SS 君から一番近い場所◇前編 | 有限実践組-skipbeat-

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 こんばんみぃ、一葉でっすо(ж>▽<)y ☆いつもの様に真夜中UP♪

 今年の蓮誕は前後編でお届けです。


 そしてなんとなーくこんな風なタイトルが記憶の片隅にあるような?…な感じのお嬢様がいらっしゃるかもしれませんが。

 申し訳ない。取り敢えずその疑問はそのまま横に置いといてくださいませ(笑)


 少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。 …うん。前編なんだけどね。


2017年祝蓮誕SS

■ 君から一番近い場所 ◇前編 ■





 純白のウェディングドレスに身を包み、レース仕立てのフェイス・ヴェールを被った私はステンドグラスが美しい異国の教会で、大きなブーケを両手で支えながら背筋をピンと伸ばしていた。



「 汝、病めるときも、健やかなるときも…… 」


 落ち着いた色合いの衣装を着用し、恰幅が良く少しだけ年配の、いかにも神父さんらしい外国人の男性がたどたどしい日本語で耳慣れたセリフを唱え始める。



 私の隣にいるのは同じ芸能事務所に所属している大先輩の敦賀さん。

 大好きな人の顔を横からチラリと覗き見て、私は細く笑みを浮かべた。




 ……やっぱり、照れくさいけど凄く嬉しい。




 こんな事でもなければ自分がこの人とこんな風に肩を並べるなんて有り得ないことだから。


 私はこっそりと唇をかみしめ、浮かぶ笑顔をかみ殺した。

 そうしておいて一度は前に戻した視線を再び横にチラリと移し、もう一度、私は偽の花婿を盗み見た。




 そう。

 そもそもこれは、本当の結婚式ではないのだ。


 私は敦賀さんからの依頼を受け、いま彼の花嫁役を演じているに過ぎない。








「 えぇっ?!私がですかぁ? 」


「 うん。結婚式だからね。相手役がどうしても必要なんだ 」



 現在の日本におけるドラマ放映は大抵がワンクール。およそ10話前後で終わるのが一般的となっている。

 当然、撮影に使える時間は限られていて、出演シーンが多い役者ほど時間の縛りもまた長くなる。


 目まぐるしいと思われるかもしれないが、今まで数えきれないほどのドラマに出演して来ただろう敦賀さんからしてみれば、そんなものはもう慣れたことに違いない。


 そして、予期せぬ事態になったから助けて欲しい…と言って来た割には、特に焦った様子も見せず、敦賀さんは花嫁役を私に依頼して来た。



「 でも敦賀さん。それならもう相手役は決まっていらっしゃるのでは? 」


「 あのね、相手役は使えないんだ。結婚式は過去の出来事。別の相手との思い出のシーンとして使用される。だから回想でしか出てこないその相手役を君に演じて欲しいんだ 」



 聞くところによると、台本内容の変更により早々に撮っておく必要が生じた結婚式のシーンは、予定外に発生しただけに当然撮影スケジュールに組み込まれていなかった。


 だったら予定に組み込めばいいだけのように思えるけれど、敦賀さんのもう一つの仕事に動かすことが出来ないスケジュール…つまりモデルの仕事があるためにそれが出来ないのだという。


 実はこれを聞いたとき、私は少し不思議だな、と思っていた。


 なぜなら敦賀さんなら食事時間を削ってみたり、もしくは寝る間を惜しんでドラマ撮影に挑みそうな気がしたから。

 けれどその理由を聞いて納得した。


 予定しているモデルの仕事は海外撮影なのだそうだ。



「 はぁ……なるほど 」



 役者の仕事をとにかく大切にしている敦賀さんにとって、これはかなり悩みどころだったに違いない。


 もちろん監督さんやプロデューサーさんも同じだったろうけど、そのときふと、敦賀さんの中であるアイディアが閃いたという。



 それは、近年の結婚事情を考慮してのこと。

 最近は特に、結婚式とハネムーン旅行を一緒に行う日本人カップルが増えていて、海外で挙式をする人の数は決して少なくないという点に着目。


 その際、現地でカメラマンを雇い、挙式の様子を撮影する人たちもまた多いのだそうで、敦賀さんはそれに倣い、モデル遠征の地で、実際に挙式をするカップルと同じように式を挙げ、カメラマンに撮影してもらう事を思いついた。


 そうすることで映像はよりリアルになるし、撮影スタッフを海外に派遣する必要も移動にかかる費用も考慮する必要がないし、何より欲しい映像は手に入るしそれなら敦賀さんの都合もなんとかなるし…と良いことずくめで、是非そうしよう…ということになったらしい。




 つまり、その花嫁の役を私に…と言って来たのだ。

 事務所の大先輩、敦賀さんは。




「 最上さん、ダメかな?もちろん交通費は俺が出すし、君が望むなら出演料も俺が出すよ? 」


「 いっ?!要らないですよ、出演料なんて。それこそラブミー手帳に良く出来ましたハンコを頂ければそれで充分です 」


「 そう?遠慮しないでいいんだよ?それで、引き受けてもらえる? 」




 ――――――― ええ、そうですよ。

 まさかこの状況で断ることが出来ますか?




 それに、撮影する結婚式の様子はどのシーンがドラマで使用されるのかが判らないから、通常のカップルが行うそのままの式をやると聞かされて


 しかも現地のカメラマンに撮ってもらうのは結婚式の最初から最後までで、撮り直しがきかない一発勝負になる…とまで聞いてやる気が起きない訳がない。



 それになにより


 好きな人の花嫁役…なんて


 実生活で起こるはずもないことを体験させてもらえる…と知った私が、敦賀さんから直接頂いたこの依頼を断るなんて、勿体なさ過ぎて出来なかった。



「 はい、やります。やらせて頂きます。

 敦賀さん、不束者ですがどうぞよろしくお願いいたします 」


「 ふつつかもの…。いいね、最上さんそれ。本当に結婚するみたいで 」


「 はっ?……いえいえ!!滅相もありません。そんなつもりで言ったわけでは… 」


「 うん、わかってるけど。でもドラマでたまに聞くそのセリフを実際に聞くことになるとは思っていなかったから新鮮でちょっと嬉しかったかも 」


「 嬉しがってどうするんですか!とにかくよろしくお願いします! 」






 まぁ、そんな訳で最上キョーコはいま

 敦賀さんのモデルのお仕事地であるグアムの教会で


 純白のドレスに身を包み、彼の花嫁をしているのです。



 奇しくも敦賀さんのお誕生日である今日、2月10日に。

 きっと敦賀さんはいま、何の因果だろうか…と思っているに違いない。




 ああ、だけどっ!!!


 薄いグレーのタキシードを優雅に着こなす敦賀さんは本当にカッコ良くて!!!

 私、卒倒してしまうかと思ったほどで!!!




 ―――――――― どうしよう、どうしよう、どうしよう!!

 偽の結婚式なのに、もう半端ないほど照れくさくて、同時に倖せ過ぎるのです、私は!



 ときどき視界の端に現れるカメラマンにも視線を送り、私は煩悩をたぎらせていた。




 ……あとで、お願いしてみようかな。

 この結婚式の録画映像、私もいただくことは出来ませんか…って。



 私の、一生の宝物にしたいから。




「 ……誓いますか?ミス、キョーコ・モガミ? 」



 自分の名を呼ばれて顔を上げ、私はどぎまぎしながらも一呼吸おいてからYes…とはっきり答えた。



「 Yes. I swear my eternal love to he. 」



 ドラマの中で使われる回想シーンのそれはセピア加工した映像のみで、セリフは一切採用されないとのことで、結婚式で私の名前が呼ばれることは敦賀さんから事前に説明されていた。


 そして本番前の式進行説明のとき、外国人の神父様が日本語で行いますから…と言ったときは驚いたけれど、グアムで結婚式を挙げる日本人は本当に多いらしく、それで日本語を勉強したのだと神父様は朗らかに笑った。


 それを聞いて敦賀さんは、それならわざと俺達が英語で応えたりしたら面白いと思わない?…なんてこっそり耳打ちして来て。私もつい、クスリ…と笑ってしまったけれど。


 リアルな表情が欲しいじゃないかと言った敦賀さんのいたずらに賛同した。


 リハーサルの時とは違う受け答えをした私に向かって神父様がいま微妙な笑顔を浮かべてくれたのを見れば、どうやら悪戯は成功したみたいだ、と私は心の中で苦笑を浮かべた。




 そうそう。

 敦賀さん、といま私は言ったけれど

 本当はその姿を見るたびに私は違和感を覚えている。



 実はタキシードを着ている敦賀さんの髪色はいま、黒ではなく金髪だった。



 こういう役なのだ、と前以って聞かされていたからこそ頭の中でこっそり驚くだけで済んだけど、コーンを思わせる外見はやはり私を落ち着かなくさせていた。



 ましてやここは、成長したコーンと再会したグアムの地。


 だから私は隣の人を確認するように、何度も何度も横から敦賀さんを盗み見ていた。




 リハーサル通り、神父様が歩みをずらし、彼の方へ視線を向ける。


 そういえば敦賀さんの役の名前を聞いていなかったな…なんて考えがふと浮かんで、神父様のセリフに耳を傾けていた私は、聞こえて来た聞き覚えのある名前に思わず視線を跳ね上げた。





「 誓いますか?ミスター、クオン・ヒズリ? 」





 …――――――― え?




 息を飲んだ瞬間、私は敦賀さんの横顔を見つめていた。



 私の動きが見えたのだろう敦賀さんは

 私と視線を絡めて柔らかい笑みを浮かべ、それからゆっくりと神父様に向き直った。



「 Yes. I pledge my eternal love here. 」


「 ……ッ… 」



 神父様は小さく苦笑を漏らしたあと

 それは満足そうな笑顔を浮かべた。



「 では二人、夫婦を名乗る誓いのキスを…… 」



 敦賀さんの手でフェイス・ヴェールが持ち上げられ、変わらず私は敦賀さんを見つめ続ける。



 役になり切っているのだろう敦賀さんは

 その顔にも、瞳にも、私に対する愛情が満ち溢れていて


 これは本当に演技なのだろうか、とつい考えてしまうほど

 それは迫真の演技だった。



 私が勘違いしてしまいそうなほど

 自分が本当に溺れてしまいそうだと思ったほど

 肉薄した演技を私に見せつけてくれた。

 



 近づいて来る敦賀さんの動きに合わせ、徐々に瞼を伏せてゆく。

 女優魂をフルに活かし、私は最上キョーコらしからぬ冷静さで誓いのキスを受け止める。





 大好きな人からの

 唇に熱くとどまる誓いのキスを ――――――――― …





 内緒だけど

 このとき平常心を保つために私が繰り返し頭の中で唱えていたのは



 この撮影映像、本当にもらえないかなぁ…だった。








 ⇒後編 へ続く


実はギリギリまで前編にかかりきりだったために現時点でまだ後編が完成しておりません。

本当は前編と後編のUPは日は跨ぐけれどUP差5分♡を目指していたのですが、推敲さえまともに出来ず。誤字脱字は後日、こっそり訂正いたします。※加筆修正いたしました


やっぱり執筆時間が短すぎて自分には無理だったぁぁ…。うぬぅ、残念。

後編も頑張りますのでお付き合い頂けたら嬉しいです。( p_q)



⇒君から一番近い場所◇前編・拍手

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