SS 不機嫌なモー子さん | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 おはようございます合格

 最近、すっかり予約投稿モードばかりになった一葉梨紗です!


ええ…だって私、未熟者なんですもの汗

 考えても考えても、後から後から、こう言った方が良いのかも?こう表現した方が良いのかも?って…そういうのが追いかけて来るんです…。


 アップしてから訂正をかけているとそりゃあもう酷い事になる…という自覚が出てきまして、ある程度、様子を見てから公開する事にしたのです。

 少しはマシ…になったかな?



 さて、今日のSSはまた他者視点蓮キョ(笑)

 いい加減にせーよ…せーよ…せーよ(エコー・惣也さんのマネ。判る人だけ苦笑してください・笑)


 そしてSSなのに長いです。ショートじゃないです(笑)

 でもぶった切るところが見えなかったのです。すんませんガクリ


 内容は、人魚フェア提出物の設定を考えていて、自分の脳内で繰り広げられた押し問答が元ネタです(笑)

 人魚って有名どころですけど、自分の中でずいぶん偏った知識であったことが判りまして、今回それが一番の収穫だったかも~と思いましたです。


 えっと…出来れば…空よりも広く、海よりも深いお心で…お願いいたします…。



■ 不機嫌なモー子さん ■



 朝起きた時はどうってことは無かったのに、とあるきっかけで機嫌が悪くなることって結構あったりする。

 この日の琴南奏江はまさに、そんな感じだった。



「 人魚なんて、夢があるよね~ 」


 普段から人の感覚とはかけ離れたメルヘン思考の親友キョーコが、頬を紅潮させた熱い視線で自分を見ていることに鬱陶しさが増した。


「 そうかしら。相変わらずあんたのオツムっておめでたいわね 」


 表情を1ミリも変えず、静かに瞼を伏せて奏江はキョーコに冷めた言葉を放つ。

 その声に賛同する言葉で追いかけて来たのは、新しくラブミー部に入部した天宮千織である。


「 だいたい人魚って、怪しくないですか?髪の毛、すっごーく長いし 」


「 確かにね。こんなに髪が長いのに海水にべったり浸かっていたら、毛先なんて枝毛だらけよ。こんなサラサラは嘘っぱちよね 」


 自分の髪の毛よりも随分長いウィッグに視線を落とし、腰下までサラサラと風に流されるストレートの黒髪を奏江が右手の人差し指と親指でつまむと、キョーコはうっとりとした表情で奏江に視線を送った。


「 そんな事ないわよ、モー子さん。人魚の恰好、すっごく似合っているよ? 」


「 今の会話は似合う、似合わない…の次元じゃないでしょ! 」


「 そうですよキョーコさん。それにキョーコさんも似合っていますよ?その金髪ロング… 」


 千織からの突然の賛辞に、キョーコは思わず頬を緩ませて両手をあげた。


「 本当?メルヘンよね?人魚、可愛いよね? 」


 そのはしゃぎっぷりが可愛いといえば可愛いのだが。

 今日の奏江はそんなキョーコの仕草でさえイライラが募る。


「 モーコさんと一緒に人魚でCMに起用されるなんて、夢みたい!! 」


 荒く息を吐きながら夢見る乙瞳モード全開のキョーコは、人魚の恰好ゆえに身動きが取れない不自由さよりも、むしろそれを楽しんでいるように見えた。

 キョーコと同じ立場に立たされ…いや、正確には車イスにどっかりと座っている奏江にしてみれば、これは拷問に近いものがあったのだが。


 …仕事だと思えば、出来なくもない。ただそれだけのこと。


「 バカねあんた。人魚なんてね、本当にいるのだとしたら、きっと肌だって凄い荒れていると思うわよ? 」


「 そうですよね。なんてったって海水に浸かったままですしね 」


 キョーコのメルヘン思考をぶった切るかのような奏江の人魚こき下ろしセリフは続き、出て来るセリフ全てに千織が相槌を打つ。


「 それに、昼夜逆転生活に違いないわよ?ますます肌荒れに拍車がかかるわ。あー嫌だ!女優としては許せない環境よ… 」


「 不健康、この上ないですよね… 」


 腕組みをして、うんうん…と頷くラブミー部員二人の、あまりに容赦のない言い様にキョーコはそんな事ない!!…と辛口人魚談を否定するが、砂浜に鎮座する丸い簡易テーブルを挟んで向かい合う奏江と千織に、その訴えは無下に却下された。


「 それに、女だけの一族って、生き物としてどうなの? 」


「 え?そうでしたっけ?人魚って、男もいるんじゃなかったですか? 」


「 そうよ!モー子さん!!人魚は女だけじゃないわよ?若い女の人をマーメイド、男の人魚の事はマーマンって… 」


 キョーコの言葉をまるで無視しながら、奏江はなおも言い募る。


「 そもそも人魚と言えば不老不死でしょ?けど、どんなんだって食べなきゃ死ぬわよね? 」


「 そうですよね。食べないのに不老不死ってあり得ないですもんね 」


「 食事とか、どうしているのかしら?やっぱり、海のモノを摂るのかしらね? 」


「 体を作るにはそもそもタンパク質が必要な訳ですから、魚介類とか食べ放題ですよ。きっと… 」


「 取り放題…で食べ放題…まるで欲望の塊ね… 」


「 無秩序の宝庫ですね… 」


 二人が顔を見合わせてフッと昏く笑うのを見て、キョーコは思わず顔を引きつらせた。


( 違うもん!…人魚は不老不死じゃないわよぅ… )



 夏に向けての商品展開を見込み、少し早目のCM撮影。

 肌を焼かない新製品の日焼け止めは、ウォータープルーフであることを強調するために、三つのバージョンで撮影される。


 すでに撮り終わっている1本は、キョーコと奏江が岩場で歌を謡いながら日焼け止めを塗り合う…というもの。

 親友とのスキンシップに、直接肌に触れるのではないにしても、キョーコのテンションはMAXに近かった。


 そしてもう1本は、奏江扮する黒髪の人魚が、海に落ちた少年、飛鷹を助ける…という海の中バージョンで、現在は飛鷹が現場にやってくるのを待っている。つまり撮影前の休憩中である。


 試泳で同性、異性問わず、スタッフの視線を惹きつけた美女っぷりを見せたとは思えない、主に奏江から提議される辛辣人魚談は、三人の間だけで密葬のようにひっそりと繰り広げられていた。


 ちなみに今日の千織は今後の仕事に生かす為という名目で、二人の撮影の見学に来ただけである。


「 繁殖とか、どうしているのかしら? 」


「 男の人魚って、そもそも数が少ないですよね… 」


「 魚の中には繁殖期にメスからオスに変化するのが居るから、もしかしたら人魚もそうなのかしらね… 」


「 ええ~?それちょっと、グロくないですか? 」


「 ……………… 」


 すでにキョーコは二人の会話を静止する勇気すら持てず、哀願の表情を浮かべるのみ。


「 いえ、もしかしたら…もっとグロいのかもしれないわよ? 」


「 …と、言うと? 」


「 ほら、歌を唄って男を呼び寄せるって言うじゃない? 」


「 ああ…言いますよね… 」



 ――――― 人魚にはそもそも色々な言い伝えがあるが、地方によってその内容は異なる。


 大っぴらに知られているのはその姿形だけで、多くは上半身が人間の女で下半身が魚で統一されており、想像上の動物であるとされている。


 不老不死だと思われているが、人魚の肉を食べると不老不死になれる…と言われているだけで、実は人魚自体が不老不死であると謳っている俗説は極めて少ない。


 人魚は海にいると云う概念が強いが、川にいる人魚の伝承もあり、名称も国によって異なる

 ライン川にまつわる伝説の人魚をローレライ。

 アイルランドにいる人魚はメロウ。

 ノルウェーに伝わる人魚はハルフゥと呼ばれ、男の人魚の事をハルマンと呼ぶ。


 日本で一番知名度が高いのは恐らくセイレーン。次いでローレライだろう。


 どちらの人魚も美しい歌声で人を惹きつけるという特徴を持ち、動物というよりは伝説の魔物である。


 ちなみに、男の人魚の事をマーマンと呼ぶが、半魚人の事もそれと呼ぶ。

 マーマンは二腕二脚だが、手足にヒレや水かきを持っており、全身が鱗に覆われていてエラが付いている。頭部が魚の形で、言葉を話す人間と言われているが、これがメルヘンかどうかは疑問が残る。

 ちなみに上半身が魚で下半身が人間の事を魚人と呼ぶ。



 キョーコの頭の中で人魚に関するデータが出力されても、声に出さなければこの知識はあっても無いものと同じである。


 奏江はちらりとキョーコの方に視線を投げてから千織に向き直ると、メルヘン思考な親友が耳を覆いたくなるようなコトを平然と言ってのけた。


「 もしかしたらカマキリみたいに、人間の男を食べるのかもしれないわよ? 」


「 カマキリみたい?カマキリってそうなんですか? 」


「 あら、知らない?カマキリのオスは、メスに頭部を食べられた刺激で精子嚢をメスに送り込むのがいるのよ 」


「 うわ…おぞましい…。本当なら、夢も希望もないですね…人魚… 」


「 最低な生き物よね…人魚… 」


「 ええ…本当に… 」


 完全沈没に陥ったキョーコの姿を、少し離れたところから蓮が気に留めたのと、現場に飛鷹が到着したのでスタンバイをお願いしますと奏江に声がかかったのはほぼ同時だった。


 簡易テーブルに頭を突っ伏したキョーコに、奏江は行ってくるわねと声をかけて、彼女の車いすを千織が押していく形でキョーコは一人、その場に残された。


( モー子さん…ヒドイ… )


 キョーコの目に涙が溜まっていたのは、恐らく二人とも気付いていなかったに違いない。

 二人の会話のあまりにあんまりな内容に、キョーコのメルヘン思考を助長する心に生えていた虹色の羽はズタズタに引き裂かれていた。



「 …最上さん?どうした? 」


 突っ伏した状態のまま、キョーコは顔も上げずに蓮のそれに応答する。


「 …なんでもありません… 」


 不躾な事だとは判っていても、シクシクと痛む胸をどうすることも出来ない。

 それに、涙ぐんだ自分を蓮に見せたくもなかった。


( …モー子さん…今日、機嫌悪かったのかな…?でも、この現場に来るまでは普通…だった気がするのに… )


 キョーコの左隣の椅子に腰を掛けて、蓮は二、三度キョーコの頭の上で優しく右手を弾ませた。


「 最上さん?もうすぐ撮影始まるよ? 」


「 …はい… 」


「 …うん?どうした?人魚姿での撮影、嬉しいってあんなにはしゃいでいたのに… 」


「 …すみません… 」



 撮影が始まる…。

 その言葉で顔を上げたキョーコを覗き込んだ蓮は、左手で自分の頬を支えながら右手をキョーコの頭に残したまま、とびきり優しい笑顔をこぼした。


「 目がウサギになっているよ。もしかして泣いていたの? 」


「 な…泣いていません!ただ、現実の冷酷さに胸が引き裂かれただけです… 」


「 それは…大ごとだね。取り敢えず移動しながら聞くよ 」


「 あ、はい…すみません… 」


 人魚の恰好をしているキョーコも奏江同様、歩くわけにはいかない。

 車いすを蓮が押してくれるだけでも贅沢な気がして恐縮したが、次の瞬間キョーコの身体は宙に浮いた。


「 きゃあ!!??な…なにを…??敦賀さんっ!おろして下さいっ!! 」


「 砂浜だから車イスだと足を取られるだろう?この方が早いし痛くもないから我慢して? 」


 首まですっぽりと着るタイプの薄手の人魚型ウェットスーツはもちろん特別性。

 春先なのに、天女の羽衣のように薄いショール一つで海辺にいられるのは、このスーツの恩恵を受けているからである。


 腰から下は魚のそれで、肩や腕、首から腰のくびれまでは人肌色。それが地肌ではない事は充分判っていても、リアルな肌質感は疑いようもなく、また胸の膨らみそのものはキョーコのモノに相違ない。


 蓮は自分の腕の中で顔を真っ赤にしたキョーコを見下ろして、柔らかい笑みを漏らした。


「 最上さん、目だけじゃなくて顔まで真っ赤だよ? 」


「 だって!!敦賀さんが恥ずかしい運び方をするからじゃないですか! 」


「 そうだね…ごめんね?でも、こうしていると…おかしな気分に、なってくる…ね? 」


「 …………え…? 」



 思わず見上げた蓮の顔が、夜の帝王モードになっていることに、キョーコは背筋を凍らせた。



「 いや ――― っ!?敦賀さんっ!大至急!!下ろしてください!! 」


「 …そんな心配しなくても、何もしないよ… 」


「 顔がそんな事、言ってません ――――― っ!! 」


( 注:二人は両片想いのままです )



 キョーコの叫びが現場内に響くと、奏江と千織もそちらの方に視線を投げた。

 会話の内容は聞かずとも、キョーコと先輩俳優のやり取りは仲の良い二人のそれでしかない事は先刻承知である。


 奏江は深く溜息を吐いて、眉間にしわを寄せた。



 ――――― 残されたもう1本のCMバージョンは蓮とキョーコのもの。


 手狭なプライベートビーチのような砂浜で蓮が寝そべっていると、金髪に白い肌の人魚キョーコが波に押し出され、息を切らしながら砂浜に這い上がってくる、というもの。

 太陽の光に眩しく照らし出される白い肌が強調され、誘われるように蓮が人魚を抱きしめる。


 テスト撮影で見せた、蓮の神々しいような甘々したような…色気と愛しさをないまぜにしたような表情は、現場の女性スタッフを腰砕けにさせた。



 敦賀蓮の気持ちは以前からなんとなく感づいていたから、それに関しては首を縦に振って、やっぱりね…と奏江自身は満足したものの、キョーコの気持ちに関しては実は把握出来ていなかった。

 それらしいことを何度か親友にぶつけてみたが、キョーコは笑ってそれを否定していたからだ。


 だが、現場での二人のやり取りを見てしまえば、キョーコの気持ちはダダ漏れに等しく、それゆえ奏江の不機嫌を一気に怒髪天まで押し上げた事をキョーコは知らない。



( あの子…隠し事する割には下手くそなのよね!黙っていられると腹が立つのに! )



 奏江が人生で最初に得た親友、最上キョーコ。


 彼女の事を、鬱陶しい…と思う事もあれば、頼もしい…と思う事もある。

 仕方ないなぁ…と思う事もあれば、思いっきり甘えさせたくなることもある。


 だ・け・ど!!

 自分に隠し事をするなんて、言語道断!!

 撮影が終わったら瞬間、撤退、カラオケルーム直行するわよ!


 …と奏江が息巻くのも無理はない。


 朝起きた時は爽やかだった気分は、完全に塗り替えられていた。

 人魚に扮して…なんて避けて通りたかったけれど、キョーコの喜びように甘んじていた自分がバカみたいにも思えた。



 この気持ちが人生でやはり最初に覚えた、親友に対するヤキモチであると奏江が気付くのは、カラオケルームの中での事…。






     E N D


 別タイトル「モー子さん、キョーコにラブラブ」(笑)

 撮影後に奏江を食事に誘おうとしていた飛鷹くんは、きっと脱兎の如く走り去って行ったラブミー部の幻影を、右手を宙に浮かせたまま呆然と眺めていたに違いない…とか余計なところまで妄想する一葉(笑)


 そしてキョーコの「顔がそんな事言ってませんー!」…に続いた蓮の言葉が、「じゃあご期待に応えようか?」…だったんだろうと更に妄想を走らせました(笑)


 余計な事ですが、ウェットスーツを過信してはいけません。寒い時は寒いそうです。


 いやいや…。それにしても人魚って不老不死だと思っていたのに、どんだけ文献調べてもその記述が出てこないんですよあせる

 まあ、パラレルなんだから自分で好き勝手にしちゃえばいいんだろうけど…。

 どうしてもそれに甘んじれない自分が居たりします汗


 一人称で書いたり三人称で書いたり色々していますが、どちらの書き方も長所と短所があるので、統一は出来そうにありません。

 でも読んで下さっている方は、きっとあんまり気にしていませんよね?


⇒不機嫌なモー子さん・拍手

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