2022年3月19日

 21時過ぎ。1時間ほど、ソファーの上で気絶していた。まだ頭がボーッとしているが、疲労は少し抜けた感じだ。熱い紅茶で目を覚まして、ブログを更新する。

 本日は、午前9時10分に自宅を出発。知事車で館林市に向かった。午前10時30分から、館林文化会館で行われた故 谷津義男元農水大臣のお別れの会に参列するためだ。知事として、最初の弔辞を読ませて頂いた。

 郷土の先輩議員である谷津元農水相は、叩き上げの政治家だった。地元出身の2人の衆院議員の秘書を務めた後、県議に当選。3期目の途中で、国政に転身した。2世議員である自分にないものを持ったひとだった。あの泥臭さや粘り強さ、庶民性は、なかなか真似の出来ない谷津代議士の大きな魅力だった。

 谷津氏にとって、やはり県議から参議院議員になった亡父 山本富雄は、県議会自民党会派の先輩にあたる。県議会議長まで務めた義兄の田島雄一(故人)は、県議会の当選同期だった。山本家とは、様々な繋がりがあった。

 谷津元農水大臣の、気さくで、ストレートな物言いが、とても好きだった。その優しくて、面倒見のいい谷津先輩から、2回だけ、本気で注意されたことがある。

 1回目は、当選1期目の若手議員の頃。参院の当選同期だった林芳正氏(現外務大臣)と、政治と音楽のプロジェクトを立ち上げ、地元でもライブを開催した。そのことが、翌日の地元紙(上毛新聞)の1面で、大きく取り上げられた。見出しは、「若者には政治よりロック」だったと記憶している。

 その日、たまたま地元の会合で遭遇した谷津氏から、こう言われた。

 「一太君、今日の上毛新聞を見たよ。俺は面白いと思うけど、地元の年良りの中には、『あいつは何を始めたんだ!』みたいな反発もある。そこらへんは、十分に気をつけた方がいい!」

 「あんたは気がついていないと思うけど、他の議員から相当、嫉妬されているぞ!音楽やってメディアに取り上げられたり、仲間とラジオ番組を作ったり、群馬の自民党議員は誰もやっていない街頭演説を始めたりすれば、若者は喜ぶかもしれない。でも、先輩議員、特に長老たちは、不愉快に感じている。」

 「とにかく政治家は、嫉妬深い。自分に出来ないことをやられると、それだけで面白くないものなんだ!」

 「まあ、思い切って新しいことをやるのは、悪くない!そこが一太君のいいとこでもある。が、あんたは、そそっかしいからな!(笑)いや、正直なオレだから、こんなことも言えるんだ。他の人は、思っていても目の前では言わない。そうだろう?」

 2度目は、2回目の選挙で再選を果たした後。やはり、地元のある政治集会で一緒になった。出席者から、「山本一太は、どこかでぜひ、衆議院議員に転身して欲しい!」という意見が出た。それに対して、次のような返事をした。
 
 「地元の支持者の方々から、最近よく、『まだ若いんだから、将来は衆院議員を目指せ!』と言われます。が、その度に、こう答えています。」

 

 「米国の野球に例えれば、衆議院はメジャーリーグ、参議院はマイナーリーグです。残念ながら、それが世間の偽らざる認識です。私は皆さんのお力を借りて、今、マイナーリークで活動させていただいています。でも、知恵と行動力さえあれば、メジャーリーグの選手よりいいプレーが出来る!この6年間で、そう確信するに至りました。」

 「むしろ、より長期的な視野で、じっくりと仕事に打ち込めるマイナーリーグのルールや特徴を生かして、地域や日本のためにメジャーの選手とは違った貢献をすることは十分、可能です。実際、その点に参議院議員としてのやり甲斐や醍醐味を感じています。ご期待は嬉しいですが、衆議院に行くことは、全く考えていません!」

 集会の後、谷津先輩に呼び止められた。いつもの上州弁で、こう諭された。

 「あのなあ、一太君、参議院がマイナーリーグなんて、思っていても口に出しちゃあ、ダメだあ。参議院の先輩議員に聞かれたら、怒られるど。何度も言ってるように、あんたは、思ったことを何でも言っちまう!次は喋る前に、もう少し考えた方がいいぞ!」

 最後は、笑顔で、こう話していた。

 「まあ、とにかく、おめえは、そそっかしいからなあ。(笑)選挙は強えけど、心配しちゃうよ!」

 谷津先生、長い間、色々とお世話になりました。群馬県と日本の農業の発展に尽くされた先生のご功績は、県民の間でも長く語り継がれていくと思います。農水大臣や自民党総合農政調査会長としての颯爽たるご活躍は、今も鮮明な記憶として残っています。今は、生まれ育った館林の地で、ゆっくりお休みください。(合掌)

追伸:実は、今日のお別れの会でも、そそっかしい「失敗」をした。弔辞を早く読み過ぎたことと、(珍しく)途中で2度、読み間違いをしてしまったことだ。(反省)ご遺族の方々に少しでもご無礼があったとすれば、お詫びを申し上げたい。

 このことに関しては、少しだけ、弁解をさせていただくことにする。2週間ほど前から、シリコンバレーの起業家の間で今も流行っている「靴底がやや丸くなっている」革靴を履いて、県庁に通勤している。履いているだけでバランス感覚と体感が鍛えられ、かつ運動量も1,3倍になるという優れモノだ。

 高崎の自宅を出る際、いつもの習慣で、この靴を履いて、知事車に乗り込んでしまった。歩いている時は(足の筋肉が強いので)あまり気にならないが、立ったまま長時間、静止していると、バランスを取るのが結構、難しい。

 谷津元農水大臣への弔辞を読んでいる間、バランスを保とうと踏ん張る両足が、ずっと小刻みに震えていた。何度かフラッと来そうな瞬間もあった。ちょっぴり焦った。「早く読み終わらないと、上手く姿勢を保てない」と思った。それで、つい早口になってしまったのだ。

 同行した秘書課の係長は、「全く気がつきませんでした」と言っていたが、細かく観察していた人がいたとすれば、「知事は体調が悪いんじゃないか」と思ったかもしれない。

 谷津先生、最後までご心配をかけて、申し訳ありませんでした。でも、きっと(いつもように)こう言って、許していただけると思っています。

 「あんたは、相変わらず、そそっかしいなあ!(笑)」