いつもありがとうございます、一葉です。
こちらは読み切りの現代パラレルです。お楽しみいただけたら嬉しいです。
■ 初恋のきみ、初恋のひと ■
老舗漬物屋、もがみ。
若くして店主となった最上キョーコが作る漬物、その名も『蓮』は、いまや爆発的人気となり、現在は注文対応でせいいっぱいで店頭販売不可だという。
聞くところによるとその漬物は、若女将の初恋がコンセプトになっているらしく、ハス(正しくはレンコン)の漬物でここまでフィーバーするとは誰も想像していなかった。
そんなある日、ふらりと若者が訪れた。
漬物屋に男性一人が訪れるのは珍しいことのように思うが、老舗漬物屋もがみでは案外ありふれた光景だった。
「 すみません。ちょっとお伺いしたいのですが・・ 」
「 はい、いらっしゃいませ 」
声を掛けられた店員は目を見張った。
その青年は誰よりも背が高く、やけに整った顔立ちをしていたのだ。
漬物屋には不似合いな美男子。そんな印象を受けた。
なのに店に来たということは、誰かにお使いを頼まれたのだろうか。それとも噂を聞きつけて?
お使いを頼まれたのなら納得できると思った。けれどもし噂を聞きつけての来店だったとしたら。
こんなイケメンでも漬物を食べるのか、とそのシーンを想像して、自然と口元に笑みが浮かび、妙な親近感も沸き出した。
「 なにかお探しでしょうか?それとも試食を?どれでもお好きにご賞味いただけますのでどうぞご用命くださいね 」
「 ありがとうございます。あの、受注販売の漬物を作った人っていうのは・・・ 」
「 あ、それは若女将ですね。いまあちらで接客中ですが・・ 」
あちら、と指示された彼は漬物には目もくれず、顔を動かした。
客はそこそこ入店していて、それなりに賑わっている。複数いる店員たちも各々接客をしていた。
「 あ・・・っっ 」
その中で接客中の若女将を見つけた美丈夫は、声を発すると同時に彼女に向かって突進した。
「 キョーコちゃん 」
「 え? 」
「 やっと会えた、キョーコちゃん!! 」
「 え、え・・・ 」
最初、若女将はとても戸惑った様子だった。
けれどすぐ相好を崩し、瞳を徐々に潤ませた。
「 ・・・嘘でしょ。まさか、まさか蓮ちゃん? 」
「 そうだよ!俺だよ!!良かった、やっと会えた。絶対君だと思ったんだ。レンコンを漬物にしようなんて考えるのも、その漬物に蓮なんて名前を付けるのも、この世に君しかいないだろうって信じていた 」
「 だって、忘れたくなかったから 」
「 俺も、忘れたことなかった。やっと見つけた 」
二人は互いに抱きしめ合い、互いの体温を確かめ合った。
蓮は幼い頃、両親に連れられ旅行で訪れた京都で出会ったキョーコちゃんを忘れられずに成長した。
一方キョーコもまた、年間何十万と訪れる旅行客の中のたった一人、出会った蓮を忘れられずにいた。
7才と11歳の幼き出会い。
まさかこんな恋が生まれるとは想像もせず。二人は連絡先を交換しないまま離れた。
森で出会った思い出は心の奥底に。
二人きりで過ごした夏休みのひと時が、けれどいつまでも忘れられない。
何の手がかりも掴めぬまま、10年以上の歳月が流れ。
そして今に至ることに。
「 うっそ、うっそ!!もしかして? 」
「 その人が、若女将の初恋のひと!? 」
「 4才年上で、妖精みたいに綺麗な顔立ちの男の子だったって言ってた?! 」
「 や・や・やだ、そんなこと!!ほかのお客様がいらっしゃるのにそんな大声で言わないで!! 」
「 えー、なんだい、そうだったのかい。この人が若女将の初恋のひとなのかい?いい男だねぇ 」
「 あれだろ、レンコンの漬物の元になった人だろ?あれ、美味しいよねぇ 」
「 そうなの?俺が君の初恋のひと? 」
「 う…えっと、うん、そう、かもしれない、かもしれない、かもしれない・・・ 」
「 だったらお揃いだ。キョーコちゃんが俺の初恋の君だから 」
「 ・・・蓮ちゃん、本当に? 」
「 キョーコちゃんこそ、本当に? 」
それからほどなくして、老舗漬物屋もがみは若旦那を迎えた。
二人の恋の成就をきっかけに、もがみ漬物店はさらに繁盛したという。
E N D
日本昔話風に、良かったねぇっていう内容だけを詰め込んだ物語(笑)
なぜ漬物屋かというと、最近自分でぬか漬けを作るようになって、漬物うま~い♪って思ったのがきっかけ。レンコンって漬物になるのかなって想像したら出来ちゃったw
ちなみに、どうでもいいことですけど蓮と言葉を交わした店員さんのイメージはチオリンです。
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