お越しいただきましてありがとうございます。一葉梨紗です。
現状、連載しておりますACT205の続き妄想がちょっとダークな部分に入ってきて、若干やる気が萎えてきて…います…とか・・・いえ、嘘です。ちゃんと書きます。てへっ
ですが、自分的にもちょっと糖分(というかキュンキュン萌え)が不足してきた感が否めないので、読み切り短編とか書いてみたり(笑)
キョーコ→蓮…という、私的には珍しい設定なのですが、これ多分、つい先日までキョコのターンを書いていたからかと。
ちなみにこちらはスキビファンブックに載った、グレイトフルパーティ後のお話です。これもネタバレ…になるのかな?
まあ、いいか。私的にはあのラッキーナンバーシリーズが一番好きなお話なのですっ。
ACT.X+0.5サイド妄想
■ メンテナンス ■
本当は、苦い思いがこみ上げていた。
でもそれは、内緒だから・・・。
誰にも気づかれない様に、そっと心の底に沈めた。
見慣れたラブミー部室で、私の事を見上げているマリアちゃんの瞳はきらきらしていた。
くしくも過去、女子全員に天敵とみなされ、友人さえも作れなかった私に、自分の事をお姉さまと慕ってくれる年下の女の子が現れて、しかもそれを自分がさらりと受け止める日が来るなんて夢にも思わなかったから。
それをちょっと嬉しく思って、LMEに所属出来て良かったな、って思いながら、私は手を動かした。
「ねぇ?お姉さま?」
「なぁに?」
私の視線は一点を見ている。けれどそれには気にも留めずにマリアちゃんは可愛く口を開く。
「蓮様用のパジャマとか、作ってもらえないかしら?」
少し頬を染めて、もじもじと告げられたその突然の申し出に、心臓がどきりと跳ねあがる。
もちろん、ご本人様用ではない事は理解していても、やっぱりちょっと驚いてしまった。
先日、ローリィおかかえの衣装担当に着替えを作ってもらおうとして、社長に却下されたとプリプリと怒っていたマリアちゃんを思い出す。
「うーん。時間がかかるかも知れないけど?」
「本当?嬉しいっ!」
視線を動かして声の主の方を向くと、ふわふわウェーブの髪に陽の光が反射したマリアちゃんがいる。
花の様な笑顔を浮かべるマリアちゃんは、成長するにつれ相当な美人になるだろうことが簡単に予想できる風貌なのがちょっと羨ましい。
けれどそれとは関係なく、無邪気な彼女の申し出には、正直苦い想いがこみ上げた。
「それよりこの敦賀さん人形、一時預けてもらわないとだめかも…」
「え?そうなの?」
「うん。所々摩耗しているし…」
超リアル敦賀蓮特大規格人形…。
ハッピーグレイトフルパーティと称したマリアちゃんの8歳のお誕生日に開催したパーティで、私が贈ったこの人形。
敦賀さんご本人にはいたく不評ではあったけれど、マリアちゃんを喜ばせた事は記憶に新しい。
すやすや仮面とおすまし仮面という2つの顔を一緒にプレゼントしたのだけど、すやすや仮面の摩耗が激しく、カパカパと緩みが生じていた。
要するにマリアちゃんの言った蓮様パジャマというのは、この人形用のって事。
…つまり、一緒のベッドで寝ているってことなのかな、と思う。いえ、もしかしたらこれからかも知れないけど。
( 正直ちょっと複雑・・・ )
マリアちゃんに喜んでもらいたくて作った人形。
モー子さんにはリアル過ぎて気持ち悪いって後から言われちゃったけど、実はリアルなのは顔だけで。
パーツバランスには自信があるものの、胸筋とか背筋とか写真で見られる部分だけしかリアルではなかった。
でもこの気持ちが複雑なのは、人形自体の精巧さとは全然別物。
「じゃあ、お姉さま。メンテナンスをお願いします。」
「はい。了解しました。」
ぺこりと頭を下げる人形の様な少女にくすりと笑いかける。
じゃあねと言ってラブミー部を出ていくマリアちゃんに手をあげて、ぱたりと扉が閉まって一人になると、私は改めて敦賀さん人形に向き直った。
よくよく見ると、着たきりすずめのスーツもなんとなくパッとしなくなっている。
何度も抱きかかえられたのだろうか、脇の下は少し布がガサガサしている様な気もした。
( 顔だけでも拭いておこう・・・)
自分のお裁縫箱から不要な布を取り出して、キレイな敦賀さんの顔をコシコシする。
「ん!イイ男!」
日本人とは思えないほど端正な顔つきの中に、整った口元、優しい瞳、意志の強そうなきりりとした眉。
天は二物を与えずって言葉があるけれど、この人に限っては当てはまらないと、日本国民全員が思っているんじゃないかしらと考える。
少しだけキレイになった敦賀さん人形をテーブルに寝かせて、その顔を覗き込むように自分もテーブルに頭を預けた。
「…パジャマかぁ~…。どうしようかな~」
正直、作りたいとは思っていなくて。
でもそれを子供相手に言うのもどうかと思う自分もいるし、同時にこの人形をプレゼントした製作者が言うべき事でもない気がした・・・。
「敦賀さん」
名前を呼び掛けて瞳を閉じる。
瞼の裏には優しく笑いかけてくれる敦賀さんの笑顔があった。
「 ―――― 誰とも、一緒に寝ないで?」
普段は口に出来るはずもない我が儘を言葉にしたのは、自分の苦い思いを吐き出すためだったのかもしれない。
けれどまさか声が返ってくるとは思ってなくて、突然の事に心臓が飛び出すかと思った。
「・・・・・・誰とも?」
くすりと笑った声に身体がビクンと反応する。
勢いよく身体を起こして後ろを振り向くと、開いた扉の隙間にご本人様が居た。
「っ!・・・・つつつつつ敦賀さん?」
「うん。そうだけど?」
そんな確認をしなくても俺だって判るだろう?なんてクスクス笑いながら敦賀さんが口を開く。
面白いおもちゃを発見したみたいに、右手をグーにして口元に当てながら、少し色香の漂うまなざしで私の事を見下ろした。
「お、ヤッホー!キョーコちゃん」
「あ、社さん、お疲れ様です」
敦賀さんの後に続いた社さんを見つけて、救世主!って思ったのもつかの間で。
リアルな敦賀さん人形を見るなり社さんの顔は青ざめて、「ああ~松島主任に呼ばれていたんだった~」と言って敦賀さんを置いてさっさと逃げてしまった。
( ええ~~~~?逃げるのぉ?)
社さんを引きとめようと持ち上げた私の右手は鮮やかに空を舞い、代わりに敦賀さんが思い切りの笑顔と一緒に手を取ってくれる。
女性をスマートにエスコートする様な仕草をして、私の右手を両手で包んだまま優雅に私の隣のイスに腰をかけた。
「最上さんが望むなら、俺は君の添い寝ぐらいいつでもするけど?」
「えええぇぇ…!!」
「俺を模した人形を抱いてそんな可愛いこと言う位なら、俺に直接言えばいいのに」
いやいやいやいや…!
ムリムリ!言える訳ないですから!と言いたかったけど、ただ顔を真っ赤にして首を振るしか出来ない私は思い切り変な顔をしていたと思う。
「 いぃぃ…いつ、いらっしゃったんですか?」
「 ん?ああ ――― …イイ男!って最上さんが言ったあたりから?」
つまり最初から全部!!を聞かれていた事実に、さらに血液が顔に集中する。
そんな私ににっこりと笑いかける敦賀さんの優しい微笑みに、心臓が激しく身悶えて息が苦しくなった。
二の句が継げなくなった私に向かって、代わりに敦賀さんが口を開く。
「マリアちゃんの人形…メンテナンスしていたんだ?」
「え、あ。はい。そうなんです」
「じゃあ・・・今夜あたり、俺のメンテナンスもお願いしちゃおうかな?」
「それってどんなメンテナンスですかぁ~」
からかわれているって判っているから、恥ずかしくて逃げてしまいたくて。
急いで立ち去ろうとした私の腕を掴んで、敦賀さんは難なく私を引き止める。
神々しい笑顔をたたえるその顔が目に痛くて、思わず顔を背けて泳いでしまう目。多分、この泳いだ距離を計れるなら10kmは進んだという自覚すらあった。
「どうして目を背けるのかな?」
「いえいえ・・・。お気になさらず・・・」
「 …まぁ冗談はさておき、今日は割と早めに上がれるから、出来れば夕食を作ってもらえたらなって思ってここに来たんだけど。最上さんの都合は悪い?」
からかわれたことは面白くなかったけど、そうお願いされたら断れない私がいる。
良いですよと二つ返事をすると、「ありがとう」と言葉を滑らせて敦賀さんがにっこりと笑う。
その笑顔がそもそも反則!と思いながら、私もつられて笑顔になった。
「じゃあ、またあとでね」
「あ、はい。またあとで」
忙しく出ていく敦賀さんの背中を見送って、私は恥ずかしさを吐き出すように溜息をついた。
( 心臓に悪い… )
超リアル敦賀蓮特大規格人形…。
マリアちゃんに喜んでもらいたくて作った人形だったけど、プレゼントをした時は心に苦い想いがこみ上げた。
その理由を私はもう知っているけれど、もう少し心の底に沈めておきたい。
今はまだ、静寂よりは喧騒が安心出来るから。
もう少しこのままで、あなたのそばに居たいから。
「あ、そうだ。最上さん」
「あ!はい?」
「お礼は添い寝で構わないのかな?」
「そんなお気づかいは無用ですぅ~~~~!!」
叫んだ私の声がフロア中に響いたのを知ったのは、明後日の事だった。
E N D
機転を利かせてまんまとキョコを自宅に呼び寄せる蓮。とかどうっすか?(笑)
もちろん続きません。
続いたら桃話にしかならないから。
言葉がウダウダですね。
ま、あれですよ。思い付きと勢いで書きましたので、広い心でお許しください。
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