妊娠を考える女性には大敵とされる「冷え」ですが、
夏場の「冷え」についてもご質問が寄せられます。
「冷えている」というだけで、直接不妊の原因となるというわけではありませんし、
どこがどのように冷えるかも個人差がありますので、
漢方の立場から考えてみたいと思います。
夏は「暑い」という印象が強くなり、
1歩外に出ると頭がクラクラするほど暑い日もありますし、
夜もクーラーをつけて寝ないと危険なほど気温が高い日もありますね。
そのため、どうしても冷房の中で過ごす時間が多くなり、
薄着にもなりがちかもしれません。
ただ、妊活面においては、体が冷えることによって血行が悪くなり、
血行が悪いことでさらに冷えが深刻になるという悪循環には注意が必要といえます。
その悪循環は、子宮や卵巣が収まっている骨盤腔内も同じで、
循環がよくないために経血がドロッとしたり生理痛がひどくなったりして、
排卵や受精や着床という一連の動きも滞ることにつながるといえます。
体が冷えて巡りが滞ると基礎体温も不安定になり、排卵日がわかりにくくなったり、
リズムが乱れる要因にもなってしまいます。
夏の冷えが問題なのは、夏を境に気温が低下する季節へ
切り替わっていくこともひとつです。
寒くなって冷えが本番となる時期を、すでに冷えた状態で迎えると
慢性的な冷えを積み重ねてさらに頑固な冷えにつながる可能性も考えられます。
冷えによる血行不良は、漢方では「瘀血」といって、
ドロドロ経血が要因となって婦人科系の不調を引き起こすとされています。
子宮内膜症や子宮筋腫や卵管閉塞なども、状態によっては
医学的にも妊娠を妨げるとして手術や治療を優先されることもあるように、
婦人科系の血行不良は単に流れが悪いというだけでなく、
慢性的に滞ることで、劣化を招いてしまうのです。
漢方では「冷え」は「血」の流れが悪くても、不足しても起こると考え、
体質的な要因へアプローチします。
➀「血がドロッとして停滞して末端まで届きにくいために冷えるタイプ」
=「瘀血(おけつ)」体質⇒サラッと新鮮な血になるように「駆瘀血薬」で対応。
このタイプは、食習慣として甘いものや揚げ物や
味付けの濃いものなどを控えて、ある程度運動もして、
特に生理の時は水分を多めに摂っていただくことを
おすすめします。
➁「温かさを保つための血が足りないタイプ」
⇒「血虚(けっきょ)」体質=「補血薬」で量的なボリュームを補う。
このタイプは胃腸も弱いかたも多く、偏食をせず、
赤身の肉もよく噛んで食べるのがおすすめです。
運動は無理なくできる体操やストレッチなどが向いています。
冷えは血のバランスとつながりがありますが、
女性は生理によって常に一定ではありません。
ですから、季節ごと、生理周期などに合わせて調整することも大切です。
また、ストレスをため込みすぎたり、睡眠不足や不規則な生活など、
自律神経の乱れも体温調節に影響しますので、
生活習慣から見直してみると改善のポイントが見つかるかもしれませんね。