夏休みが来て、真緒は初めて彼氏の家に行くことになった。
駅まで迎えに来てくれて、一緒に家に着くと、玄関で母親が迎えてくれた。
 想像していたものの至れり尽くせりで、よけいに緊張して、どうしていいかわからない。
 彼氏の部屋に行くと、机の上に新しい菓子の袋がびっくりするほど置いてある。
何なのか聞くと、どれでも真緒が好きなのを選んでいいように買って来てくれたらしい。後は、きれいに掃除された部屋は完璧な整い具合だった。
 いつもの様に、学校のことやバンドのこと彼氏のバイトのことを話して、ひとつ袋を開けた。
見たことないおもてなしにびっくりしたけど、彼氏の気持ちは嬉しかった。

 真緒は、何もかも健全な彼氏のことを妬んでいる自分に気づいていた。
自分のことで悩みとか本当はあるのかなと、聞いてみたかった。
 自分は葛藤ばかりしてて何もしてあげられないのに まだ、バスケ部の彼が心の中で大きな存在でいる。知っているのは彼と自分の二人だけでも、彼氏にすごい悪いことをしていると、別れた方がいいかもと、いつも思う。
 そして、こんな裏切りは、まさに批判されて仕方ないことと思っていた。
 でも彼氏は大好きな友達には違いないから一緒にいたかった。そばに居てくれないと、不安になるくらいに思う。

 そして、何もなく送ってもらって帰る。
 普通は、こんな時には少し何かあるのだろうけど、真緒の頭の中で彼氏と親密になることは考えてない。
 空気を読んでそのまま帰した彼氏は、紳士と呼べる類いの男子と思った。
 でも、このままでいると彼氏は、いつか自分を嫌になると想像はしていた。
 
 夏休みも部活はあって、蘭はほとんど休みで来ないけど、真緒は毎回ちゃんと練習に参加していた。
 三年生は引退して女子は三人になってしまったから、真緒も秋の試合には出られるように頑張りたかった。
 夏合宿と称して一年女子の家が持つリゾートマンションに先輩と蘭と真緒の4人で遊びに行った。
プールで泳いだりするだけだったけど、蘭との間にあんな事があったのが、嘘のように思えて楽しい数日間だった。
そして、あのストレスのない日々は幸せだった。

 二学期に入ると、急に蘭と派手彼氏は別れることになった。
真緒はびっくりしたけど、内心ほっとする。蘭は心配するほどは、つらそうでなかった。

 派手彼氏は一学期よりさらに派手になっていた。でも、彼もお金持ち故の心の闇があると想像していた。

 真緒の親戚には、かなり生活の豊かな人がいて、家に行くと、普通の友達の家に行った時とは違いがいろいろがあった。
 家が大きいとかそういう事以外に何でもお金で解決している感覚がある。
 人の心をお金で買えると思っている人の家は、どこか、閑散とした気持ちがする。
 もし、そんな家に生活して来たなら、派手彼氏は以外と寂しい子なのかもしれない。そんな同情に似た感覚はあった。
 そう思うと、あんなにイライラさせられたり、真緒の環境悪化の原因になったこともどうでもいいと思い出した。 
 
 ただ、この先、真緒の悪いうわさが静まっても毛嫌いしていた子たちとは、もう、ずっと友達にはなれないと思っていた。