一葉です。(。-人-。)いつもありがとうございます。
先日お届けいたしました「海より深く」の続きをお届け致します。
え?これ、蓮キョ?…なお話になっておりますが。
一葉が考えるあの話の続きはこんな感じです。
そしてネタバレも含まれております。
前話を読まないとまずお話も通じませんし、そんな訳でネタバレ回避お嬢様はこちらで回れ右を推奨いたします。
ACT.252派生妄想「海より深く」続編
■ 空より広く ■
「 ちなみにそれ、どんな嘘だったの?親友の琴南さんに話すのさえ躊躇うってちょっと想像つかないんだけど 」
…――――――― 嘘はダメ……
モー子さんと仲違いをしてしまったそもそもの理由となった、私が抱いていた敦賀さんへの恋心を、敦賀さんに包み隠さず打ち明けた。
暴露した途端、敦賀さんは切れ長の目を見たことも無いほど大きく見開き、それから数秒のちに私から顔を背けて、ふふふ…と小刻みに肩を揺らした。
「 ……っ…敦賀さん 」
「 最上さん 」
「 はい 」
「 その仲裁役、俺が引き受ける 」
「 え? 」
「 君の親友と仲直り出来るようにしてあげる 」
再び私を見てくれた敦賀さんの顔には、以前何度か見たことのある神々しい笑顔が煌めいていて
「 え?……え? 」
私の告白をどう受け止めたのか
私の頭の中で自分なりの考えがまとまる前に、敦賀さんは私の頭を抱き寄せ、涙を受け止めてくれた時とは明らかに違う抱擁を私に施した。
「 だから、それが出来たら俺にご褒美くれる?俺が欲しいと思うもの 」
「 え?……え…はい? 」
「 よし。じゃあもう泣かないで。ただ、反省はするんだよ?もう二度と親友に嘘をついたらダメだ 」
「 ……してます。海より深く、これ以上ないほど深く反省してます 」
「 だね。君はそういう子だ。大丈夫。俺が何とかしてあげるから 」
自分が全て悪いのに、敦賀さんに頼るなんて本当に情けないけれど。
再び私を抱きしめながら、耳元で囁いてくれた敦賀さんの魔法の呪文を信じ、私は両手で顔を覆いながら、どうぞよろしくお願いします…と、消え入るような声で頭を下げた。
その後、敦賀さんがモー子さんとの接触を図ってくれたのは、映画、泥中の蓮が撮影に入る直前で、顔合わせ日の朝だった。
もちろん私も行く予定でいたけれど、そのときまだ私は別の場所にいて、だから私より前にそこに到着したモー子さんを捕まえた敦賀さんと、モー子さんが何を話したのかを私が知る余地は無かった。
「 ……琴南さん。おはよう 」
「 敦賀さん?……おはようございます。どうなさったんですか?まさか、敦賀さんも急遽映画に出演することになった…訳じゃないですよね? 」
「 うん、もちろんそういう訳じゃない。俺はね、最上さんのことで君と話したくてここに来たんだ 」
「 あの子の?どうして敦賀さんが? 」
「 見るに見かねて…と、ある思惑によって 」
「 思惑? 」
「 それはこっちの話だから気にしないでもらいたいんだけど。
先日、ラブミー部室で君に嫌われたって泣きじゃくってるあの子を見つけて放っておけなくてね。こうして参上したって訳 」
「 つまり、仲裁しに来たってことですか?余計なお世話だとは思わなかったんですか? 」
「 思わないよ。だって琴南さんも仲直りしたいって思っているだろ?こうして俺の話を聞いてくれているんだから 」
「 ……… 」
「 取り敢えずここでは立ち話もしにくいからせめて屋内に入ろうか? 」
「 ……じゃあ、自販機の前ぐらいしかありませんね。この時間、この辺で開いているお店なんてありませんもの 」
「 だね。ごめんね、時間は取らせないから 」
「 どうだか… 」
敦賀さんは事務所の大先輩だし、加えて実力を兼ね備えた役者でもあったから、モー子さんは耳を傾けたのだと思う。
たぶん私だったらモー子さんは私の顔を見るなり足早に去って行ったに違いない。
「 ……嘘、つかれたんだって?最上さんに 」
「 ええ。聞く前はどんな重い内容かしらってかなり身構えて後悔しかけて、でも聞いた途端、想像とは全く違う内容だったことに戸惑いました 」
「 そう 」
「 何かを隠しているとすぐ気付きました。だからこそ言質を取りたくて天宮さんに確認したんです。やっぱり嘘だったって知りました 」
「 見当がついていたってことは、絶交する気は無かった? 」
「 ……本当は、カラオケで取り調べをするつもりでいました。自分の気持ちを天宮さんのそれにすり替えることにどれほどの意味があるのか、それをあの子に問い質すつもりで。
だけど、天宮さんと話している時にあの子がちょうど来てしまったんです。だからこんな展開に 」
「 そうだったんだ 」
「 でも、怒っていない訳じゃないです!だいたい、私を親友認定したのはあの子なんですよ!なのに告白の瞬間、あの子は偽証を選択したんです。腹が立ちました。本当に 」
「 うん。分かるよ 」
「 それに、結局私には嘘を言ったのに敦賀さんには本当のことを話したってことですよね。それもまた腹立たしい 」
「 それは、君に嫌われる原因となった嘘をつくことがいけないことだと最上さんが理解したからだよ。そうじゃなかったら素直に告白なんかしなかったと思う 」
「 かも知れないですね 」
「 そう。そして俺は、どうして最上さんが君に嘘を言ったのか、その本質的な理由が分かるんだ 」
「 ――――――― え? 」
「 琴南さん。人間はね、二つ以上の条件が自分の前に現れたとき、それらを比較して考え、取捨してしまう生き物なんだ。
特に最上さんは頭の回転が速いから、短時間でつい色々なことを考えてしまうんだと思う 」
「 どういうことですか? 」
「 最上さんが君に告白しようとしたとき、あの子が考えたのは、自分が嘘をつくことで君に嫌われる道と嫌われない道がある…ではなく、本当のことを話して君に軽蔑されるだろう自分と、軽蔑されない自分を考えたのだと思う 」
「 それ、違いがあります? 」
「 大いなる違いだよ。最上さんはね、自分を信じきれないんだ。
軽蔑される自分と、軽蔑されない自分を比較したとき、軽蔑される自分しか信じられなかった。
自分にどれほどの魅力があるのか分かってないから、友人として君の気持ちを引き止めておけるだけの魅力が自分に無いと思い込んでいるから、そうとしか考えられなかったんだ 」
「 ……なに、それ…… 」
「 過去、お母さんを何度呼んでも振り向いてもらえることは無かった。
テストの点や成績が思う様に取れなくて責められることはあっても、その頑張りを褒められたことは一度も無かった。
謝っても許してもらえない。そんな経験を何度も繰り返して来たから最上さんは自分を信じられないんだ 」
「 ……っ… 」
「 琴南さん。最上さんに嘘をつかれたことを怒る君の気持ちは分かる。だけどあの子を許してあげてくれないか?
泣いて謝っても許してもらえない。この苦い経験があの子に自信の無さを植え付けた。
だからあの子は背中を向けられたあとに謝罪することが何よりも怖い子なんだ。決して振り向いてもらえない辛さを何度も思い知っている。自分がどんな悪い事をしたか理解しているから余計に琴南さんに謝りにくいし、そうして背中を向けられ続けることでさらに自信の無さが増してしまう 」
「 けどっ… 」
「 琴南さんだって、親友を失いたくないだろう?
本当に、見ているこっちが辛くなるぐらい泣きじゃくっていた。あの子はもう君に嘘は絶対つかない。海より深く反省していたから。
それを、琴南さんが空より広い心で受け止めることは出来ない? 」
敦賀さんがそう言ったあと、モー子さんは下唇を噛みしめ何かを考えている様子だったらしい。
それから思い立ったように踵を返し、自販機でジュースを2本買ったと…。
缶ジュースとペットボトルを一本ずつ。
「 敦賀さん 」
「 うん? 」
「 あの子、今日ちゃんと顔合わせに来ますよね? 」
「 もちろん来るだろうね。仕事だし 」
「 良かった。じゃあいいわ。敦賀さんは?あの子の顔を見てから戻られます? 」
「 ……うん、そうだね。そのつもりだけど 」
「 だったらこれ、振って下さい。思いっきり 」
「 ????……これキュララ? え?振る? だってこれ、微炭酸…… 」
「 私たちの仲直りに相応しいシーンを演出しますから。いいから早く振って下さい!思いっきり!! 」
「 まさか、俺に片棒担がせる気か? 」
「 人聞き悪いこと言わないで頂けます?少なくとも、私たちが仲違いした原因を告白されて敦賀さんは喜んでいたのでは?少しぐらい協力して下さいよ。
せっかく私が空より広い心であの子の嘘を許容しようとしているんですから 」
「 ……分かった 」
このあと、私がようやく現地に到着。
モー子さんと敦賀さんに導かれた場所で、私はキュララオーディションで演じたあの時とは逆にキュララまみれとなって、困惑しつつも揺らした瞳の向こうでクスクス笑うモー子さんの姿に涙ぐんだ。
「 ……モー子さん……もしかして許してくれるの…? 」
敦賀さんとモー子さんがどんな話をしたのか。
このあともずっと二人はその詳細を語ってはくれなかったけれど
半分以下に減った2本のキュララは
あの日と同じポコン…とポンコツな乾杯音を奏でた。
E N D
これはあくまでも一葉見解です。
ちなみに内容の一部にあるモー子さんのセリフは、魔人セーちゃんが妄想したモー子さんをお話に合うように変更し、採用させて頂きました。素敵モー子さんを有難うございました。
Please do not redistribute without my permission.無断転載禁止
◇有限実践組・主要リンク◇