■ご訪問有難うございます。一葉です。
こちらは10/19発売の雑誌に掲載されました、スキビACT205の未来妄想小説になります。
内容には、妄想とネタばれが大量に含まれております事をご承知の上、自己責任でお読みください。
どうぞよろしくお願いします。
こちらは続き物です。前のお話はこちらから
■Scene1
・■Scene2
・■Scene3
・■Scene4
ACT205未来妄想 ■side 蓮 ■Scene5 『懐疑』
『 兄さん。アタシ買い物してくる。すぐそこのストアで 』
そう言って現場を離れたあの子に、少しの違和感を覚えた。
セツとして隣にいる間、どれほどの時間が過ぎ、どんなに遅くなっても片時も離れなかった妹。それなのに、俺に促されてではなく自主的に俺から離れようとするなんて…と。
だが、縛りつけるのは良くないと思った。
もしかしたらあの子は、俺のそばに居心地の悪さを感じているんじゃないかと思って。
昨日、浜辺で会った時も、どこかよそよそしい感じがあった。
最もコーンに対しての態度が、俺と重なる事はないのだから、そちらに関しては気にする事は無いのかも知れないが。
『 もしかして、キョーコちゃん? 』
砂浜に記した文字を読んで、あどけない笑顔を浮かべて俺の名を呼んだあの子。
自分自身を作る為の仕事を見つけたと、嬉しそうに報告してくれた。
声を発すれば俺だとバレてしまう危険性があった。
だから筆談という選択をしたのだが、情報のやりとりは言葉を交わす時より激減してしまう。
これ以上、俺から離れてしまわない様に、せめてもの予防線の意味を込めてあの子と交わした未来の約束。
頑張ると微笑んだあの子の瞳に小さな陰りがある様に見えたのは、俺の気のせいだったんだろうか?
監督に呼ばれて近づく俺に、反発をするように席を立った村雨。
あいつがいつも神経を集中させ、視界だけではなく感覚で、あの子を追いかけている事はとっくに知っていた。
ジロリと睨みつけてやったが、鼻で笑って歩いて行った。セツとは反対方向に。
考えすぎかとも思ったが、注意喚起を怠るなと心のどこかで警鐘は響く。
それに…。
気になる事がもう一つある。
未だ戻らないあの子より先に帰って来た村雨。
いくつか監督と言葉を交わした後、俺の方をじっと見てから勝ち誇った様に笑った。
あの笑みに意味がある様に思えてならない。
そして同時に結びついた過去の記憶。忌々しい不敵な笑みが、色鮮やかに脳裏で蘇生した。
――――――― 不破。
ダークムーンの別荘ロケで、ストーカーからあの子を守ったアイツ。
あろう事がどさくさに紛れて、あの子に告白までしようとした。
すんでの所で丸めこんでやったが、まるで意に介した様子も無く、勝ち誇ったように笑って俺に挑戦状をたたきつけた奴が。
今度はその舞台から降りろとでも言うように俺を待ち伏せた。
『 アンタだけは 無いらしいぜ
間違っても アンタに惚れるようなバカな真似だけはしないってさ 』
あの子が口にした事だと、ご丁寧に注釈を付けて――――。
荒れ狂う波を抑える事も出来ず、社さんが来なかったらどうなっていたか判らない程に。
だから、何だと言うんだ。
だから何だと。
あの子を想うのは止めろと言いたい訳か?
少なくともお前に…。
あの子を深く傷つけたお前に―――――。
そんな事を言う資格なんかないだろう。不破!!
…セツカを取り上げられて、あの子と離れた冷却期間、色んな事を考えた。
不破の言動やあの子が言ったとされる言葉の意味。
素の俺の顔を見て、氷の様に固まったあの子は、あの時なにを考えていたんだろう。
その心中に到来した気持ちを知りたいと思った。
けれど、コーンとして向かい合ってみても、引き出せる情報なんてごくわずかなもの。
無下にする事がどうしても出来ず、少しの間だけ近況を交わした。
『 しごとってなに? 』
『 お芝居なの。今は、事務所の先輩のフォローをするお仕事をさせてもらっていて… 』
( 事務所の先輩…か )
正直、落胆せずにはいられない。
あの子の中の俺の位置は、全く変わることなくそこにあるだけ。
それどころか対応を誤れば、心の中から弾かれてしまう可能性だって十分にある。
それでも、マシだと思うしかないのか?
この先ずっと、男として見てもらえないとしても。
先輩として、頼ってもらえるだけマシなのかも知れないのか?
あの子の傷が平癒するまで待とうと思った。
その間あの子を守る事くらい、俺にも出来るとそう思った。
だが、芝居を通して成長していくたびに、あの子は少女の殻をも破って大きく変化していくだろう。
花咲く様に開いていく才能に比例して、彼女の魅力に気付く男はきっと大勢現れる。
『 れ~~~~~ん~~~~~?
女の子は早いよぉ 大人になるの
きっと自分でも気付かないうちに
すごいスピードで磨かれて
どんどんキレイになっていくぞ 』
…それに俺は耐えられるのか?
自らの想いはあの子に悟らせない様にと注意を払いながら。
だが…。
クスっと自嘲の笑みがこぼれる。
考えたって意味はないだろう。
俺はそうすると決めたんだから。
少しでも障害に成り得るものは、迎え撃ってやるしかない。
「 兄さん、聞いてる? 」
ハッと意識が開いて顔をあげると、そこにセツカが居た。
「 ごめんなさい。ちょっと監督にお使いを頼まれて時間かかっちゃった 」
お使い……?
妙な違和感。不自然なような、自然なような、あいまいな感触に焦燥感が募る。
「 …それで?自分の買い物は出来たのか? 」
スチールパイプのイスに座った俺の前で、彼女がゆっくりと膝を折って大地に腰を近づける。
フフッとセツカの顔で笑いながら、俺の膝に手を置いてしゃがんだ姿勢で俺を見上げた。
俺を覗き込む瞳。
確かにあの子に違いないのに、何かが違うような気もする。
根拠の無い想いだけが、俺の中で渦巻いていた。
「 ううん。兄さんの熱中症予防、じゃなくて熱射病予防かな?と思って買い物に行ったんだけど、炭酸飲料ばかりだったから止めたわ 」
その意外な言葉に思考が停止。
…俺から離れたんじゃない?
軟らかい頬に触れようとした瞬間、スタンバイの声が響いた。
妹の顔から仕事場へ。
ゆっくりと気持ちを切り替える。
「 行ってくる 」
ポンポンと2回頭を叩くと、いってらっしゃいと応答する声があった。
『 アンタに惚れるような バカな真似だけは しないってさ 』
苦い言葉が宙を舞ったが、あえてそれは黙殺する。
考えた所で答えは出ない。
正解は彼女の中にしかないのだから。
Scene4に続いて今回のSceen5も若干短めでした。
ここまでもまだ妄想の折り返しに至っていません…。
でも絶対に蓮を幸せにしてみせますので、よろしくお願いします。
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