『温故知新』

蔵石との縁(えにし)を語る
その❼
旧・紀州藩 お止め石
古谷石(ふるやいし)
和歌山県産
銘「福袋」
左右13・高14・奥行13 cm


月刊・愛石 2024年2月号

(2024年1月1日発行)



古谷石 "福袋"


 丁度40年前の昭和57年3月に、親世代のお2人の先輩愛石趣味家にお誘いを受け、和歌山県紀伊田辺市に在る古谷石の販売店を訪ねました。

 車の提供と長躯運転は自分が担い、時間が許せば古谷石の産地探訪と梅林見学を兼ねての予定でした。

 しかし、お店で古谷石を贖うお2人は吟味に吟味を重ねる慎重な値段交渉で時間を要し、1石数万円の見事な山水景状の古谷石を手にされました。

 自分にはとても手の届かない石達が陳列されていて、呆然自失の自分に店主から「灰土(かいど)を除去していない原石なら沢山在るから好みの物を選んだら、安くしておくから」。とのお声がかかり、百余石の中から2石を選んで贖ったうちの1石が今回の"福袋"でした。



 1ヶ月を要して硬い灰土を除去すると、緻密硬質な石芯で特有の皺状突起も有る可愛い袋、あるいは窯変した小壺似の坐りも良い石には我ながら驚きました。

 お正月には、小さい幸せがいっぱい詰まったこの "福袋 "が私達夫婦と共に、子供達や孫達を迎えます。


ありがとうございました。

明年も変わりませず、ご笑覧くだされば幸いです。

皆様、良いお年でありますよう。