先日、実家の2階を不用品回収業者さんに片付けていただきまして。
テレビ、エアコン、そして桐の箪笥だけが残された部屋。
一抹の寂しさはあるが、スッキリした気分に。
そして、天袋から散弾銃の弾が出てきまして。
父は生前、猟銃を持っていて、八戸は禁漁区ではなかったので、度々、狩りに出かけていた。
千葉県に越してきてから、禁漁区で猟銃を所持しているのが何かと面倒なので、父は50年ほど前に免許を返納し、猟銃も処分した。
天袋にキジの剥製も置いてあり。
その剥製は、山水のオーディオの上に置かれていて、「掃除するのに邪魔だから処分するように」と母が私に命じたので、私が尻尾を折って段ボールに突っ込んで2階の物置と化した部屋に運んだはず。
当時、山水のオーディオは高価で、レコードなんぞ聴かない父は、自慢の剥製を置く台にするために購入したと考えられる。
八戸市内には、3軒の剥製屋があり、父はいい獲物が獲れると、私を連れて剥製屋に行った。
父は自信がない人で、どもりだったが、剥製屋では店主に敬意を示されていた。
猟銃も山水のオーディオもキジの剥製も、父にとっては、男としての誇りだったに違いない。
キジの尻尾を折ってゴミにしてしまい、ごめんよ、お父さん。
地元の警察署に電話すると、そこでは弾丸の処分は引き受けていないとのことで、印西のガンショップに持ち込み、引き取ってもらうよう指示された。
雨でもあり、ガンショップが不便な場所にあるので、自宅からタクシーで赴き。
タクシー運転手さんの話が非常に興味深くて。
私の父は石岡の出で銃が好きでしたが、茨城県民で豪邸に住んでいる人は、武器が好きですよね。刀を飾っているお宅も多い気がします。
すると、運転手さんは水戸の出で、先祖代々伝わる刀を大事にしているという。
光圀公から拝領した刀で、鞘を抜くと災いが降りかかるという言い伝えがあるので、鞘を抜いたことはない。
運転手さんの隣家も水戸の出で、火縄銃を2丁、所持し、往来から見えるようにガラスケースの中に銃を飾っているそうな。
ガンショップに着き、店主は女性で、どうやら三人姉妹が父親の店を継いだらしい。
私が女店主に弾を見せると、「すごいですね。この時代は、弾を買うのに田畑を売って、と言われたので、富裕層でないと銃を持てなかったのです。こういう弾を見せていただき、ありがとうございます」とお礼を言われて。
たまたま店内にいらした、常連らしき若い男性も、「ああ、これはすごいですね、ナントカですね。今は滅多に見ることができません。見せて下さってありがとうございます」
私は、その店に行って初めて、父の凄さを知った。
だから、実家を片付けてよかった。
ガンショップで銃の実物を見ると、タダの物体ではなく妖気を発していて、武器に魅入られる人が沢山いるのが理解できた。
数多の人々の生死を支配する権力を手にした気になるのだろう。
自宅からガンショップまで往復し、タクシー代は3万円ほど。
全く高いとは思わず。
父は最期、床から出ることすらかなわなかったが、妻と娘に男が男たる由縁を見せつけてくれた。
父が残した弾を称賛していただき、父の物語が完結した。
そんな気がした。