僕の名前は登崎新汰。
今日で17歳になった。

 僕の日常は高校に行って放課後は部活動するかバイトに行く。
部活の陸上部では部員も顧問もいい加減なもので、時期にもよるけど僕はバイトを優先している。
陸上部に無理矢理誘われて入ったものの何気に性格には合ってない。
ただ僕は駿足なので優待されている。
一応、去年の県大会では少しの練習で短距離で県の新記録をマークした。
自分自身は冷静な割にまわりの反応が凄くて驚いていた。

 バイトは高校の仲の良い男友達二人と一緒に始めてほぼ一年が経った。
さっぱりした性格の蒼成とオタクぎみの侑斗とは、もう何年もいつも一緒にいる。
二人といると訳もなく楽しい。

 僕の両親はもうすぐ離婚することが決まっている。
母親と妹との三人で家を出てアパートで住み始めて3ヶ月が経った。
今朝、母親は僕のためにバースデーケーキを買って来ると言っていた。
甘いものは嫌いじゃない。
でも、そんなにケーキで喜ぶ様な歳でも無いし、バイト入ってるから遅くなるとは言って出てきた。

 蒼成は僕の誕生日プレゼントに、僕のお気に入りの女性歌手S.Aの新譜CDをくれた。
何がいいか聞かれて、それを言っていたから嬉しかった。
侑斗は昨日バイトの後で夕御飯を奢ってくれた。
いつも行ってるお好み焼き屋で、ちょっと高めのメニューを選ばせてくれた。
3人でたわいもない話をして家に帰ると、時計は午後9時半を回っていた。
これといって不満も無く、かといって幸せな気持ちを抱くことなどとは、ほど遠い日々は感覚を確かめる暇も無く過ぎ去って行く様だった。

 僕のバイトはアミューズメントプラザでボウリング場の掃除や管理をする仕事で客が少ないと、かなり暇に立って見ているだけで済む。
たまに、ぼーっとしてウトウトしそうになったりする。
 今日も平日で余裕だなと思いながらタイムカードを押していたら、いつも受け付けにいる無愛想ぎみで無口な女性は急にクビになったと、主任が言ってきた。
主任と言っても夜学に通っている僕より四つ上の男子で、結構頑張ってはいるが、ちょっと雰囲気頼りなかったりする。
その主任が
「今日から彼女が受け付けに入ってくれることになります」と、数人のバイト達を前に一人の女性を紹介した。

 女子高生のバイトも三人いたけど夕方からたまに入ったり、土日に入ってる時に受付にいる。
確実に暇な時だけ主任が一人で受け付けにいた。
彼女は笑顔で
「よろしくお願いします」と、挨拶した。
ほとんど喋ったことのなかった地味を絵に描いたような前の常勤の受付女性とは逆の印象の彼女は、最初は二十歳過ぎくらいかと思っていた。
というのも、同じ建物内にある書店で、同じ制服で働いているのを見かけていたから。
正直言って、僕の好きな歌手のS.Aに少し似ていると思っていた。