大地真央と羽生結弦が共演?

 

  「どうなることか」と思うのが普通ではないだろうか。

 

  だってそうでしょ、彼は銀盤で演じ、彼女は舞台にいる。

 

  彼が舞台に上がることは可能だが、彼女が銀盤に降りたら滑って転んじゃうわ。

 

  で。

 

  生でこのお二人の共演を拝見したら、「・・・なんかスゴイものを見た」という記憶だけが残りまして。

 

  さすがの「大地真央」

 

  数分の演目、真央様は最初、黒い女王として1分くらい、最後に白い女神として2分くらい登場するだけなのに、そこにいるのは70近いババアではなく、「ザ大地真央」が降臨。

 

  もうね、人ならざる神々しい生命体が「降臨」

 

  宝塚トップスターとはこういうものなのね。

 

  さらに男装で「女神よ今夜だけ~♪」と1曲、華やかな淑女が投げキッスして1曲。

 

  宝塚ファンによると真央様が男装して舞台に上がるのは久しぶりだという。

 

  「いい男を演じても大地真央だけど、大地真央じゃないのよ、いい男そのもの」という舞台に生きる覚悟を体現するスター。

 

  で。

 

  私の脳裏をよぎったのは「そういえば私、30年ほど前、真央ちゃんの叔父という方から彼女のサインをいただいたんだわ」

 

  叔父か伯父かは分かりませんが。

 

  真央ちゃんの旧姓と同じTさんという名前でしたが、父方なのか母方なのかは分からない。

 

  その方は取引先の常務で、会社四季報に名前が載っている財界人。

 

  超高層ビルの建設で有名な会社で、横浜ランドマークタワーも建てたという。

 

  Tさんは真央ちゃんの父親代わりとして、彼女に経済的な援助をしていたという。

 

  「子供の頃から真央ちゃんは尋常ではないオーラがあった。宝塚を目指していると聞いたとき、この子は絶対にトップスターになると思った」と語る彼は石原裕次郎に似ていて、歌も上手く、財界人というにはスターの華があった。

 

  さすが、「大地真央が姪」という殿方は一目で凡人ではないと分かるの。

 

  あるとき、私がその会社に書類を届けに行ったら、Tさんがちょうど会社を出る所で、「君の会社まで送っていくよ」と私に声を掛けてくださった。

 

  もちろん、運転手付きの黒塗りの車。

 

  車内には当時、まだ珍しかった移動電話があり。

 

  ボックスティッシュくらいの大きさで、私は車に付いている電話というものを初めて見た。

 

  「財界人はこういう車に乗っているのか」と驚き、「私はこういう車に乗せていただける、そういう立場で仕事をしているのだ」と感慨があった。

 

  そのとき、私は三菱商事の子会社で輸入建材を受け入れる窓口になっており、物件は、西新宿のNTT本社ビル。

 

  業界では有名な物件だった。

 

  建材を輸入し、毎月、数千万のカネがうちの会社からアメリカの会社に送金される。

 

  私がサインした書類で決裁が決まる。

 

  そういう権限を20代の女性が持つことが建築業界では珍しく、私が銀行に入ったら相手にされなくて、窓口で2時間も待たされたことがあった。

 

  そこに乙仲さん(輸入の手続きをする業者さん、三菱系は郵船航空サービスと決まっている)の男性が加勢に駆け付け、「この女性がどを使うか決めるんですよ、支店長を呼んできて」と窓口で言ったら、支店長が慌てて飛んできた。

 

  「大地真央」という名前を聞くと、若かりし頃に仕事で評価されていたから「真央ちゃんのサインをあげよう」と言われる立場にいたのだと懐かしく思い出すのですが。

 

  「姪が真央ちゃんなんだ」と私に言った、Tさんの会社は超高層ビルが建たなくなった時代にトステムと合併し。

 

  そして、彼はすでにこの世を去ったと思うのですが。

 

  羽生結弦様のファンになって思うに、私が納得いく仕事ができたから、申し込む度にチケットが当たっていたのではないかと思い。

 

  仕事のためにたくさんのものを犠牲にしてきたけれど、その結果、「羽生結弦を好きなだけ生で観られる」という僥倖を手にしているのだから、やはり神様に感謝しないといけないのかも。