2021年12月31日

 大晦日の午前中。朝から活動している。昨日、書き切れなかった子豚へのワクチン接種に関するブログの続編(その⑦)を、急いで書いてしまおう。

 今回の連載で取り上げた12月2日付の地元紙(上毛新聞)の記事を読んだ県内の養豚農家の方々の中には、こう思った人がいるかもしれない。

 「なるほど、県内で豚熱の発生を防げないのは、県が国による『明確な子豚へのワクチン接種前倒しの方針』を(他の県と違って)農家にちゃんと通知していなかったからなんだな。県職員がサボっていたから、こんなことになっているのか?」

 「飼養衛生基準の徹底とか、野生イノシシ対策とかが必要だと言うが、県が一律に子豚へのワクチン接種を前倒しにしていないことが、全ての原因なのではないか?」

 同じ記事を見た農政部の職員は、どうだろうか?きっと、次のように感じているはずだ。

 「知事が謝罪したように、県の対応にも至らない点はあった。そのことは、反省しなければならない。今後は、情報共有も含め、農家の人たちとの連携をより強めていく。ただし、豚熱問題には、これまでも懸命に取り組んで来た。そのことは、ぜひ分かって欲しい。」

 「実際、他県に比べても手厚い総合対策を講じて来た。知事の強い要請を受け、(かなり無理して)ワクチンの打ち手を確保するための『知事獣医師認定制度』にも、全国で最も早く移行している。」

 「過去、豚熱が発生する度に、国の疫学調査チームによる報告書が公表されている。その中では、(毎回のように)農場による飼養衛生基準の徹底や小動物の侵入対策等に関する問題点が、指摘されている。が、報告書を作成するための国のヒアリングでは、県は常に農家を庇う立場から、様々なインプットを行なっている。厳しい状況の中で、農家の人たちが、どれほど頑張っているのかを知っているからだ。」

 「県職員として当然の義務だと言われるかもしれないが、豚熱が発生する度に、農政部を中心に、全力で防疫措置を進めて来た。特に飼養豚の殺処分に関しては、毎回、県庁全体に動員をかけ、対応にあたっている。県にとって重要な産業である養豚業を、何としても守らねばならないという強い気持ちがあるからだ。」

 「にもかかわらず、『豚熱の発生は、県が責任放棄をしているからだ』みたいに言われてしまうとすれば、自分たちは、何のために、こんなに努力して来たのだろうか?飼養豚の数が多い等の事情はあるものの、ここ最近、他県で豚熱は起こっていない。そこには、必ず理由がある。やはり、飼養衛生基準の遵守や、小動物対策の徹底に関する対応が、最も大きな要因ではないのか?」

 先日、ある有識者が、こんなことを話していた。

 「本州最大の養豚県である群馬の場合、赤城山の南面に養豚農家が集中しているという特殊事情がある。農場の立地という観点から考えても、野生動物の侵入を防ぐという点に関して、もともと他県より難しい状況に置かれているのではないか?」と。

 「他県の農家に比べて、県内の農家の人たちの努力が足りないとは到底、思えない」という知事の感覚を踏まえ、上記の説は、(抜本的な対策にも繋がることなので)農政部に分析&検証をお願いしている。

 それでも、1つだけ明確なことがある。それは、各地の農場の周辺で、感染した野生イノシシが次々と見つかっている今の状況を考えると、新たな(6例目の)豚熱は、いつ、どこで発生しても不思議はないということだ。そのくらい、群馬は危機的な状態にあると考えている。

 そもそも、豚熱発生のリスクをゼロにすることは出来ない。ワクチン接種をすれば、完全に防げるというわけではない。少数ではあるが、抗体が出来ない豚もいる。結局のところ、飼養衛生基準の徹底、飼養豚へのワクチン接種、野生イノシシ対策という3本柱の対策を、粘り強く進めていくしかないのだ。

 豚熱の連続発生を受けての県の新たな緊急対策の中身と進捗状況については、改めてこのブログで詳しく報告する。当然のことながら、県としては、6例目の発生を回避するための最大限の努力を続けていく。

 しかしながら、不幸にも、どこかで新たな豚熱が確認された場合、県と養豚農家がやるべきことは、責任を押し付け合うことではない!心を合わせて、早急に感染の拡大を抑える措置を取ることだ。同時に、原因を分析し、新たな対策に反映させる。そのことが、何よりも重要だ。

 そのためには、県(行政)と農家との日頃の信頼関係が欠かせない。子豚のワクチン接種に関する記事を書いた記者に、そんな意図があるとは全く思っていない。が、あの記事は、結果として「県職員と農家の気持ちを離反させる」ことに繋がりかねないと強く感じた。だからこそ、このブログ連載を年内に書き残しておきたかった。

 何度も言うが、養豚業は、群馬県にとって農業産出額の2割近くを占める重要な産業だ。豚熱対策に関しては、今後も県の最重要課題の1つとして、力を注いでいく。

 県としても、これまで以上に気を引き締め、ブログの末尾に添付した緊急対策を、速やかに進めていく方針だ。豚熱対策における関係市町村との連携も強化する。養豚農家の皆さんにも、飼養衛生基準の遵守徹底を、改めてお願い致します!!

追伸:たった今、武藤健康福祉部長からの携帯メールが届いた。本日、県内で確認された新型コロナの新規感染者は11人だったとのこと。詳しくは、次回のブログで。