私の周囲の女友達らは半数以上が結婚していて、家事と育児と仕事に忙しい毎日を送っている。
そんなのだと、何ヶ月も会ってない友達のほうが多くなってきた。
自分自身、友達より母親と出掛けることの方が気楽に思うような年齢になって来たのもあるけれど、母は親友のように私を理解してくれるし包容力は果てしない人だ。
今まで生きて来て嫌なことや落ち込む事があっても、自分の気持ちのすぐ側に、いつも母の励ましや応援してくれる姿があって、勇気を持って乗り越えられてきた。
カフェ巡りも好きで、二人で昔からよく一緒に行った。
でも、何より私の得意な手作りケーキを家で2人で食べている時も幸せに思う。
まだ私が小学生の時、初めて一人で作った失敗気味のクッキーの良いところを褒めてくれたのが嬉しくて、子供ながら次からはもっと気を抜かずに心を込めて作る様にと大切なことを教わった。
料理についても同じで、レパートリーがとてつもなく多い母の教えもあって、高校に行く頃には、将来は調理師の資格を取りたいと決めていた。
短大を卒業後、調理師学校に行き免許を取得。食品会社に就職して、商品開発室の助手として働いていた。
その後、今の産婦人科医院での入院患者の食事を作るという仕事に落ち着いている。
個人経営のこじんまりとした職場は最初は温かい雰囲気に思えた。
でも、院長先生の従姉でもある年配の女性主任が、そこそこ面倒な性格の持ち主で毎日のように場をかき回していた。
時に優しいのか優しくないのか、わからない年長者の機嫌を常に取ることが仕事の一つになっていて、一番のストレスはここから来るとは、女性の先輩二人と後輩二人の調理師5人皆の一致した意見だった。
早出の日は早く起きて通勤。
朝7時前に調理室に着替えて入る。
そして、8時には手際の良いパートさんと二人で作った朝食を産後などの入院患者さんに配膳する。
その後、掃除や片付けなどして二人で休憩のコーヒーを飲みながら少しおしゃべりする。
その少しの時間の話は意外と他人には聞かせられないことが多かったりする。
自分達の休日の日の間にあった女性主任の暴挙を報告し合う。
パートさんの家庭の事情を勝手気ままに聞かされる。
夫と子供二人がいる彼女は、どっしり落ち着いた外見からは想像もつかない様な問題を抱えていた。
私の家庭の事情もいろいろ聞いてくる。
それでパートさんは調理器具などの片付け掃除などの仕事を終え、どこかすっきりした顔で帰って行く。
その後、9時に皆が通勤してくると、先ず女性主任へのチヤホヤが始まる。
何かで機嫌を悪くさせると長い時間、調理場が面倒な雰囲気になる。
機嫌を害した人物への八つ当たりや、いじめに近い外し、無視など。
そして、被害者は後で皆に慰められる。
主任の定休日は待ち遠しく、その一日は皆でのびのびと仕事ができる。
とにかく、時折ある、年配の看護婦長さんからの厳しい指摘なども大したことは無いものに思えた。
今日はもう3回目に入るボウリング場でのバイトがある日だった。
午後3時半に仕事を終えてコンビニで軽食を買って、駐車場で車の中で横になって休憩した後、10分くらいでアミューズメントプラザに着く。
4時半に入ると、高校二年の春呼ちゃんは一人で受付にいた。
女子高生と隣で一緒に働く事になるとは、とても不思議な感覚でいる。
さっきまでの職場の雰囲気とのギャップが激しく、まだまだ慣れない。
明るい店内は大音量の音楽を流していて、隣のコーナーにはゲーム機が所狭しと並んでいる。ビリヤード台も3台あって大学生らしい男子達が何人か遊んでいた。
春呼ちゃんは今時の見た目に、雰囲気はキリッとした姿勢の良い、感じの良い笑顔の女子だった。
それと登崎君は、今日も合間で気楽によく話しかけてくれるし、彼の友達二人も素直な感じの男子達だった。
春呼ちゃんは、登崎君を慣れた扱いで持ち場に行かせていた。
常勤の男性社員達とも少しずつ話せるようになってきて、私は安心した。
登崎君は少しぼーっとしているような時も多い感じだけれど、レーンの調整で試しに投げている時は、定時にいつも練習に来るプロを目指しているお客様の様な綺麗なフォームだった。
何にしても最初から他の男子達とは違う落ち着きがある。
それで、私が
「登崎君はかなり上手だね」と、褒めると、嬉しそうにお礼を言う。そして
「いつでも椋井さんに教えますよ?」と、私の目を真っ直ぐ見ながら優しい声で言ってきた。
思いがけない返答に(男子高校生と仲良く二人とかでボウリング出来る訳がない)と、距離を置くような表情で小さくうなずいてみた。そして
「機会があれば、お願いしますね」と、微笑んで社交辞令の言葉を返した。
登崎君は私の顔を見て表情一つ変えず、違う話をしてきて、元の仕事についていた。
今日も平日なのでお客様は少なくて私も高校生バイトも8時に帰れる。
主任は休みだったので、時折様子を見に来てくれていた副店長は、とても優しい感じで接してくれた。
次は、ちゃんと忙しくなりそうな土曜日に入る予定だった。
明日の病院勤務は自分の定休の日だから、久しぶりに独身仲間の翔子さんと少し会うことにしていた。
翔子さんは10歳も年上だけど、気さくで優しく何でも話せる仲と私は思っている。
彼女はIT企業に勤務している才媛で、お嬢様育ちの人の良さがあると思っている。
ここから近くのファミレスで待ち合わせた。