授業間の休み時間にいつものように蒼成らと喋っていると、隣のクラスの春呼が来た。
春呼は小学校からの腐れ縁で、お互いの家のことも何でも良く知り合っている。
バイト先が一緒なのは、彼女が話を持って来たからだった。
中学校の時は男子達に異常な人気で、大変なくらいだった。
性格が明るく気位も高くて、見た目も細すぎる線とかが男子受けが良い。
大学も難関を選ぶようだった。
バイトも二年生いっぱいで辞めると言っているし。
春呼は時折、僕を呼び出して、たわいもないことをよく喋る。
それで、次の授業のことなどを話したいだけ、自由に喋ったら、さっさと自分のクラスに帰って行った。
蒼成、侑斗らはもう別に何も言ってこない。見慣れている状態だからと思う。
二人とも長い付き合いだけど、それ以上に春呼は一番に僕にくっ付いてくる。
それで、他の男子達には羨ましがられていて、紹介しろとよく言われる。
僕が思うには、彼女はただ、ストレス発散してるだけだろう。
土曜日が来て、秋の風が吹く中、朝からアミューズメントプラザにバイトに入る。
9時に行って掃除を始めた。
9時半には開店する。
椋井さんが受付あたりで掃除やパソコンなどの用意をしている。
椋井さんが来てから、この職場に気持ち活気が出ていると感じている。
副店長も笑顔が増えたし、主任はいつも通りのようだけど、前よりやり易そうな感じなのは確かという顔をしている。
僕は、と言うと、どうにかして話しかけるきっかけを探しているのが正直なところだった。
いつもの土曜日のように、お客は次々と来て、僕は忙しくフォローに入っては働いていた。
合間に見たら、受付には春呼ともう一人、春呼の友達の蕾未がいた。
椋井さんの姿が見えない。
よく見ると受付の奥のスペースで、ここの主任と、隣の書店の主任と三人で話をしている。
書店の主任はエロい顔しているおじさんだけど、たまに会うと優しいイメージだ。ちゃんと挨拶してくれる。
主任は今日も余裕の無い表情で、働き回っていたのに動きを止められていた。
しばらくして、椋井さんも受付に来て三人で仕事をしている。
椋井さんの笑顔は誰が見ても、可愛いと思うはず。
最初は女子大生くらいかと、ここの皆が思ったらしい。雰囲気が若いし、服装も派手じゃなくて程良い。
昨日、春呼もちらっと、そのことを言っていたし。
春呼はあまり同性を褒めない甘く無い女子で、僕の前ではなおさらだった。
同性を心にも無いお世辞で、可愛いとか、良い子とか、やたら褒める女子は嫌いだ。
だから、そこは春呼の長所と思う。
実のところ、中学の時は彼女と付き合うとかまで、雰囲気が進んでいた時もある。
ちょっとしたきっかけで、お互いなんか冷めたので止めた。
蒼成らは知っているけど、忘れたふりをしてくれている。
曖昧な気持ちで付き合うのは良くない。
僕はそこら辺、真面目なのでまだ彼女を作ったことがなくて、やはり彼女持ちの男子は羨ましい。
理想は、初めて会った時にドキドキが止まらなかったって女子と、付き合うこと。
こんな理想は、オタク気味の侑斗は笑って言うだろう。
奇跡に近いと。
でも、そう思うのは自分の勝手で、理想は理想として、持っておきたい。
休憩時間になって、スタッフルームに行くと、椋井さんと春呼が座って休憩していた。
春呼はにこにこ笑って楽しそうだった。
椋井さんは優しい声で
「お疲れ様。楽しい職場だよね。マイク使うのはちょっと抵抗あるけど…」
と、言って、椅子を勧めてくれた。
団体客イベントの時のマイクの説明を受けていた時は、顔が必死なのは見ていた。
春呼は慣れているので余裕に使っているけど、椋井さんはおとなしい感じだから苦戦しているのと思っていた。
そこも可愛いとしか思えない。
薄化粧の彼女は近くで見ても若く見える。僕の知っている26歳位の人はこんなのじゃない。
夕方になって、同じ勤務終わりに会った椋井さんは、書店に寄ると言って帰って行った。
僕はさりげなく、自分も見たいものがあったと言って、微妙な距離をとりながら一緒に書店に着いて行った。