う。

人体の仕組みについて,特に難しいことは書かずに,理解しやすい咀嚼した形で説明を仕上げている点は素晴らしい。

一方で,16万部も売れるほど,素晴らしい本かと言われると・・・。
やはり出版社の宣伝が大変上手なのだろう。
表紙やまえがきも,なかなかキャッチーで,途中の挿絵も豊富なので,売れる教養本・豆知識本の条件はすべて満たしていると思われる。
でも,すべて読み終わった後に,何かが残っているかと言われると,残念ながらその感覚はない。

いかんせん,通勤の隙間で1週間で読み終えられるのだから,その程度の内容でしかない。
1つ前の制御の本は,トータルで1か月ほどかかっているのだから,それと比べると内容の(密度の)違いは仕方がないだろう。

トータルとして,人体や人間工学に関して他の本を読んだことがないのであれば,この本を読んで損はないと思う。
これ1冊で,人体の神秘に触れたと感じ,次の1冊を手に取りたく内容化と言われると・・・,である。

最近の出版社は,Webサイトやnoteでバズった人を見つけてきて,本の執筆を進めるのが常套手段のようである。
この著者も「外科医の視点」というWebサイトに記事を書いていて,その際とに出版社が目を付けたということであろう。

この「外科医の視点」というWebサイトの記事は,結構面白いので,本書を購入するのをためらわれた人も,まずはサイトを見てみるとよいかもしれない。

以下,本書で気になった内容を列挙しておく。

  • P.55 頭にタンコブができやすいのは,頭皮は血が出やすいうえに,すぐ下に頭蓋骨があるために溜まった血液が内側に広がれず,外側に広がって皮膚が膨らんでしまうからである。
  • P.073 ピロリ菌は,アルカリ性であるアンモニアを産生するため,自らの周囲の強酸を中和できるのだ。
  • P.076 胆汁に含まれるビリルビンが,腸内細菌の作用でウロビリンに変化し,これが便を茶色くしているのだ。
  • P.091 なぜ食後に便意を催すのだろうか? 実は,「食べ物が胃に入ると大腸の蠕動が促される」というしくみがあるからである。
  • P.167 すべての妊娠の70~80パーセントは,主に染色体異常によって気づかれないうちに流産として終わるともいわれる。
  • P.177 鎌状赤血球症の異常な赤血球は壊れやすいため,マラリア原虫が侵入すると赤血球が破壊され,原虫が増殖できなくなる。
  • P.242 麻酔の安全性を高めたのが,イギリスの医師ジョン・スノウである。先に述べた通り,コレラの原因を見抜いた医師だ。
  • P.255 2019年の国際糖尿病連合(IDF)の調査では,世界で4億6300万人,すなわち11人に1人が糖尿病にかかっているとされる。
  • P.259 アスピリンの主な副作用は,(P.260 胃や十二指腸の粘膜を保護する作用を持つ)プロスタグランジンを産生する酵素,シクロオキシゲナーゼを阻害することである。
  • P.261 NSAIDs (非ステロイド性抗炎症薬)を長期に使用する際に,消化性潰瘍の予防効果が証明されているのは,プロトンポンプ阻害剤,プロスタグラジン製剤,H2受容体拮抗薬と呼ばれるタイプの胃薬だけである。
  • P.333 へそはもともと腹腔の中と外がつながる出入り口だったために,硬い筋肉や筋膜が部分的に欠損している。したがって,もっとも壁が薄く,腹腔内に安全に到達しやすい。
  • P.362 学びによって高まるのは,「知識の量」よりむしろ「知識がないことへの自覚」だと私は思う。

【書籍情報】
はじめての現代制御理論
佐藤和也・下本陽一・熊澤典良
出版社: 講談社 (2012/9/7)
ISBN-13: 978-4061565081

【概要・コメント】
初学者向けの制御関連の教科書は,日々進歩してる。
本書も,その進歩を感じることができる1冊である。

基本的に,昔の教科書と比べると以下の特徴がある

  1. 内容を絞りこみ,初学者が知るべき内容のみを掲載
    →結果として,定理・公式の証明などは省略される傾向にある。
  2. 式変形を丁寧に書き下すことで,数学が苦手な学生が途中で離脱するのを防止する
  3. 新しい概念を示した後は具体例を必ず示して,結局どのような事象を説明したのか解説

まさに,この本は上記3つの基本を丁寧に抑えた初学者向けの良書である。
現代制御の講義に着いていけなかった学生は,一度本書を読んでみるとよいであろう。

一方で,定理や公式の証明はほとんど書かれていないので,なぜそのようになるのか?
を理解したい場合には,昔ながらの本や論文を参照する必要がある。

やはり,たくさんの教科書が出版されることによって,教科書の役割も分散されてきて,読者が目的に応じた教科書を選べる時代になってきたと思う。
今の大学生がとてもうらやましい限りである。

このレビューを書くときにAmazonをチェックしたら,なんとオールカラーの改定第2版が出版されていた。
この本を購入したときは,まったく気づかずに白黒版を買ってしまって非常に後悔。。。
カラー版,見てはいないが,だれがどう考えてもグラフの線の弁別性はカラー版の方が高いであろう。

 

 

 

【書籍情報】
再発見の発想法
結城浩
出版社: SBクリエイティブ (2021/2/20)
ISBN-13: 978-4797395310

【概要・コメント】
コンピュータや情報通信技術の用語を解説し、そこで用いられている考え方が、日常生活にどのように役立つかについて解説した書籍である。

本書はもともとソフトウエアデザインという雑誌で連載されていたコラムを書籍にまとめたものである。

このようにある技術分野で研ぎ澄まされた考え方を日常生活に適用できないか、という考え方は共感できる。
一方で、各用語に関する掘り下げ方が十分でないため、「なるほどね~」というレベルで終わってしまうのが勿体ない。

特に、「あなたも、考えてみましょう。」という終わり方は,やや消化不良感が否めない。

著者が深く考える過程を,読者と共有するような書き方ができれば,もっと面白い書籍になるのではないだろうか。