真緒の彼氏はあたり前に真緒を下駄箱前で待っていて、三人で一緒に部活に行く。
 後ろから寂しそうに歩いてる蘭を見るのは少しつらいけど、真緒はそういう薄情な派手彼氏を、うんと想っている蘭をどこか可哀想とは違う感情で見てた。

 真緒は部活で剣道部に入っている。
少ない部員ながら男女仲良く真面目に稽古にいそしんでいる。
何故剣道部を選んだのかというと道着を着た人はかっこよさが三割くらい増すし、防具をつけ竹刀を持っていると、もう無敵に近いから憧れた。
蘭はちょっと躊躇していたけど、真緒と一緒ならいいと言って入っている。
 普通の制服時は何のときめきも感じない男子の先輩も練習中は無駄にかっこいい。
 自分もあんなに強くなりたいし段を取れるように頑張っていきたいと思っている。とにかく練習は腕がくたくたになる。
それに手も足の裏も豆だらけで血も滲むし、防具をつけても打突は普通に痛いもの。
でも、真緒にとってそんなことはさほど辛いことではないと思っていた。

 部活からの帰りに真緒と蘭は20分以上かかる長い幹線道路脇を自転車で帰る。
橋の上を通るときはバスやトラックにギリギリを走られて怖い思いをする。
結構になる往復の道は天気の悪い日などきつい。
でも、家に帰ると母親には いつ車に轢かれるか分からないわ などとうそぶいて笑っている。
 真緒は自分の本当の気持ちを誰にも素直に言う気がない。親にもなおさら。

 真緒には到底追いつけない成績優秀な兄と姉がいる。
真緒は学校で成績のトップ争いなどできた試しはない。
兄と姉はいつもそこを目指し到達しても尚、努力し品行方正と言われている。     引っ込み思案の真緒には関係のない生徒会や委員長などは常に二人には適任者と、先生やクラスメートに一目置かれている。

 まるでこの差は何なのか考えても何の解決にもならない。
 自分らしく生きるしかないのだけど、いつもこの家にいることは針のむしろに座っている様だ。
家族の仲は良いのだけど。せめて大人しく家族に迷惑をかけない様ないい子でいるしかない。
部活も真面目にこなし勉強も出来る限りの成績を残して。
自分にはこの家で発言権などないと成長するにつれ思うようになっていた。

 だからか真緒は学校にいる時には小さくなっている自分を少しは戻せる気がした。  
そして仲良くしてくれる可愛い蘭がいる。
彼氏は盲目的に優しい。
 私にこんな活発で人気もあって大事にしてくれる彼氏が出来るとは思ってなかった と蘭に言うと、 羨ましいと素直に言う。

 蘭の派手彼氏は相変わらず連絡をほぼくれないし、何の返事も適当らしい。
興味がないなら付き合わなければいいのにと真緒は心の中で思う。
蘭を好きにさせておいて放って置く人はいないと思っていたのに。
でも、蘭にしたら好きになった男子と付き合えるのは幸せと思う。 勉強とかも頑張れる気がする。

 真緒は蘭にも誰にも言えてないままだったけど、高校に入学してすぐから、違うクラスの男子で大人っぽい雰囲気のあるちょっと目立つ子の事が気になっていた。
自分は好きになっていると思っていた。
だから彼と通りすがりには複雑な気分で見てしまう。
蘭をどこか羨ましい気持ちでいるのは、自分には告白する気持ちも元からないのに、ずっと彼のことをかっこいいなと見てしまうからと思っていた。