テレビ東京の「カンブリア宮殿」
私、あの番組が大好きなんですが。
司会が村上龍、というのもナイスなんですが。
あの番組の「ミクロの決死件」の原案となった悩み、を本にまとめたもの。
天下国家を語るのも重要だが、多くの個人が抱えるバカらしくも切実な悩みにこたえることも大事、がコンセプト。
そもそも悩みも嫉妬も、すべからくくだらないといえばくだらないし、高尚といえば高尚である。
しかし。
経済理論には、マクロ経済理論という天下国家を論じるための理屈がある。
村上氏は、経済に限らず、「事の本質を見抜き、それを分かりやすく言葉にする」という才にたけており、経済人を相手にコメントさせてもものすごく面白い。
個人的には、下着の通販で名をはせた、ピーチ・ジョ社長の野口さん。
村上氏は、「社長としてすごいやり手なのに、女としてはすごく可愛いので、混乱した」由。
その「かわいい」は、「かわいい魚屋さん」のように「かわいい」だそうで。
面白いこと、言うよね、長年、流行作家だけあって、能力を商売というかカネに変換するのに長けている。
やりたいこととカネになること、が一致しているのもすごいぞ。
相当に冷めていて、かなり頭が良くて、でも、そこまで仕事しないと気が済まないほど不幸で、作家として才能がある。
まあ、稀有な存在なんだね。
でも、あえて言えば、村上氏と同じくらい能力がある人はたくさんいるんだろうけど、彼ほど「村上龍として生きていきたい」という熱意というか業がないんですね。
この本で面白かったのは。
人を採用する担当者は、「ちゃんと愛されて育った人を採用したい。そういう人は人づきあいがちゃんとできるから」と言うことが多い。
「この人にしかない、という特別な能力があれば、その人を採用する」という次元と、普通に仕事をするという次元は違う。
要は、生き方なんて六本木ヒルズに象徴される価値観の奴隷になるか、で決まる。
「自分が何をしたいのか」を自分が分かっていないと、答えは出ない。というより、自分が分かっていると自覚するのが怖かったり、面倒だったりするから、答えを出すのがおっくうになっている。
職場に尊敬できる人が必要ですか?尊敬できなくてもきちんと仕事できればいいじゃないですか?
尊敬される人はあまりいないから、歴史に残るんです。いなくて当たり前。
弁護士事務所に弁護士資格を持つブスと資格を持たない感じのよいブスが来たら、どちらを採用するかは明白です。
誰でも30になったり40になったりするのですが、そのときにどうやって充実できるポジションにいるかが大事。それはその人がどう生きていたか、で決まる。
知り合いの税理士に「お金で解決できることはお金で解決したらいい」と言われたが、それは真実。
その仕事が好き、というとき、「好き」という意味があいまいなんですが、僕(村上氏)は、「その仕事が続けられる」ということが含まれる気がする。
好きなこと、向いていることをやっていると、嫌いなことや向いていないことをやっているときよりもストレスがなく、幸せである。
性格が合う、ということが僕(村上氏)には分らないんです。幼稚園のときから合わない人とはつきあっていないので。
注:こういうこと書いちゃうところ、売れっ子作家ですよねえ。サラリーマンじゃないから。組織の中で嫌いな人がかならずいるって、実感しないんですね。
何かを望む場合、それは夢ではなく現実です。夢なら「夢破れた」で済むけど、現実はそうはいかない。だから、夢を追いかける、というのは単に甘えです。希望がない社会だから、そういう言い回しが流行るんですね。
脚本家になりたいなら書いたものを誰かに見せないと始まらない。死んでから原稿が1万枚出てきた、というのでは意味がない。ぼろくそにけなされても、見せないと始まらない。旧共産圏では原稿を隠し持って港まで運んで、必死の思いで外国で出版するという作家や詩人がいたけど、いまの日本では何を書いても死刑にならないから、いっそ見せてしまえばいいんですね。
「気楽な契約社員だったのにリストラされました。私ってなんだったんだろう」→「間違いなく契約社員だっただけです。契約が終了しただけなんですね」
(注:フリーランスでずっと成功してきたから、会社員の現実をあっさりつきつけてます)
生きることに虚しさを感じたとき、信頼している人から「うだうだ言ってないでうまいもの食って寝ろ」と言われたのですが、やってみたら意外と元気になりました。それで虚しさが消えるかは分かりませんが、きちんと食べて寝る、はひとつの出発点になります。
「努力すれば報われるって本当でしょうか」→「努力の意味、報われるの意味、それが分かってます?努力も報われるも、あいまいな言葉なんですね」
若さが素晴らしいのは、若いときには年取ってからよりも勉強して身に着けるには効率がいいから。パチスロに2時間費やすよりも、勉強に2時間費やすと、若いときには何かが身に着く可能性が高い。
本当に好きな男性にあって結婚する、と言われてもそれは現実じゃない。テレビや漫画では「あ、この人だ」という感じで出会いが書かれていますが、大衆文化というのはそうしないと観る側がそこに夢を持てないからです。
テレビで心理学者が「昔の食堂にはうどんしかなかった」と言っていたのですが、「あれもこれも選べる」と思うから人生に迷うんですね。何かを選べば他の物は捨てるのですから、これしかないと思って選べば迷わないのです。
タレントでもないのにテレビにひょこひょこ出てくる人は信頼しない方がいい。本当に幸せで充実していたら、テレビに出てくるはずがないからです。タレントでもないのにテレビに出たがる人はヘンだと思うのです。自分のプライバシーを売っているのだから、基本的に寂しい人なんです。そういう人に影響されるのはよくないと思います。
ふむ。
個人的には、タレントでもないのにテレビに出てくる人を信頼するな、というご意見が一番、なるほど。
村上龍はやっぱりすごいです。
