【書籍情報】
興奮する匂い 食欲をそそる匂い ~遺伝子が解き明かす匂いの最前線 (知りたい!サイエンス)
新村 芳人
出版社: 技術評論社 (2012/3/16)
ISBN-13: 978-4774150130

【概要・コメント】

「本書は名著である。」

まず,そんな結論から書きたい。

匂いについて雑学程度に知りたいと考えて,お気に入りの出版社である技術評論社であれば外しはないだろうと購入してみたものの,なんと雑学レベルなどと言っては失礼なほど,
とても良く出来た書籍である。

匂いの教科書と言っても過言ではないほど,匂いという1つのトピックを多面的かつ深く掘り下げている素晴らしい書籍である。

また遺伝子解析およびその技術発展についても,ずぶの素人が読んでも実に分かりやすく,かつドラマティックに書いている点が大変すばらしい。

あえて1つ残念な点を挙げるとすれば,そのタイトルであろうか。

多数の読者に読んで欲しいと考えて,柔らかめのタイトルにしたせいか,この書籍が一番伝えたいことが,ぼやけてしまっている気がする。

そのおかげで,自分が本書を手に取ったのだが・・・・


本書の中で記憶に残った記述を以下に列挙する。

P.27 光受容体(明暗1個,色覚3個)に対して,嗅覚受容体は約400個

P.35 米軍はにおい爆弾を開発しようとした~中略~
 腐敗した有機体のにおいが最も嫌われる結果が出たものの,絶対的な悪臭の発見には至らなかった。どうやら,あらゆる文化圏にとって普遍的な,不快な匂いというものは存在しないらしい

P.58 果実臭のする分子の多くはエステルである。
P.58 ギネスブックによれば,世界一臭い物質はエタンチオールだそう

P.63 グリシンを除く19種類のアミノ酸はすべてキラル(光学異性体)である。

P.65 L-カルボンはスペアミントの匂いがするのに対して,その光学異性体であるd-カルボンはキャラウェイの匂いがする。

P.77 アミグダリンが分解されると,ベンズアルデヒドと,猛毒であるシアン化水素(青酸)が発生する。このベンズアルデヒドの匂いがアーモンド臭である。 ~中略~ アーモンド臭は「杏仁豆腐の香り」

P.87 嗅細胞は,神経細胞が外界と直接接触している人体で唯一の場所である。 ~中略~ 嗅細胞は30~60日程度で新しいものに置き換わる。一般に神経細胞は新生することはないが,嗅細胞だけは例外である。

P.282 カプサイシンを摂取することと,高温を感じることは全く同じ効果を持つ