SS 君と俺の未来のために(Act.310) | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 お久しぶりでございます、一葉です。

 お休み宣言してから早2週間が経ちましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 

 本日はどうしようかと悩んだのですが、先日発売になった本誌の続き妄想をお届けします。ということで当然ながら本誌ネタバレを多分に含んでおります。ネタバレ回避お嬢様は回れ右を推奨です。

 

 ちょびっとでもお楽しみいただけたら嬉しいです。


■ 君と俺の未来のために ■

 

 

 

 

『 だからコーンはキョーコちゃんって呼んで!? 』

 

 

 思い返せば

 俺がこの子を最上さんと呼ぼうと決めたのは、様々な要因があったからだった。

 

 

 幼い時分に出会ったあの頃

 彼女の名を呼び捨てていいのは彼女の実の母親と、将来旦那様になる人ショーちゃんだけ、という決まりが彼女の中にすでにあったし

 

 

 一年前。奇しくも再会して間もなくだったあのときは

 彼女をキョーコちゃんと下の名で呼ぶほど親しくもなかったし

 

 そもそも敦賀蓮として、事務所の後輩とはいえ女性の名を軽々しく口にするのは馴れ馴れしすぎるきらいもあった。

 

 

 

 だから俺は敢えて最上さん、と苗字呼びを選択したのだ。

 

 

 

 しかし現在、この子の芸名は京子であって、その名が業界に浸透し始めてきている。

 

 その証拠に、滅すべき不破から始まって

 社さん、貴島、ビーグールのストーカーや緒方監督、村雨泰平にとどまらず、とうとう古賀くんまでこの子を京子ちゃんと呼び始めた。

 

 

 自分が把握できているだけでもこれだけの数がいるのだ。

 それ以外にも年の近いスタッフたちまで視野にいれたら、この子を京子ちゃん呼びする男たちは相当数に上るに違いない。

 

 

 もちろん、多くの男たちは芸名である京子に「ちゃん」を付けただけの京子ちゃん呼びだから、キョーコちゃん呼びとは雲泥の差があるけれど。

 

 それに気づける奴がどれほどいると?いいや、いないに違いない。

 

 

 だからこそいつまでも黙殺できるはずもなかった。

 なぜなら俺は将来この子の旦那様となるに一番近い場所にいる男なのだ。

 

 

 そんな俺が

 いつまでも「最上さん」呼びをしていいはずがないだろう。

 

 そうだよね?最上さん!!!?

 

 だからこそ、今日この案を提示する。

 君と俺の未来のために。

 

 

 

 

 

「――――もう遅いからいきなり本題に入るけど」

 

「は・・はい!!」

 

「俺は、何故未だに最上さん呼びなのだろう―――――」

 

 

 この二秒後、それまで緊張していた風だった彼女の口から軽薄なため息が漏れ聞こえた。

 気のせいか肩の力も抜けた気がする。

 

 真剣な顔を一ミリも崩していない俺の真摯な瞳を凝視した彼女の唇が一呼吸おいて柔らかくほどけた。

 

 

「えっと、なぜと問われましても・・・」

 

「ちなみに聞くけど、君の存在はもう業界に浸透しつつある。そのことについての自覚はある?」

 

「え?いえ、いえ。敦賀さんがおっしゃるような浸透というレベルにはほど遠いと思います。言っても私はまだデビューしてから一年しか経っていませんし」

 

「違う。もう一年も経っているんだ。しかもダークムーンの美緒、BOX"R"のナツ、泥中の蓮の紅葉、と君は着実に成果を上げてきている。それでこれは今だから言うけど、そのたびに君を京子ちゃんと呼ぶ男たちが増えていることに俺はいささかの不満を覚えているんだよ、実は」

 

「え・・・」

 

「ここでもう一度問う。なぜ俺はいまだに最上さん呼びなのだろう」

 

「あの、それってつまり、敦賀さんも私を京子ちゃん呼びしたいってことでしょうか?!」

 

「・・・・・・・仮にそうだと言ったら?」

 

「お断りしますっっ!!」

 

 

 だよな。そう言うと思った。

 

 安心して、最上さん。

 俺だって今さらこんな状況で、ほかの男たちと同じ呼び方で君を呼びたいなんて微塵も思っていないから。

 

 

 だってそうだろう。

 俺はこの子と両想いになったんだ。

 

 つまり、近い将来、俺がこの子の旦那の座に就く可能性が一番高い男になった。

 

 

「そう。じゃあキョーコ、って呼び捨てならいいのかな?」

 

 

 晴れやかに微笑みながらそういうと、最上さんはグアムの時よりも慌てた様子で立ち上がって俺の案を力強く拒否った。

 顔面総崩れにさせて。

 

 

「それは一生許可できませんんんん!!!!」

 

「・・・・・・・・・・な」

 

「許可できませんっ!!」

 

「・・・・どう」

 

「絶対無理!!!」

 

「・・・り」

 

「お願いだから察してくださいっっっ!!!!」

 

「・・・・・ 」

 

 

 察して、と叫んだ彼女は目に見える肌という肌が、まるでアメリカザリガニに変身したかのように真っ赤になっていた。

 さらに言うなら顔中、というより全身すべてが照れている、ように見える。

 

 予想外の反応を見せたそれに心の底から優しいマグマがこみ上げて、思わず笑みがこぼれた。

 

 

 初めて見る、君のそんな顔。

 

 彼女に合わせて腰を上げ、手を伸ばして熱した頬にそっと触れると、最上さんは避けずにただ視線を伏せた。

 

 

「察してください、敦賀さん。今の私の状態で・・・」

 

 

 そもそも俺は、君が俺からの呼び捨てを嫌がるだろうことなど当然のごとく予想していた。

 何故ならすでにグアムで俺はその理由を聞いていたから。

 

 

 

『声が敦賀さんだとお仕置きの一種なのかと思って心臓が縮み上がるからダメ』

 

 

 

 でもいまこの子の反応を見る限り、少なくともあの頃とは違う理由が出来たらしい。

 

 

「それ、察することは出来るけど、今後のためにも君の口から理由を聞かせてもらえたら嬉しいんだけど?俺が君をキョーコ呼びしちゃダメな理由」

 

「うきゃぁぁぁっ!!どさくさに紛れてまたもや呼び捨てなんてしないでくださいぃぃぃぃ!!!!」

 

「でも最上さん。意思の疎通はしておくに越したことはないと思わない?勘違いで行き違わないためにも」

 

「・・・っ・・・た、確かにっ!!!」

 

 

 真っ赤な顔、照れた様子

 なにより俺の接触に嫌がりもしない彼女の口元のゆるみが喜びを表している。

 

 これって俺、二度目のうぬぼれてもいいやつでは・・・。

 

 

「い・・・一回だけですよ?」

 

「うん、いいよ、一回だけで」

 

「本当に一回しか言いませんからね?!」

 

「わかったから言って?」

 

「本当の本当は言いたくなんてないんですからね?!だいたいが恥ずかしすぎることなんですから!」

 

「そう。でも俺は聞きたいから早く言って?」

 

「うぅぅぅぅぅ!!もう!!呼び捨てでもそうじゃなくても、とにかく嬉しすぎるからダメなんです!敦賀さんから名前を呼ばれたら顔面の緩みを抑えることが出来ない!つまり気持ちが周囲に駄々洩れになっちゃうので到底許可できません!!!」

 

「・・・・っっっ!!」

 

 

 

 やっぱりだ!やっぱりそれが理由なんだ?

 つまり君は、俺のことがとてつもなく好きってこと?

 

 

 やばいな、どうしよう、参ったな。

 そんな理由からの名前呼び拒否だと知ったら、さすがに無理強いは出来ないじゃないか。

 

 

 だって間違いなく俺、君を呼ぶたびにこのことを思い出して、社さんから冷たい視線を浴びてもおかしくないレベルで顔面が緩んでしまいそうだから。

 

 

 もっとも

 俺は最初から、ほかの男たちと同じ呼び方で君を呼ぶ気はなかったよ?

 

 キョーコちゃんとも、キョーコとも。

 

 

 

 今後、君を呼び捨て以外でどう呼ぶかはもうとっくに決めてあった。

 もちろん最上さん以外で。

 

 あとは君から了承の意をもらうだけ、って状態だったんだけど。

 

 

 でも今はもう少しだけ、この甘い空気を満喫しちゃってもいいよな?

 

 

「理由は分かった。じゃあ二人きりの時には呼んでもいいよね?キョーコって」

 

「んぎゃぁぁぁ!ダメに決まっているじゃないですかぁぁぁ!!」

 

「なんで?ほかの人にバレなければいいだけだろう?俺とキョーコの秘密の間柄が」

 

「ふにゃぁぁぁ!絶対にダメです!呼ばれる回数が多くなるほど顔面崩壊時間が長くなっちゃって危険ですから!!」

 

「なるほど。じゃあどのぐらい持続しちゃうのか後々のことを考慮して今のうちに試しておこうか、キョーコ」

 

「いやぁぁぁ、そんな人体実験やめてぇぇぇぇ」

 

 

 だって必要だと思うから。

 

 こんな二人きりの時間を堪能するのは。

 

 俺の心の平穏と

 君との幸せな未来のために必要なことだと思うから。

 

 

 

 

 

     E N D


予想外に甘々雰囲気になって満足です(笑) ※ちなみに今後蓮くんがキョーコちゃんをどう呼ぶかまで決めてあったのですが、内容的に入りませんでしたw

 

それと、ブリッジロックが入っていないのは蓮くんが彼らを知っているかどうかわからんから。

仮にその事実を知らなかったとして、LME事務所でたまたまその場面を見つけてしまったら、蓮くん、人知れずがっくりするんじゃないかしら♡って、妄想してほくそ笑んでしまった私がいます(〃∇〃)くふふ。

 

⇒君と俺の未来のために・拍手

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