創生の森 ◇4 | 有限実践組-skipbeat-

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 お付き合い頂きましてありがとうございます、一葉です。

 こちらは現代パラレル蓮キョの続きです。お楽しみいただけたら嬉しいです。


 前話こちらです⇒ 創生の森【1 3】


■ 創生の森 ◇4 ■






「 不具合調査費用は五千円です。調査後にどれだけ復旧可能かをご連絡差し上げて、実際に復旧するかどうかをお決めいただくことになります。そのとき目安費用をお知らせできると思います 」


「 あ、そうなんですね。判りました!! 」



 不具合調査費用の5千円を俺に託し、席を立った彼女は深く沈むように頭を下げた。


「 それじゃ…お手数をお掛けしますがどうぞよろしくお願いします 」



 その丁寧なお辞儀に爽やかな心地よさを感じて、俺は自然と顔の筋肉を緩める。


「 はい、お預かりします 」



 彼女が出て行ったあと、俺はすぐ不具合調査解析に着手した。


 我ながら何をやっているんだか…とは思っていた。

 何しろUSBを預けて行った彼女は普通扱いでいいって言った訳だし、彼女の預かり品より前に依頼されている修復媒体があったのだ。



 だけど……







「 嘘だろ、これ創せ……ふぐっ!!! 」


「 …っっっ!?? 」


 俺が大きな声を出したからだろう。その瞬間、彼女はビクリと手を揺らし、反射的に顔を上げた。


「 あ…ごめん、大きな声を出して…。驚いたよね 」


「 ……いえ、へいき、ですけど…… 」


「 えっと、確認したいんだけど、創生の森…っていうのがファイル名ってことだよね?6つともそう? 」


「 同じです。ただ、全く同じファイル名にすることは出来ないので番号を振っていました 」


「 それは、具体的にどんなふうに? 」


「 1から順に6番のファイルまで、です 」


「 ――――――― そう… 」



 それだけで俺はピンと来た。


 創世の森の連載が始まったのは5ヶ月前だ。

 作品はおよそ2~3日に一度は必ず更新されていた。


 彼女の話を聞く限り、不具合が発生したのは一週間前。だがブログの更新が途絶えたのは4日前だ。

 つまり、そこまでブログ記事は用意されていたのだろう。



 たぶん、一ヶ月の更新分が一つのファイルになっている。

 ナンバー6があるということは、俺が知りたいと思っている物語の先がその中に入っているはずなのだ。



 それを示唆する様に彼女は俺にこう質問した。



「 ……あの、USBの情報回復って、優先順位とか選べるのでしょうか? 」


「 ん?どういう意味? 」


「 出来れば……そういうのが出来るのであれば…ですけど、なるべく更新日付の新しいのを回復させて頂きたくて。具体的に言うとナンバー6を… 」


「 どうして? 」


「 あの……1~5までのファイルはもう無くても支障がないので…… 」


「 そうなんだ、ごめん。こればっかりはやってみないと判らないんだ 」


「 …そ、ですよね… 」



 無くても支障が無い。その言葉が俺の確信を強めた。


 つまり、こういうことだと思った。

 1~5のファイルデータは既に彼女のブログの中で公開されてしまっているから重要度が低いのだと。





 ――――――― 読みたい!!!



 俺の頭の中で欲が一気に噴き出した。



 絶対に俺が回復させてあげたい!!



 本なんて特に好きでも無かった俺が、こんなにもドハマリした物語。

 その著者である彼女が何よりそれを望んでいる。



 急ぎじゃなくていいって言われたけれど、誰よりも俺自身がそれを急ぎたかったのだ。




 再び社さんと二人きりになった情報改復センターの中は水を打ったように静まり返っていた。


 俺と一緒に会社を起業した社倖一という人間は、一度作業に入ると一心不乱に没頭してしまうタイプで、ちょっとやそっとのことじゃ席を離れることさえしない。


 次いで、この日持ち込み依頼をしてくれた人は最上キョーコただ一人だったことも手伝って、俺たちはすっかり自分達の仕事に没入していた。




「 ……っっ!!! 」



 ――――――― くそっ…これもダメか。


 意外と手強いな、この不具合。

 こんなにも色々試すのはもしかしなくても初めてだ。



 作業は正直、手こずっていた。

 回復依頼の媒体に物理的処置を施し、イメージの取得に取り掛かる。



 たったそれだけの作業なのだが、USBの反応は鈍く、本当にデータが入っていたのだろうかと疑ってしまいそうなほどそれは皆無に近かった。



 でも、絶対に入っているはずだ。

 あんな真剣に俺の話に耳を傾けていたんだ。無いはずが無い。



「 ……っ!!……じゃ、別のアプローチで… 」


 差し込んでいたパソコンからUSBを一旦抜き去り、ふと顔を上げるといつの間に作業が終了していたのか、少し離れた場所のイスに腰かけていた社さんが、頬杖をついた姿勢のまま黙って俺を見つめていたのが視界に入った。



「 社さん…… 」


「 正直、ちょっと驚いた。お前がこんな長時間、作業に夢中になっているなんて 」


「 え? 」


 言葉に弾かれ時間を確認して俺自身も驚いた。

 作業を開始してから8時間以上が経過していた。



「 それが預かり品なのか? 」


「 ええ、そうなんです、けど……。もしかしてずっと待っていたんですか?一体いつから…。声ぐらいかけて下さればいいじゃないですか 」


「 夢中になっているのが判っているのに腰を折るような真似ができるか。

 それより、この依頼書に書いてある『創生の森』…ってもしかして…? 」


「 ……ええ。偶然ですけど、俺がハマった小説のタイトルなんです。たぶん、その依頼者は著者だと思います。ブログ管理者と名前の響きも一致していますし… 」


 俺の言葉に社さんはニヤリ…と目を細めた。



「 へ――――― っ。なるほど? 」


「 何がなるほどですか 」


「 いや、べっつに?取りあえず蓮、今日はもう作業やめとけ。効率が悪くなるだけだ 」


「 …ですね。そうします 」


「 んで飯食いに行かないか?もうこんな時間だしお前も面倒だろ? 」


「 ……いいですけど、どこに行くんですか? 」


「 愚問だぞ、それ。いいか? 夜にしか味わえない贅沢を是非… 」


「「 ……だるまやで 」」


「 だろ。判っているなら聞くなよ 」


「 本当に好きですよね、社さん。だるまやが 」


「 本当に好きなんだよ、俺は。お勧めはランチなんだけど今はお前と二人しかいない職場でそれが無理だからな。だからせめて夜!夜メシで堪能したいっ!! 」


「 はいはい、判りました、さっさと行きましょう 」



 手早く身支度を整え出入り口に鍵をかけ、俺たちはだるまやへ向かった。

 そしてその店内で、俺は再び彼女を視界にとどめることになる。




 創生の森の著者である、最上キョーコその人を。






 ⇒創生の森・5 へ続く


だいたい10話前後になることが予想されるこのお話。

それはあくまでも蓮くんsideで書けばのことで、実は前話を書いた時点でキョーコちゃん視点を書きたくなったりしたのですが、2時間ほど悩んですっぱり『止めよう』と思いました。


だって、蓮君だけで10話前後ですよ。

キョーコちゃんのも入れたら話数が倍になってしまいますから~(笑)


ははははは(≡^∇^≡)♡ 長いのはやめよう~っと。



⇒創生の森◇4・拍手

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