【書籍情報】
悪意 (講談社文庫)
東野 圭吾 (著)
出版社: 講談社 (2001/01)
ISBN-13: 978-4062730174
【概要・コメント】
さすが東野圭吾著作という1冊である。
Amazonのレビューでもいろいろと解説をされているが,
新しい推理小説を創作しようという意図が感じられる。
(以下一部ネタバレ)
今回の新しさは本文中に出てくる文章が
全て真実ではないということである。
一般的に推理小説は本文中に散りばめられたヒントから
真犯人を推理し,その正誤を楽しむという娯楽方法であるが,
本書はその楽しみ方自身に手を加えているところが非常に新しい。
具体的には本書は本文が犯人の告白書もしくは回顧録という
形で描写されているのだが,そこには犯人が警察を欺こうとして
事実をゆがめて(もしくはある特定の部分を削除/誇張して)
記録しているというところである。
つまり,読者は本文に書かれた事実を積み重ねて推理するのではなく,
本文に書かれている真犯人の矛盾とトリックを暴くということになる。
とここまで,本書の素晴らしさを書いたが,
もう一方で本書が取り組んでいる新しさには,あまり賛同できない。
それは犯人の動機が不明確な「悪意」によるというものである。
真の事件において,動機を論理的に積み重ねるということは
実際に困難なのかもしれない。
しかし,事実の一部を切り抜いて読者に提示するという
書き物の世界において,登場人物の思考の曖昧さは
作品への感情移入や世界観の構築を阻害する要因になると思われる。
上記のように新しい取り組みも,
どこまで読者の了解が得られるかという意味では
なかなか難しいものではあろう。
しかし,東野先生には今後とも「読者を裏切る新しさ」に
挑戦し続けて頂きたいものである。
- 悪意 (講談社文庫)/東野 圭吾
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