真緒は自分の席の机にうつ伏せたまま休み時間の騒がしさの中、モヤモヤする気持ちをやり過ごす。
昨日のことは全部否定したい気持ちだった。
夜寝られず朝方にウトウトして、登校するか悩んだ。
両親に休む理由をごまかして言うのが到底無理だったから登校することにした。
面倒な気分になるのは学校だけで充分だった。
昨日の夜、彼氏はもう真緒の様子が違うのを分かってくれて電話で心配してくれた。
でも、蘭とのことは何も言ってない。
彼氏はどこまでも優しく真緒の強い味方に思える。蘭とも仲良くしゃべっているし、社交的で、男友だちも多い。
妬けるほど綺麗な肌をした顔に切れ長の一重の目で、真っ直ぐ素直に育ってきた健全な輝きを放っていた。
大事にされてきたから彼女のことも大事にしてゆけるのかなと想像して、人ごとのように彼氏の心の優しさを分析する。
同じ高校に来て部活も一緒で、これは運命の出逢いと、言うのだろうか。
でも真緒にはまだ誰かから本気で好きになってもらえるような自信は全くなかった。
いつまでも一緒にいるのかなと思う反面、自分の幼い部分や他に気になる男子がいることで自責の念にかられる。
真緒がこの高校を選んだのは、真面目な校風を聞き及んでいたのと、二つ上の姉とは同じ高校を選びたくなかったから。
常に比較され、うんざりしていた。
こればかりは経験したものでないと分からないかもしれない。
自慢の姉であるものの優等生の王道を行く姉と、地味な真緒では皆同情さえしてくれる。
そんなことをわざわざ高校に行ってまでも経験しなくていいし姉に頼りきってきた自分は駄目だと分かっていた。
ただ、入学してみれば、そんなに真面目そうでない子もたくさんいる。
昼休みや緊急時以外は携帯は使用しないことになっているのに先生が来ることはないからと休み時間のたびに使っている子たちが多い。
今日も写メを見てるらしい子達がいて何なのか、せわしない様子と思う。
昨日、蘭といた4人の女子たちが廊下の窓近くで、こちらを見ながら不敵な笑みを浮かべて、しゃべっている。
自己憐憫の塊と化している真緒は、かなり目つき悪めで何気に見ていると、あきらかに真緒を標的とした笑いを差し向けて来た。
身体を起こし周りをよく見ると真緒がクラスで一番可愛いと思っている女子が、もう一人、目鼻立ちのはっきりしたクラスのムードメーカーの子の隣で、いつもより冷たい表情をして携帯を見ながらも真緒を見ていた。
次の授業は始まったけれど、いつもの真面目にやり抜く真緒はいない。
眠いのもあるし、さっきのことが何か気になる。今すぐ帰りたかった。
後ろの席で、よく寝てる野球部男子の気持ちが分かってきた。
真緒は自分の甘さとか、自分が正しいと思い込んで来たものを考え直さないといけない時がきていると感じていた。
そして、蘭のことは、すべて受身に徹する気でいた。