ACT205の未来妄想 ■3 | 有限実践組-skipbeat-

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■ご訪問有難うございます。一葉です。

こちらは10/19発売の雑誌に掲載されました、スキビACT205の未来妄想小説になります。

内容には、妄想とネタばれが大量に含まれております事をご承知の上、自己責任でお読みください。


どうぞよろしくお願いします。



こちらは続き物です。前のお話はこちらから

■Scene1

■Scene2


ACT205未来妄想 ■side 村雨 ■Scene3 『欲望と応酬』





 海外に移動した撮影現場は、爽やかに晴れ渡る空気の中で開始された。

 本来ならこの清々しさを満喫する所だろうが、俺は朝から繰り返される目前の光景を眺めるたびに気分が鬱蒼としていくのを感じている。

 おそらくこの不快感が、クランクアップまで続くのだと考えると、増長する怒りが爆発する日は目前だと言う予感まであった。


 撮影衣装とはいえ全身黒づくめの男は、ここでも変わらず異彩を放っている。そしてその男の隣には、一見不釣り合いにも見えるピンクの髪の女がいた。


 カットの声と同時に、糸の引かれたマリオネットの様に妹へと近づく男。

 笑顔で差し出されたそれを、さも当然と受け取る姿がまた苛立ちをあおった。



 自分用に用意されたイスにドカンと腰をおろし、イライラとムカムカを顔に出したまま、俺はじっと2人を見続ける。

 いつも少し離れた所に陣を構える2人。

 屋外ロケのせいか、その距離は更に遠くなっていた。


 男の右手が妹の顔に触れるのを見るだけで、はらわたが煮えたぎるような憤りを覚える。

 燃えさかる炎の様な熱情が自分の中にあるのを感じていた。



 そりゃあ同じ男としては?

 奴の気持ちも全く判らないでもない。

 何より可愛い妹が自分を慕ってきたら、そりゃあ近くに置いておきたいだろうと俺も思うかも知れない。



 だが!!それでも奴がしているのは背徳行為に違いはない。

 あの姿を見るたびに耳元で怒鳴ってやりたくなる。



( お前は!妹自身の幸せについて考えた事はあるのかよ!??)



 胸中で泥水の様に混ざり合う忌々しさが渦を作る。

 それが激しくうごめいてとぐろを巻くたびに、自分の中からまた怒りが生まれるのを感じる。

 それを朝から何度も繰り返していた。



 俺に背を向ける男を射殺す気分で視線を送り、同時に奴に向き合う彼女を見つめる。

 穏やかな優しさに満たされている顔が、更に俺の心を蝕んだ。



 彼女がイギリスに帰国したと聞いたのは、奴の隣に姿を見なくなって2日目の昼の事だった。

 昼食を共にした監督がそうポロリとこぼすのを聞いた。



 喪失感があるほど親しかった訳ではないし、

 物足りないと思うほど言葉を交わした訳でもない。


 ただ、初めて見た時から、あの瞳が好きだと思った。



 兄を一番大切に思う、不毛な女、セツカ・ヒール。



「 村雨君、ちょっといいかな? 」


 監督の声にはじかれ、途端に彼女から視線を外す。だがなぜか俺は、注視を遮断するたびに全神経を総動員して彼女を追っていた。


「 カインさーん 」


 続けて奴の名前が現場に響く。

 2人の方へとまた視線を投げた時、彼女の体が泳ぎだす魚のようにふうっと揺らめくのが見えた。



( …?… )



 なぜか、嵐に倒される花を連想したが、俺の意に反して彼女は兄にべったりと張り付いた。その様がイチャイチャ兄妹のスキンシップにしか見受けられず、懲りもせず俺の神経を逆なでする。


 俺が監督に『もう一度』と促すと、現場に再び2人を切り離す声が響いて、やっと応じた奴がのっそりと動いた。

 2~3歩進んでまた止まって、更に妹を振り返る。

 この繰り返される光景が、俺の沸点を下げる原因なのだと奴は本当に気付かないのか?


 けれど次の瞬間、いつも兄のそばを離れなかった彼女が、まるで独り立ちを学んだヒナの様にさっさと離れていく光景が目に飛び込んで、俺の憤りは緊急停止した。


 寂しげに視線を送る兄には全く振り返らず、巣立つ若鳥の様に足取りは軽そうに見えた。

 思わず浮かんだ皮肉な笑いを、俺は惜しげもなく奴の背中に恵投する。



( だいたい、兄貴の方はイギリス紳士にもなれないくせに、妹は大和撫子並って似合うか!?似合わねーだろ? )



 実際、彼女を見ていると、ありあまる献身的な態度に度肝を抜かれる。




( 会った最初は、イカれた女ぐらいにしか思わなかったのにな… )



 彼女は、少なくとも今までに会ったことのないタイプの女だと思った。

 独特の服装と派手な髪色。少し偏った妖艶さが、彼女を守っている様にも見える。


 そして、やけに目につく献身的な態度。

 それらが俺の情操をこれでもかと揺さぶった。



( 俺の周り、けっこう女いたけどな… )



 中2から17の夏あたりまで、俺の頭の中を占めていたのは、ごく単純な闘争心と功名心だった。

 それなりの成果は得られていて、名乗れば避ける男はたくさん居たし、名が轟くほど寄ってくる女達は増えていった。



 だが、今の俺はどうだ?


 思い立った芸能界で、俺は同じ様に名を響かせる事に成功した。

 この世界は俺の努力と根性を試せる心広い実力社会。

 持ち合わせた心意気はあの頃と何も変わらないのに、群がった女は一人も残らなかった。



 結局、そういう事なのだろうと思った。




「 監督…… 」



 奴を睨みつけたまま、俺は静かに口を開く。

 目的はたった一つ。そう、奴がここに来る前に…。



「 俺、少し時間もらってもいいですか?荷物…忘れ物を取りに行きたくて… 」


 そして照準を一つに絞る。


 話の内容は奴には聞こえないハズなのに、今度は奴が射抜くような視線でこちらを見据える。

 俺の視線か俺の思惑か、奴が気付いたのは果たしてどちらか?



 だが今ここで、彼女の行く先に歩みを進めるほど、俺もバカな男じゃない。



「 うん、大丈夫だよ。戻ったら声をかけてね 」



 ガタン…とイスから立ち上がり、まるで反発する磁石のように俺は静かに離れる。

 さながら風に流される木の葉のように。



 彼女が何の理由で奴から離れたのかは知らないが、このチャンスを逃す手はないと思った。


 俺はぶつけてみたいんだ。

 自分の中に吹き荒れる沢山の疑問と、それを生みだす要因が何なのかを、他ならぬ彼女に。



 一度振り返って奴を見下ろす。

 俺の真意なんか判らないだろうと思ったら、勝手に口元が笑いを浮かべた。

 かち合った視線を鋭く切って、俺はホテルの方へと歩いた。

 そう、彼女とは反対の方向へ。



 いま使っている撮影現場は、土地が低くなっている。

 ちょうど道路より半階分下がった所にあると言えば判りやすいだろうか。

 だから一旦現場からはずれ、ホテルの方へ向かった後に車道を渡ってさえしまえば、俺の姿はここから見えない。


 それから進行方向を変えても、奴は気付きもしないだろう。



 急ぎ足で通り過ぎて、対の歩道に出て一目散に的と定めた彼女の方へと踵を返した。

 心が急くのに合わせて迷子の子供の様に駆け出す足を持って、最速短距離走者の気分で俺は彼女の姿を視界に捉える。



( 目立つ……よな、彼女 )



 道路2本分ほどの距離の向こうにいる彼女を見つけて改めてそう思った。


 少し離れているせいか、彼女を見ているたくさんの男達の存在にも容易に気付ける。

 だが彼女は無頓着なのか、そんな簡単な事にも気付かず、周囲に目を配る事もせず、目的地を目指して道路の角を曲がって行った。



( なぜなんだ )



 ついそう思ってしまう。

 なぜ?と。


 こんな状況に身を置いているにも関わらず、彼女は自分の価値に全く気づこうともしない。

 俺はそんな彼女を本気でバカだと思った。


 見失わないようにと早足で近づく。この間隔が狭まっている事でさえ、彼女は一切関知しない。

 大型店舗の自動扉をくぐる姿を追いかけて、従う様に短かすぎるトンネルを超えた。



( 何だ?ドリンクショップ? )



 立ち止まる彼女を見つけ、自分も一旦、歩みを止める。

 呼吸を整えるための時間は、同時に彼女を見つめる時間。


 居並ぶヤロー共の視線を撥ね付けながら、まるで一輪花の様に立ち止まった彼女。

 何を思ったのかは判らないが、何の予告もなくフッと表情を変えた。



 はにかむように

 幸せそうに

 キレイな笑顔を作った彼女




( アイツの事を考えたんだ!! )



 そう思った瞬間、強い疑問符が口から飛び出してしまいそうだった。

 なぜその笑顔の動因があんな奴なんだ。



 胸のうちにメラメラと炎が燃えさかる。

 苦々しく広がる感情を吐き出したくて、その場で思わず舌打ちをした。

 瞬時に撃ち殺すように。



( あんな男のどこがいいのか!!)



 あの子の耳元で怒鳴ってやりたくなる。



 ああ、そうだ。

 俺に群がる女は山ほど居たよ。


 けれどそれに どれほどの価値があったんだ。

 未来へと進んだ俺は 今たった一人で

 結局あの女達は 俺を好きだった訳じゃなかったんだと気付く。



 恐らくそれは、強いオスに群がっただけのメスの集団のように。

 さながらそれは、夜の街灯に集まった蛾のような値打ちでしかないだろう?




 それに比べて彼女はどうだ?


 実の兄貴と知っていて、

 恐らくは不毛な恋だとも判っていて、

 それでも兄を見つめる一途な瞳!



 嫉妬の炎を燃やしている事には一切気付かずに、俺は憮然としながら彼女へと歩き出した。

 もちろん少しの緊張こそあったが、そんなものは取るに足らない物。

 彼女のすぐ後ろで立ち止まり、自分へ振り向かせようと左手をあげた時だった。



 ドンッ!!



 まるで俺という磁石に引き付けられたかのように。

 彼女が胸に飛び込んできて、安堵した子供みたいに全体重を任せてきた。



「 お…おい?…大丈夫か?」



 あまりに唐突な出来事に戸惑ったが、とりあえず腕の中にいる彼女に声をかける。だが当人からの返事はない。


 美味しい所を持って行かれたとばかりに、ざわついたヤロー共がにじり寄ってくる。ともすれば彼女の身体に触れようと手を伸ばす輩も見えた。

 それを日本語で恫喝してやって、ヤンチャ時代の経験が生きている事を再認識し、勝ち誇ったように笑ってやってから改めて彼女に向き直った。



「 おーい。セツカ?…セツカ・ヒール!」



 その時、初めて彼女の名を呼んだ事に気付いた。



「 おーい。セツカ?大丈夫か?」



 今この時に俺の胸を占めている歓喜にも気付かないだろう彼女は、身体を揺すっても、肩を揺らしても目を開けようとはしなかった。


 どちらにせよ移動しようと思い立ち、一張羅のTシャツを脱ぐ。

 撮影用の衣装だが一切悩まずに、ミニスカートの裾に巻き付けてから彼女を静かに抱き上げた。


「!!!!」


 その予想外の軽さに驚き、思わず彼女を見下ろす。

 やはりさっきの彼女の揺らめきは気のせいでは無かったのだと、ここではっきりと確信を得た。



 彼女の帰国理由は誰も知らないのだが、合流してすぐ倒れるなんて、相当無理したのではと想像できた。



( 一体、どこまで一途なんだよ )



 毒づきたい気分がまた浮上して、もやもやした霧が胸中に立ち込める。

 周囲の観客達を尻目に、俺は颯爽と現れた正義の味方よろしくその店を後にした。

 とりあえず来た道をUターンしながら、そこでさて…と考えた。


 本来なら、黒い男に連絡をすればいいのだろうが、『残念な』と言うべきか『好都合』と言うべきか、俺はカインの連絡先なぞ知らない。


 まあ、よしんば知っていたとしても、俺がなぜ彼女と一緒にいるのかを説明する気なぞさらさらない。

 それに…と続く。



 日本での撮影中、セツカが居なくなってからというもの、撮影は恐ろしいほど順調に進んでいた。

 それは多分、妹が不在になった事で、奴の興味が仕事だけになった事を暗に示している。

 きっちり時間通りに来る事こそ無かったが、少なくともズル休みも1時間以上の遅刻もなくなっていた。

 なのにこの子が倒れたと聞けば、また撮影に支障が出るだろうという懸念はぬぐえない。

 せっかく順調に進んでいる現状を、反故にする事だけは避けて通りたかった。



 気を失った女を抱いて、上半裸で歩く男はかなり目立つようで、道行く人間が振り返る。

 俺は視線を全く気にせず、そのまま答えを導いた。



( 宿泊階こそ違うが、泊まっているホテルは同じなんだし )



 とりあえずホテルに行こうと目的地を定める。

 腕の中にいる彼女の重みを確認するように見下ろして、自分の左胸で踊るピンクの髪が揺れるたびに、自然に表情はなごんでいった。



 きちんと整えられた眉。

 伸ばされた睫。

 形の良い唇と、ふっくらした頬。


 好きだと思った彼女の瞳は今は守られるように閉じている。

 たったそれだけの違いなのに、腕の中の彼女はあどけない少女の様にも見えた。



 この瞳 ―――――



 今は閉じられたこの瞳が、自分に向けられたらどんなにか嬉しいだろうと想像する。




 兄を一番大切に思う、不毛な女、セツカ・ヒール。

 道行く男たちの視線を奪う己の程を知り、

 自分の価値に気付けばいいのに、ともどかしく思った。



 ホテルの自動ドアが快く開く。

 ロビーにいた客からも注目を浴びたが、そんなものは完全に無視した。

 飛んできた日本人スタッフに事の次第を説明して、案内をされるまま、俺は簡易医務室へと向かった。



 ゆっくりと彼女をベッドへ下ろし、もう一度顔を覗き込む。

 明るい太陽の下では判りにくかったが、やっぱり顔色が少し悪いと思った。



( やっぱ、無理して来たんだ )



 窓からチラチラ降り注ぐ日差しを遮ろうと、仰向けに寝ている彼女の左手側へ移動し、カーテンを細く閉じる。

 彼女の静寂な寝顔をもう一度確認して、足元の薄手の布団を手にした時、彼女の腰に巻き付けた衣装を思い出した。



( あ、いけね )



 起こさない様に優しく細い左肩を持ち上げ、静かに横寝の体勢にしてからそうっと衣装を引きぬく。

 ふわりと軟らかに髪が滑り落ちて、普段なら見えない彼女のうなじに目がとまった。




 … その  男を誘う  白いうなじ …




 抗う事なく誘惑に乗じると、ふんわりと石けんの香りに包まれる。その意外な清潔感に切なくなって、同時に心臓がギュッと縮んだ。



 その時ふと、ある事を思い出した。



『 カインの首筋に キスマーク が付いていたんだって 』



 いくらなんでも兄妹で!??と一蹴したが、ドリンクショップで見た彼女の表情を思い出すと、どうにもあり得ない事ではないと思う自分もいた。


 だが今ここにある肌が、男を知っている様にはどうしても見えない。



 柔和そうな肌に、白いうなじ。

 瞬間、脳裏に閃光がひらめき、カインの顔が浮かんだ。



 胸の内に湧いた欲求は素直な想いで、それを諌める事にどれほどの意味があるのだろう。

 彼女はこんなにも魅力的で、男はこれからも寄ってくるだろうに。



 俺は滑り降りるように神秘の場所へ寄り、ひそやかに唇を近づける。


 目的地はたったの一つ。

 うなじを駆け下り肌を押し上げる椎骨の左側。

 肩の始まりとも背中の始まりとも言い難い、微妙で繊細なその場所へ。



 忍び寄り、欲を落とし、美酒を楽しむ様に肌を吸い上げる。



 そう、これは神聖な儀式。

 兄に緊縛された君が、自由になれる事を祈って。

 そして自らの意思で、幸せな未来を選択出来るように。



 …結局、当初の目的を達成する事は出来なかったが、結果としては決して悪くないと思った。


 白い肌に色づいた彼女の血の赤が、美しく紅葉したかに見える。

 周囲は一様に彼女を曼珠沙華だと形容するが、俺には美しいカエデに見えていた。

 

 美麗であでやかな紅葉で有名な、カエデの精の様に…。



 そうして俺は口端をあげる。

 予想以上の成果が見える。


 おそらくこのキスマークは誰にも見つからない。

 奴にはもちろんだが、当のセツカ本人にさえも・・・。



 彼女の瞳が欲しいとは思った。

 だが始めから手に入る訳が無い事も判っている。



 だからこれは奴への応酬。

 ささやかで攻撃的で緻密に計算された仕返しに過ぎない。



 この子は、奴が誰よりこだわる妹だから。



( やられっぱなしは性に合わない )



 彼女を静かに仰向けに寝かせ、そっと布団を掛ける。

 そうして任務を遂行し終えた俺は、一人、撮影現場へと戻った。






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お・お・終わった・・・。3話が…。


そう言えば蓮くんと村雨って同じ21歳なんですよね。

なのに原作で「年下に言われてすぐ時間通りに…」って監督が言うセリフに、何か違和感を感じています。

カイン・ヒール。本当は何歳目安なんだろ?


あ、どうでもいい事かもですけど。



⇒ACT205未来妄想S3・拍手

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