母親に自分の意見をはっきり言うことは、普段から勇気が必要だった。
いつもは大人しい真緒の言葉を真剣に受けとめて母親は黙っていた。
しばらくたって、よく考えてから決めるように と、言われた。
以外な反応に真緒は驚いて、自分の意思をちゃんと伝えることの大切さを今更ながら感じる。
誰でも悩みがあるだろうし、誰かのせいというより自分は学校生活に馴染めない子なのでは、とさえ思っていた。
毎日の中で 自分を演じているクラスメートは普通で、心にないことは出来ないと、いちいち思う自分は異端児に近いと思う。
そして、まわりに迷惑をかけているようなものと思う。
蘭は柔軟性がすごくて相手の悪意など、すぐどこかに消し去ることが出来ると思っていた。真緒にはどうやっても真似など出来ない。
自分のあらゆる出来なさ加減に幻滅して行く。
ただ、担任の先生に言われた言葉は真緒の中で残る。
兄弟は大学まで行ってあなたが高校中退では、ずっと後悔しますよ と。
そんなことは分かっての気持ちだったけど、はっきり言われると心に刺さった。
次の日、蘭にもほとんど決めた口調で自分は退学したいと言った。
蘭は、思いもよらないことと何も言えない感じだった。
いつもと違う真緒の様子に反対の意見をどうにか言った蘭は、理由を聞く。
真緒は、学校に来るのが嫌になったから と、言った。
真緒は、今、こんな気持ちになるなんて自分でも思いもよらなかった。 そんな簡単に決めて言いわけがないし、皆が心配するのだから。
冷静になるようにと思うけど、我慢し続ける方が一番つらい選択の様な気がする。
未来のために今どうにか耐えてみたとしても、最低限の心がもたなければ、すでに未来などないようなものなのだから。
もう、蘭は自分を選ばない。
ずっと陰口の対象になり続けると思ってしまう自分は、臆病で一番馬鹿げている。
彼氏は本当の彼女を作って幸せであってほしい。
もうどうやっても追いつけない兄弟とは完全に違う道に行きたい。
両親には本当の自分を見て欲しい。
そんな感情から逃れられなかった。
担任は、いろいろ話をしてきて真緒の才能をもっと発揮できるように励ます。
入学時の知能テストは真緒がクラスでずば抜けて一番だったと言う。
真緒は疑いながら担任の必死さに申し訳なくなってくる。結論を出すことを早まらないようにとは思った。
蘭は、いつもと雰囲気が違う。
本当に退学とかしないで と、言って腫れ物に触るかのように真緒に話しかける。
何かクラスでの様子が変わった気がした。
廊下ですれ違うたび睨んできたあの四人の女子たちは、そうでなかった。
次の日もそうで、真緒は驚く。
そして、彼女らに蘭が何か言ったと気が付いた時、それは同時に悲しい証明となった。
気持ちをごまかしてきたことを突きつけられて、そして真緒の環境は平穏になっている。
自分は変わらなければいけなかった。
人を羨むばかりの自信のない、思っていることを言えない臆病さを捨てて行かないと、どこへ行っても同じことと悟った気がした。
そして蘭が憎くて、やっぱり好きだった。