久しぶりの時事作を両想い蓮キョでお届けいたします。
ちなみに今日はイースターだって知ってました?私は調べて知りました。
■ ゼロ個の幸せ ■
「 どうせ、どうせ私なんか・・・ 」
と、俺の彼女・・・とはまだ公言することが出来ないけど・・・が俺の目の前で分かりやすく落ち込んでいるのを、俺は黙って見つめた。
彼女が落ち込んでいる理由はこうだ。
お祭り好きの社長が気まぐれに催したLME社内イースター・エッグ大捜索大会で、イースター・バニーに隠された卵を見つけ出そうというお祭りに最上さんは鼻息荒く参加した訳なんだけど、その成果がゼロだった、というわけ。
社長が一体いくつの卵を隠したのかなんて知らない。けれど少なくとも参加者の大体が一人一個以上の卵を手にすることが出来たらしい。
その証拠に、形だけ参加すると言っていた琴南さんや社さんでさえ、一つずつ卵を見つけてきたのだ。
だのに真剣参加した最上さんの成果は間違いようもなくゼロ個。
スタートから終了まで3時間、きっちり時間を使っただけに
俺の彼女の落ち込み方は相当らしかった。
「 どうせ、どうせ私はゼロ個ですよ!!! 」
分かる。君なら当然そうなるよなって。
そして当然のごとく、琴南さんと社さんがフォローに入る。
「 ねぇ、ちょっと。そこまで落ち込まなくてもいいじゃない。良かったらこれ、アンタにあげるわよ 」
「 要らない。だってそれはモー子さんが見つけた卵じゃない。だからモー子さんの部屋に飾ってあげて 」
「 あ、じゃあキョーコちゃん、俺のをあげるよ。俺、一人暮らしだし、こういうのを部屋に飾る趣味とかないし・・・ 」
「 一人暮らしだからこそ飾ってください!今日の記念に!!残念ながら私は飾れないんですから・・・ 」
どうやら俺の彼女はかなり拗ねモードで落ち込んでいるご様子。
たまに見るそんな君も可愛いなって思えて、俺は目を細めた。
分かりやすいよな、本当に。
でも困ったことに、そんな君も俺はかなり好きなんだよ。いや、本当に。
「 ちょっと敦賀さん、黙って見てないで何とかしてくださいよ!鬱陶しくて仕方がないじゃないですか 」
「 そうかな。あれもまた最上さんらしくて俺はいいと思うけど 」
「 お前!!!キョーコちゃんが可哀想だとは思わないのか。あんなに嬉々とした様子で捜索に乗り出していたのに、一個も卵を見つけられなかったんだぞ 」
「 俺だって持ってないですよ 」
「 それはお前が参加しなかったからだろぉがっ!! 」
いや、まぁ、そうなんだけど。
参加しなかったのはそもそも参加する必要が無かったからな訳で。
まぁ、仕方ない。君が落ち込みっぱなしなのはやっぱり可哀想で俺自身が嫌だから。
「 最上さん 」
「 ・・・・・・どうせ、どうせ私は・・・ 」
「 もしかしたら物凄く落ち込んでいるのかな?ひょっとしたら卵を見つけることが出来たら幸せになれるとかなんとか、誰かから言われていたとか? 」
「 ・・・っっ 」
「 あ、ピクってなった。ビンゴだ 」
「 別に、私の運が悪いのは今に始まった事じゃありませんので、こうなるかなって心のどこかで思っていたからいいんですけど、いいんですけど・・・。でも、突き付けられるとやっぱり・・・。いえ、どうでもいいんですけどっ!! 」
「 ぷふっ。どうでもいいなんて思ってもいないくせに 」
「 笑わないでくださいよ、敦賀さん!!そういう敦賀さんは何個見つけられたんですか?もしかしたら手に余るほど見つけて来ちゃったとか?!それで手ぶらなんですか? 」
「 俺はゼロ個だよ。そもそも参加してないからね。君と同じゼロ個 」
「 私は探したのにゼロだったんです!! 」
「 うん、本当に分かりやすく落ち込んでるね。そんな必要ないのに 」
「 そりゃ敦賀さんは・・っ 」
「 俺は探す必要が無かったから探さなかったって話。最上さん、誰かから聞いたわけだよね?見つけられたイースターエッグの数が幸せの数だって言われていることを 」
「 ・・・っっ 」
「 そう、やっぱりね。幸せの数ってことは、つまりこういうことだよね。たくさん見つけられた人ほど幸せになれちゃうって? 」
「 どうせ私はゼロ個ですよ、不幸のどん底ですよ 」
「 ね。誰だってそう考えちゃう。でもイースターの卵って、本当はこう言われているんだよ。
たくさんの卵を手に入れた人はたくさんの幸せを。ちょっとしか手に入らなかった人は、小さいけどギュッと詰まった幸せを 」
「 ・・・・っ 」
「 卵が手に入らなかった人は、心の中にあるその人だけの幸せを 」
「 っっっ 」
「 大切にすればいいらしいよ。俺はそれで充分だから最初から探さなかったって話。・・・で、君は探した結果が何個だったんだっけ? 」
「 見つけ・・・られなかったんです 」
「 そう。つまり、君も俺と同じで心の中にある倖せだけで十分だってことだと思わない?俺はそう思うんだけど 」
言いながらまっすぐ最上さんに近づいて、彼女の視線を占拠する。その細い左手を自分の右手で掬い上げ、正しく俺たちは見つめ合った。
「 心の中にある幸せ?私の? 」
「 そう。君の心の中のどこかに落ちてないかな、君だけの幸せ。ほら、そことか、こことか、見つけられない?見えないかな、最上さん、君だけの幸せ 」
「 えっと・・・・・・っっ 」
「 ダメ?見つけられない?俺も探すよ、一緒に。どう? 」
「 ・・・っ・・・えっと、いえ、あの・・・・・っっ・・・たぶん、見つけられたかも・・・っっ 」
「 本当に?見つけられた? 」
「 はい、たぶん・・・ 」
「 そう。それは良かった。それで?その幸せだけじゃダメ? 」
「 う・・・っ、いえ・・・・・・ダメ・・・じゃない・・・・・・ですっっ 」
「 本当に?ちなみに聞くけど、それって俺と一緒の奴だったりする? 」
「 はうっ、はい、たぶん・・・たぶん一緒かと・・・っっ 」
彼女の手を自分の両手でぎゅっと握って、自分の胸元に引き寄せた。
反らされた顔を覗き込むと最上さんの頬が赤く染まっているのが見える。
俺の目の前で分かりやすく挙動不審になって
これでもかと照れ始めた最上さんを満足そうに見つめた俺の背には
二人からの鋭い視線が刺さった。
でも、ごめん。そういうの俺、全然気にしたりしないので。
E N D
公言前な癖にこんな所で堂々とノロケんな!!という視線のツッコミ(笑)
⇒ゼロ個の幸せ・拍手
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