ここで、改めて「創発現象」や「カオス理論」などの「複雑系」について解説しておきます。さて、人類は長い間、宇宙や万物万象のメカニズムを探求してきました。 

 

しかし、すでに見てきたように、現代の脳科学やAI(人工知能学)などでは、近代までの哲学や科学が真理を探究する上で大前提にしてきた「意識(自由意志)」など存在せず、ただの “幻想 ”ではないかというところまできています。

 

そして、基本的に意識(顕在意識)に代わってあらゆる万物万象を成り立たせているのは、無意識(潜在意識)です。ただ、例えば、望む結果や望ましくない結果が具体的である場合には、その現実化は比較的容易にイメージできるものです。

 

が、「複雑系」といわれる、多数の要素が非線形的に相互作用しながら全体としてまとまりを作っている場合はどうなのか?複雑系が存在するとなると、これまでの科学があらゆる現象の理由を一つ一つの要因(証拠)に分解して説明してきた発想(要素還元主義)が成り立たない世界があることを意味します。

 

このような現象の一つに「創発現象」があります。心理学でいう、全体を個々の部分の足し合わせではなく、丸ごと認知する「ゲシュタルト現象」に似ていますが、これは、構成要素一つ一つの性質の総和では説明がつかない特性が全体として現れる現象です。

 

例えば「1+1=2」のように、それぞれが簡単なルールによって動いているように見えても、ときには「1+1=3とか5」などのような、全体として見たときに巨大で複雑な結果を作り出す現象です。

 

これまでの「要素還元主義」では、りんごの形、色、味をそれぞれ積み重ねて見てもせいぜいりんごの絵が描けるだけで、実物のりんごの出現には繋がりません。が、りんごは実際に認識でき、そこには要素の足し合わせ以上の何かが働いています。

 

この他、創発現象として挙げられるものには、宇宙の誕生(ビッグバン)、生命の誕生(リトルバン)、新型感染症の急速な伝染、株式市場の急騰・急落などがあります。

 

(次回に続く…)