【温故知新】

愛蔵石との縁(えにし)を語る。
加茂川石(鴨川石)京都市産。
銘「草紙洗い舟」
w20・h 6・d 8 ㎝


この石は、茶人として、また女流愛石家としてご活躍された故・四楓庵(しふうあん)・南部宗石女史の遺愛石になります。



愛石趣味の黎明期より、文人墨客など数寄者の間に囁かれた、"愛石趣味家たる者、1石は蔵したいと願う加茂本流(鴨川)産の真黒石"で、清流に育まれた加茂川真黒石特有の石肌は、カラスの濡れ羽色とも称され、特に珍重される石種の1つでもあります。



この石、昭和45年頃に京都市で開催された水石展示会に出品されていたもので、女史好みの加茂本流産の真黒石だったらしく、閉会後特にお願いして譲っていただいたとのことです。

六歌仙の1人・小野小町に縁の、草紙洗いの硯石として初釜に来られた方々に、この石を硯代わりに使用し、描いた禅画を差し上げたところ、皆様はことのほか喜ばれ、ご自身もまた福となって、清らかな石が得られたことに感謝しているとのことでした。



宗石女史は生前、自分と同じ大和川愛石会(現・愛石クラブ)にも所属され、自分も何かとご教示いただいた恩師でもありました。

令和2年、愛石趣味者の集う「八州同人」での先輩A氏のご厚志により、当時所蔵されていたこの加茂真黒石を、自分に下賜していただきました。

自分がこの石の初見以来、実に38年振りの再会でした。

古き良き時代から連綿と続く愛石趣味が紡ぐ縁(ゆかり)の典型的な例えでもあります。

ありがとうございました。

次回もご笑覧賜れば幸いです。