真緒の彼氏は、真緒は世界一可愛い、といつも言ってくれているけど、本当にどう受け止める言葉かわからない。
嬉しい顔はするけど、聞き流す感じだ。
恥ずかしすぎて対応できない。
中学一年のとき蘭がアイドルよりかわいいと言ってくれた時は、びっくりしすぎて嬉しい顔もできなかった。
今までそんなことを言ってもらえたことはないし、顔の傷痕が目立つのに自分でアイドルになりたいと思うわけないけど、憧れは普通にある。
劣等感の塊の真緒は家族からも友達からも、とにかく他人からの褒め言葉に飢えていた。
そこに蘭は颯爽と現れて真緒に微笑みかけたヒーローのようだった。
なによりも蘭は、ちょっと都市部から来た才色兼備で、スポーツもできて、友達を作るのがうまくて、男子との会話も余裕だ。
そんな、真緒の憧れる才能を持つ蘭が自分の見た目を褒めてくれた。
引っ込み思案な自分にも、何でもいいから取り柄の欲しかった真緒にとって、なぜだか目の前が開けたように思えた。
それがきっかけで少しずつ自分の取り柄を何個か見つけてゆくことが出来た。
そうやって三年前、心をぐっとつかまれた友達を大事に思っていたから、ずっと蘭の幸せを邪魔しているものは排除したかった。
体の弱いところがある蘭をあたりまえにカバーして来たけれど、蘭がそのことに強く感謝しているのは、あまり分かってなかった。
自分とは、ずっと一番の友達でいて欲しいと願う真緒は彼氏より蘭を優先してしまうところがあった。
学校から明るい時間に帰る時は、蘭が気をきかせて自分は一人で帰るから、彼氏と二人で帰ったらと言っても真緒は三人で帰ろうと誘う。
蘭が、さみしがり屋なことを知っているので出来るだけ一人で帰らせたくないと思う。
以前蘭が怖い人に声を掛けられた話は、自分なら多分平気だっただろうと、真緒は思った。
もちろん彼氏と仲良い感じを見せたりしない。でも、彼氏はかわいそうにも思うから夜に電話をくれる時にちゃんとフォローする。真緒にとって、どんどん大事な人になっていってることを伝えるには、まだ言葉も足りていなかったけど。